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14.同郷
しおりを挟むカララン♪
おっと。お客さまだ。
スマイルスマイル。
「いらっしゃいませ~♪」
笑顔で振り返った先にあるはずの空間はなく。
どどーんと目の前に立ち塞がる黒い壁。
あ、もうそんな時間か。
「いらっしゃいませデレクさん。日替わりランチでいいですか?」
顔をあげた更に上。
めっちゃ無愛想だけどめっちゃ麗しい見慣れたお顔が。
「ああ。唐揚げ多めライス大盛りで頼む。」
「かしこまりました!こちらの席にどうぞ。」
いつもの奥まった目立たない席に案内すると長い足をもてあまし気味に座りふっと表情をやわらげる。
いつも気を張ってるのか人目につきにくいこの席に座るとリラックスできるみたいで。表情がやわらぐんだよね。
「そろそろいらっしゃる頃かな~と思ってたとこです。」
「家から近ければ3食ここで食べたいくらいなんだがな。」
ここで働くようになって3週間たつんだけど、それとほぼ同じくらいから通ってくれてる常連さんで。
人混みを避けるようにいつもお昼すぎのランチタイムが落ち着いた頃に来るの。
紺色のサラサラヘアに琥珀色の瞳と180センチ以上ありそうな長身&細マッチョなイケメンさん。
この硬派で寡黙な雰囲気と身に纏うできる男オーラ。
いつも気を張るような仕事=Sクラス冒険者なんじゃないかと妄想している。
ここ【宿り木亭】には私以外に接客歴10年のベテラン女性店員が2人いるんだけど。
接客どころか目が合うのもムリ!とデレクさんが来ると厨房に引っ込んじゃうのよ。
イケメン率の高いこの世界でもかなりの高スペックらしい。
そんなデレクさん。なんと出身がルエンカ皇国との国境近くという同郷なの(なんちゃって設定より)。
デレクさんが住んでたのは国境付近で一番大きな街だったらしいから、山の中の一軒家だった我が家(なんちゃって設定より)とは比べ物にならない都会だと思われます。
生粋のネイシェル人だけどルエンカの文化と料理が大好きなご両親に育てられたデレクさんの母の味はもちろんルエンカ料理。
市場を通りがかったときにたまたまお店を見つけてから皆勤賞で通ってくれてるというわけ。
黒騎士団詰所近くの城壁北側の地区に住んでるらしいから馬車でも15分近くかかる距離なのにね。
え?馬に乗ってくればいいのにって?
城壁内は馬に乗れないのよー。
馬車以外の乗り物は原則禁止。
なので外から馬で来た人たちは大門のすぐそばにある専用の厩舎に預けないと街に入れないの。
格安料金で食事からブラッシングのお世話までしてくれるから旅人にも馬にも大好評らしい。
そこから少し離れたとこにもう一つ大きな厩舎があるんだけどそこは王都に住む人用。
ここはなんと無料。
ちなみにお貴族様や街の有力者たちは各家庭のだだっ広い敷地内に個人の厩舎と馬車を保有&管理しております。
デレクさんは徒歩で来てるんだけど20分くらいで着くらしいよ。
馬車も街中を走ってるからスピード遅めとはいえ。徒歩で馬車に負けないスピードって。
足の長さの違いをひしひしと感じるわ。
あたし40分かかったもん。
「次のお仕事いつからでしたっけ?」
日替わりランチの唐揚げ定食をサーブして麦茶のおかわりをつぐ。
「明日からだ。仕事が始まると1ヶ月はここに来れない。」
ちょっとしょんぼりした感じで唐揚げをもぐもぐするデレクさん可愛すぎる。
「もしよかったらお弁当作りましょうか?」
なんかかわいそうになっちゃって思わずポロッとそう口にしてしまった。
あ、やば。
デレクさんこういう余計なおせっかいみたいなの好きじゃなさそう。
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