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1章 冒険の幕開け

5話 酒場

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|紅龍の誓約(こうりゅうのせいやく》団長グラン・リュークが繰り出す攻撃は速すぎて
目で追えるものではなかった
黒く光る大剣を大きく振り回しリザードを次々と倒していく
無数の刃がリザードの大群に降り注ぐ
スピードで回避する暇もなく無数の刃に
リザード達は成すすべもなく殺られた

「強ぇぇ!!」

目の前で繰り広げられた戦闘を見て
正義は改めて団長から感じた威圧は
この強さだと確信する

全リザードを倒し終え
正義達の元へ来るグラン

「しかし…なんでまたリザードがこの一界層の前界に?」

「わかりません……その前はオークが現れました」

どうやら団長のグランでさえ原因がわからないようだ

「それにしてもセイギお前その姿ボロボロじゃねぇか」

「は、はいちょっとオークを倒すのに」

「初めてにしては上出来なんじゃねぇか?ま、俺は初めてでリザードを倒したけどな」

ここでグランの自慢が入る
さっきの優しい言葉が今の言葉で一気に掻き消された

「団長!そうやってすぐに自慢するのやめてください!」

やはりギルドに一人は女神が必要だ

「ありがとうミスティア……でも確かにグランの言うとうりまだまだかもな…」

グランは周りの様子を確認し

「どうも不自然だな…この場の空気といい周りに冒険者が一人も見当たらねぇ」

正義達がダンジョンに入った時から
冒険者の姿は一つも見えなかった



ーーーーーーーーーーー

「邪魔が入ったか……グラン・リューク…紅龍の誓約こうりゅうのせいやく団長
100年に一人と言われる逸材……」

静かな空間でただ一人そう呟く男
グラン・リュークの脅威さを知っているものなのだろう

「このまま続けてもグランに全て潰されるだけだ…今回はこのくらいにしてやろう…しかしクロサキ・セイギのあのSPスキルは一体……」



ーーーーーーーーーーー

ダンジョンを抜け
街に戻りギルドホームに帰った正義達

「初めてダンジョンでこんなにボロボロにたることなんてある?」

「テメェが弱ェだけだろ…戦えねぇ奴は使えねぇからな」

(なんでこの人俺だけこんなに厳しいの!?)

「セイギくんステータスを更新しようか」

「あ、そうだなよろしく」

冒険者カードをミスティアに渡す
ミスティアはグランを呼び
紙の上にグランの紋章を当てる
浮かび上がる更新されたステータス

「えぇ!?」

ミスティアが驚くのも無理はない
正義のステータスは驚くほど上がっていた

クロサキ・セイギ  

冒険者ランク  F
使用武器    漆黒の聖剣ブラッドセイバー
力         350   E
耐久     200   F
俊敏     370   E
体力     150   G
技術     200   F
魔力     100   G

総合力   1370



ソードスキル
龍の咆哮ドラゴンロア


「ヤベー!!めっちゃ上がってる!しかもソードスキルって!俺いつの間にそんなスキル習得したの?」

ステータスを見た正義は大声を上げる
初めて見るソードスキルという文字
そして誰にも見えないぐらいの薄さで刻まれたSPスキル
気づくものはいない

「ん?お前のその片手剣漆黒の聖剣ブラッドセイバーだったのか道理で雰囲気が違うと思った」

「ん?団長は知ってるのか?」

「その剣はかなり厄介な剣でな……どこで見つけた?」

「ん?ヘンリーの武器屋で見つけたけど…」

「…………………あいつ、はぁー
まぁその剣は少し厄介だけど心配するなお前なら使いこなせる……多分」

何か意味深な事を言うグランに
正義は不安になる

「え?この剣ってそんなに訳ありなの?」

「セイギさん初めてのダンジョンでソードスキルも身につけるなんて!凄いですね!」

「いやぁ~それほどでも~」

褒められることは慣れてない
前世では女の子とすら喋ることができなかったが今ではこんな可愛い美少女と話している

「俺も成長したもんだな……」

そんな腑抜けな事を言う正義
感に堪えないような顔をしていた

「なんて間抜けな顔してんだ……まぁなんだ
初めてのダンジョンでオークを倒したのとFランク到達の祝いで今日は飲みに行くか」

「マジッすか!!」
(やっぱり優しい!!)

異世界ファンタジーではまたもや定番の酒場
ギルドメンバーや冒険者がその日の事を話したり自慢したりして会話を弾ませる
ここの世界では15歳以上が飲酒可能だ
ということは正義も飲めるということ

酒場といえば
何といったってウェストレス
たくさんの美女が酒場で働いているケースが多いエルフも
そんな事を考えていると興奮してきた

「さぁ!!早く行こうぜ!!」

そう言って急かす正義
ミスティアとグランはやれやれと
正義のテンションには着いていけないようだ
そんな正義の後ろ姿を見て

「あいつは強くなるな…」

「そうですね!セイギくんはきっとこのダンジョン塔を制覇できると思います」

「まぁその前に俺が制覇するけどな」

「早くー!行かないんですか?」

「今行くよ!」

「そんなに急かすな」

この時正義のSPスキルの存在にグランは一人気づいていた



「ここが……酒場!!」

酒場の前で両腕を広げ大声を出す正義
周りからの冷たい視線が正義に注目する

「ちょっと!酒場くらいでそんなに大声出さなくても」

「本当におかしな奴だな」

水農の酒場
ここはハルディア一の酒場である
ここに集まる冒険者たちは大抵上級冒険者だ

「いらっしゃいませー!」

扉を開け
ウェストレスの声が聞こえる
しかもエルフのウェストレス

「エ、エルフだと!?」

目の前のエルフに感動した正義
ギルド探しの時に見たエルフとはまた格段に美しさが違った

「三名だ」

「あ!グランさん!来てくれたんですね!じゃあこの人は新しいギルドメンバーですか?」

「そうだな」

「リオネさん!こんばんは!」

どうやらこのエルフはリオネ・フェルという名だ
銀髪のエルフ
目は漫画に出て来そうなキラキラした目
そしてウェストレスの格好をしている

「まあ初めまして!俺はクロサキ・セイギって言います!」

「クロサキくんね!覚えたわ!」

自己紹介を済まし
名前を覚えてもらえた正義

「我が人生一片の悔いなし!」

「何言ってるの?早く座りましょう」

「あ、すいません今行きます…」

カウンターに3つ空いた席に
3人が座った

「はいお待ち!」

そう言われて出てのは
普通の人では食べきることの出来ないほどの量がある肉だ

「何も注文してないのに出て来た!?」

まずそこに驚く正義

「あ、ここは団長の行きつけで何も言わなくても団長のリクエストが出てくるの」

(どんだけ行ってんだよ……)

「じゃあ…セイギのランクアップとギルドのレベルアップを祝して乾杯」

「「乾杯!!」」

ビールのような酒を入れられたジョッキを三人で上にあげ乾杯する

(こういうの一度やってみたかったんだよなーって!ミスティアめっちゃ食べてる!)

一人呑気に酒を飲んでいたら
隣にいるミスティアが前にある料理をどんどん平らげていく

「ヤベッ!俺もくわねぇと!」

正義も急いで料理に手をつけた
手に取ったのは骨つき肉

(異世界ファンタジーの酒場といえばこれだよな!)

一口噛み付くと溢れ出る肉汁
口の中で噛めば噛むほど旨味が出てくる

「うまっ!うますぎだろ!」

「どうだ美味いだろ?俺の行きつけの店は」

「もう最高ッス!」

無我夢中で料理を食べ続ける正義
すると後ろから突然ぶつかり合い
口の中にあるものが吹き出た

「ブッ!おい誰だよ!俺の食事を邪魔した奴は!」

そう言って後ろを振り向くと
そこにはウェストレスの獣人が立っていた

「す、すいません!」

「うん、可愛いから許す」

親指を突き立て腕を伸ばし許した正義
この目の前にいるウェストレスは猫耳の獣人だ

「もうアリスちゃんはドジなんから……」

どうやらミスティアはアリスの友達らしい

「アリスちゃん!気にしなくて全然オッケーだから!」

「アリス!さっさと仕事しなさい!」

ここの領主に怒鳴られるアリス
アリスは目に涙を浮かべ走っていった

「なんか俺が泣かせたみたいになってる……」

「女を泣かすなんて最低の男だぜ」

ジョッキの中にある酒を全て飲み干し
大きくゲップするグラン
まだ酔ってはいないようだ

「てもう3杯目!?早すぎだろ団長…」

「こんなもんまだまだ楽勝だよ」

「よーし俺も!」

そう言い一気に酒を飲み込んだ
さすがに応えたのか

「ぐっ!初酒の俺に一気飲みはキツイぜ!あ、ヤバイ頭がくらくらする」

「ハッハッハッ!!まだまだだな!」

「団長も飲み過ぎると酔いますよ?」

「俺はまだまだ大丈夫だよ」

盛り上がる酒場
正義達のギルドが来てから盛り上がりはさらに増す
盛り上がりが増す中一つのギルドが
入って来た

「十五人予約していたのだが」

ぞろぞろと酒場に入ってくる
その人数は十五人
先頭には団長らしき人物
その後ろにはクレアの姿があった

「あ!クレア!」

「あ、セイギくんあなたギルドに入れたのね」


正義とクレアの再開に
ギルド同士にざわめきが起きた
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