4 / 10
4. 実際は全自動
しおりを挟む
美青年ラルフリードことラルフに連れられて、森を後にする。
到着後の喧噪が嘘のように、森を抜ける道中は何の危険も感じなかった。
まさか、魔物にも美青年に対する耐性がないのか……?
「ところで、ミレイ」
「っはイ!?」
しまった。
変なところで魔物に共感を抱いていたら、突然声をかけられ声がうわずってしまった。
お恥ずかしい限り。
「話は街にて、とは言ったが……。さすがに魔力はどうにかしてもらえないだろうか?」
「? と言いますと?」
魔力……、ですって?
特別何か変化を感じてはないのだが、ラルフには思う所があるらしい。
「やはり無意識なのか。先程貴女自身や私に、強化魔法すら使っていたと思うのだが」
「ええええ!?」
いつ、どの、タイミングですか!?
いや、まぁ確かにいつもより体が軽いな~とか、疲れにくいな~とかは思ったけれども。
魔法だった……?
「わ、私には全く身に覚えがなく……」
「なるほど。記憶を失った影響か? では、自身の魔力自体も感知していないのだな?」
「え、ええ。それはもう、いつも通りと言いますか。何の変哲もない日常と言いますか……」
目が覚めた瞬間から非日常のオンパレードだったが、『魔力』という点に関してだけ言えば、何の自覚もなく以前の自分と変わらない。
「ふむ。正直そのまま魔力を垂れ流した状態だと、魔族と勘違いされても仕方ない。少し、抑えれるか?」
「ど、どのようにして抑えるのでしょうか」
魔族だなんて、一体今自分は、どれほどの魔力を垂れ流しているんだ?
あれか、転生特典ってやつか?
「深呼吸で精神を研ぎ澄ませ、まずは自身に流れる魔力を感じるところから始めよう。魔力とはすなわち己。血肉であり、記憶でもある。それが、魔力」
魔力とは、自分。
なるほど。
教えられた通り、深く呼吸を整える。
自分が何者か、回想しやすいように目も閉じてみる。
『私』は『安住礼』、この世界では『ミレイ』と名乗っている。
『私』は三十歳で、『ホテリエ』。
人と接することが好きな反面、そもそもは人見知りで気力の消耗が激しい。
仕事は『天職』だが、消耗が激しいためプライベートはゲームや漫画といった一人遊びが多い。
あとは……何だ?
やだ、自分で思ってた以上に薄っぺらい人間なのかしら。
「ふむ、さすがだな」
「え”?」
目を開けて、ラルフを見るとどこか感心したようにこちらを見ている。
うっ、眩しい。
何だか言われてみれば、自身の内側から出でる何かが、自分という存在を形作るようにピタリと留まっている気がする。
気がするだけなのだが、それだけで安心できるような。そんな感覚がある。
「お、おお」
「人は十八歳になるまで意外と自分のことは理解していないものだが、ミレイは自分の性質を良く理解しているのだな」
「そ、そうでしょうか……ね」
十八歳になると、何かあるの?
「しかし、クラスが判明しているならミレイは十八歳以上だろうが、魔力の制御は教わらなかったのだな」
……んん?
ちょっと待て。私、三十歳ぞ?
そんな見た目若く見える?
「まぁ、宿の用心棒であるなら冒険者相手が多かったんだろう。魔力より肉体的な力が必要だったのかもな」
……んんんん!?
「や、宿の”用心棒”とは?」
「? おかしなことを言う。クラスは間違いなく『ホテリエ』だ。クラス持ちであればアルバ・ダスクにも参戦するだろうし……、あぁ。記憶が無いのだったな。……すまない」
その、クラスが間違いなくホテリエっていうあなたの確信だとか。
クラス持ちは『参戦』っていう物騒なワードとか。
聞きたいことが多すぎて早いところ街に行きたい……!
「分からないことが多すぎて不安にさせたな。貴女が忘れたことを、街で詳しく説明しよう。……もう少し辛抱してくれ」
「はい……」
今はただ、落ち着ける場所でこの世界の説明を受けること。
それに尽きる。
到着後の喧噪が嘘のように、森を抜ける道中は何の危険も感じなかった。
まさか、魔物にも美青年に対する耐性がないのか……?
「ところで、ミレイ」
「っはイ!?」
しまった。
変なところで魔物に共感を抱いていたら、突然声をかけられ声がうわずってしまった。
お恥ずかしい限り。
「話は街にて、とは言ったが……。さすがに魔力はどうにかしてもらえないだろうか?」
「? と言いますと?」
魔力……、ですって?
特別何か変化を感じてはないのだが、ラルフには思う所があるらしい。
「やはり無意識なのか。先程貴女自身や私に、強化魔法すら使っていたと思うのだが」
「ええええ!?」
いつ、どの、タイミングですか!?
いや、まぁ確かにいつもより体が軽いな~とか、疲れにくいな~とかは思ったけれども。
魔法だった……?
「わ、私には全く身に覚えがなく……」
「なるほど。記憶を失った影響か? では、自身の魔力自体も感知していないのだな?」
「え、ええ。それはもう、いつも通りと言いますか。何の変哲もない日常と言いますか……」
目が覚めた瞬間から非日常のオンパレードだったが、『魔力』という点に関してだけ言えば、何の自覚もなく以前の自分と変わらない。
「ふむ。正直そのまま魔力を垂れ流した状態だと、魔族と勘違いされても仕方ない。少し、抑えれるか?」
「ど、どのようにして抑えるのでしょうか」
魔族だなんて、一体今自分は、どれほどの魔力を垂れ流しているんだ?
あれか、転生特典ってやつか?
「深呼吸で精神を研ぎ澄ませ、まずは自身に流れる魔力を感じるところから始めよう。魔力とはすなわち己。血肉であり、記憶でもある。それが、魔力」
魔力とは、自分。
なるほど。
教えられた通り、深く呼吸を整える。
自分が何者か、回想しやすいように目も閉じてみる。
『私』は『安住礼』、この世界では『ミレイ』と名乗っている。
『私』は三十歳で、『ホテリエ』。
人と接することが好きな反面、そもそもは人見知りで気力の消耗が激しい。
仕事は『天職』だが、消耗が激しいためプライベートはゲームや漫画といった一人遊びが多い。
あとは……何だ?
やだ、自分で思ってた以上に薄っぺらい人間なのかしら。
「ふむ、さすがだな」
「え”?」
目を開けて、ラルフを見るとどこか感心したようにこちらを見ている。
うっ、眩しい。
何だか言われてみれば、自身の内側から出でる何かが、自分という存在を形作るようにピタリと留まっている気がする。
気がするだけなのだが、それだけで安心できるような。そんな感覚がある。
「お、おお」
「人は十八歳になるまで意外と自分のことは理解していないものだが、ミレイは自分の性質を良く理解しているのだな」
「そ、そうでしょうか……ね」
十八歳になると、何かあるの?
「しかし、クラスが判明しているならミレイは十八歳以上だろうが、魔力の制御は教わらなかったのだな」
……んん?
ちょっと待て。私、三十歳ぞ?
そんな見た目若く見える?
「まぁ、宿の用心棒であるなら冒険者相手が多かったんだろう。魔力より肉体的な力が必要だったのかもな」
……んんんん!?
「や、宿の”用心棒”とは?」
「? おかしなことを言う。クラスは間違いなく『ホテリエ』だ。クラス持ちであればアルバ・ダスクにも参戦するだろうし……、あぁ。記憶が無いのだったな。……すまない」
その、クラスが間違いなくホテリエっていうあなたの確信だとか。
クラス持ちは『参戦』っていう物騒なワードとか。
聞きたいことが多すぎて早いところ街に行きたい……!
「分からないことが多すぎて不安にさせたな。貴女が忘れたことを、街で詳しく説明しよう。……もう少し辛抱してくれ」
「はい……」
今はただ、落ち着ける場所でこの世界の説明を受けること。
それに尽きる。
0
あなたにおすすめの小説
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す
RINFAM
ファンタジー
なんの罰ゲームだ、これ!!!!
あああああ!!!
本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!
そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!
一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!
かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。
年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。
4コマ漫画版もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる