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33.異世界のホスト降臨
しおりを挟む振り返るとやはりそこにはかのお人。
クスクス笑いながら近付いてきた色っぽい美形さんは黒騎士団副団長のナリスさん。
艶々ストレートの胸まであるレディッシュブラウンの髪を高めの位置でポニーテールにしている。
瞳は印象的な赤紫。
初めて会ったときに思わず「綺麗な朝焼け色~。」と口に出してしまったら、なぜだか壮絶な色気たっぷり笑顔を向けられて気が遠くなった。
滴る色気っていうの?
現代日本に生まれてたら確実にナンバーワンホストだっただろうな~。
そんなはた迷惑な美人さんは水魔法と土魔法の2属性持ちだ。
ちなみにデレクさんは火魔法と風魔法の2属性。
「「お疲れさまです。副団長。」」
ターニャさんとシンクロしつつ頭を軽く下げる。
「ユミさん大活躍だね。騎士たちも遠征先で汗が流せると喜んでいたよ。もちろん団長も私もね。」
騎士様とは思えない繊細な長い指と大きな手のひらがあたしの頭をナデナデしている。
なんか毎回めっちゃ子供扱いされるなぁ。
まぁ28歳からしてみたら16歳なんて子供か。
一回りちがうもんね。
汗が流せてっていうのは簡易シャワーのこと。
今回の遠征から導入されたというかさせたというか。
「喜んでもらえて良かったです。っていうか私が一番喜んでるかも。水辺じゃないところで野営するときは水浴びできないって聞いて震えましたもん。」
ケガの治療中に騎士さんたちの会話を聞いて、こりゃイカン!とすぐさま団長と副団長に相談して。
それから毎日シャワーを浴びれるようにしてもらえたの。
日本人は綺麗好きなのですよ。
街中にいるときより確実に汚れるのに洗い流せないなんて拷問だわ。
騎士さんなんて討伐遠征ゆえにケガも多いし余計に清潔にしとかないと。病気の予防にもなるしね。
しかもちゃんとお湯なんだよ~。
デレクさん、ナリスさん、騎士さん、衛生班の女性たちと共同作業でお湯を供給しております。
ほんとは1人で全部完結できるんだけどトップシークレットです。
うっかりやらかさないよう気をつけねば。なんてったって前科者ですから(涙)
「衛生班の仕事もあるのに毎日シャワーの準備もしてくれてありがとね。」
「水の供給の半分は副団長じゃないですか。シャワーを浴びる簡易スペースだって副団長の土魔法のおかげで作れたんですよ。こちらこそありがとうございます。」
土をセメントみたいに固めて長方形の箱みたいなのを10個くらい作ってもらって簡易シャワールームにしてるのだ。
シャワールームの上にお湯を貯めとく貯水槽みたいなのがあって、天井部分に開けた細かい穴からシャワーみたいにお湯が出てくる仕組み。
壁に取り付けた魔石を触るとお湯が出たり止まったりするの。
ナリスさんと一緒に考えたんだ。
アイデアは出せるけど魔石のこととか魔術の使い方とか専門的なことはわからないからね。
ナリスさんって王国で三本指に入る魔術関係の権威なんですって。
まだ若いのにすごいなぁ。
「ふふ。」
ナデナデ。ニコニコ。ナデナデ。ニコニコ。
エンドレスだな。おい。
しかもターニャさん含めた衛生班の女性たちみんなフェロモンスマイルにやられちゃってるんですけど。
夕御飯の準備しばらくあたし1人でやることになりそうね。やれやれ。
不服の意を半目で表現しながら麗しいお顔を睨む。
が、副団長様はクスクス楽しそうに笑っている。
引き続きあたしの頭をナデナデしながら。
何が楽しいのだろうか。解せぬ。
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