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「ほう、ゴブリンが巣食っておると?」
「ああ、そこを一網打尽にしてほしい」
「ふむ。……で、あれば。……前回より、高くつくぞ?」
「くっ! ……仕方ない、用意する」

 非公式の会合として、領主の館に招かれた。
 この国の生活水準からみれば、過剰に豪華な屋敷は彼の懐を物語っている。

 周囲を見渡せば最低限の人員しかいないとはいえ、奇異の目は相変わらずだ。
 魔女という存在に恐れを抱く者。
 もの珍しく観察する者。
 ……中には、恐れ多くもメイラ様へと欲情し、屈辱的な言葉を吐く奴もいる。

「…………下種げすが」
「あら、怖い顔」
「……お話は、終わったのですか?」
「ええ。場所も聞いたし、行くわよ」

 どうやら独り言を聞かれたらしいが、咎める様子もない。

 彼女はあえて、人の欲を煽る格好をしている。
 左足が露わになるようスリットの入った黒いドレスは、彼女の赤髪を引き立てるに相応しい。
 それのみならず、首から肩にかけての露出も多く、男ならその豊満な体付きに目が釘付けになることだろう。

 他の魔女を余計な悪意から守るため、彼女はいつも……自分の身を張って魔女に対する印象を裏付ける。

「……はぁ」
「幸せが逃げるわよ、ヴィル」

 先ほどのように少し高圧的な物言いはどこかへと消え、いつものいたずら好きな一人の女性として口調が変わる。
 私には、……それが、この上なく喜びに感じる。

「常に幸せですので、構いませんよ」
「ふうん?」

 嘘は、言っていない。
 私には、貴女の隣にいることが……『幸せ』というものなのですから。

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