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16.大切なのは中身です
しおりを挟む「なにか・・まずかっただろうか?」
黒光りする立派な甲冑と重厚なマントを身につけたデレクさんの形のいい眉毛が少し下がり気味に見える。
不安げな幼い子供みたいな表情。
ぐっ。
ざ、罪悪感が。
「いえいえ。ちょっとビックリしただけです。勝手にSクラスの冒険者だと思ってたから。」
心の動揺など微塵も感じさせないスマイルをうかべられたと思う。
デレクさんがホッとしたように微笑んでくれたから。
「良かった。もう店に来ないでくれと言われるかと思った。」
「そんなこと言いませんよ~!デレクさんは大切な常連さんですもの。」
ゴメンナサイ。
今度会ったとき他人のフリしようかと一瞬考えました。
うん。そうだよね。
デレクさんに失礼だよね。
大切なのは中身だもん。
デレクさん自身はとっても優しい人だし。
黒騎士団はアイドルグループじゃないといいなぁ。
デレクさんのイケメンぶりを考えると望み薄だとは思うけど。
「こちらにどーぞ。」
椅子を引いてテーブルにデレクさんを誘導し朝食を温めなおす。
炊きたてご飯、豚汁、サバの塩焼き、肉じゃが、卵焼き、キュウリの浅漬け。
はい、お弁当の残りメニューです。
「美味い。ユミの味付けは母とそっくりだ。」
お気に召していただけたようで良かったです。
お店では接客担当だから私が作ったものを食べてもらったの初めてなんだよね。
ごはんを食べるデレクさんとキッチンで片付けをする私。
会話もない静かな空間には食事をとる音と洗い物をする音だけ。
なんだかとっても落ち着くなぁ。
そう思ってたのは私だけじゃなかったみたい。
急いで出かけないといけないはずなのにいつもよりゆっくりと食事を終えたデレクさんがいつのまにか私の横にいて。
見上げれば整ったお顔に満面の笑み。
いや~~!!
クールイケメンがデレた~~!!
膝から崩れ落ちなかったあたしを誰かほめて!
「ユミ。本当にありがとう。王都に来てから初めて心から寛げた気がする。・・またここに来てもいいかと聞くのは迷惑だろうか?」
また不安げな幼い子供みたいな表情になるデレクさん。
そんな顔されたら断れるわけがないじゃないか。
確信犯か?確信犯だな。
「事前に連絡さえもらえれば大丈夫ですよ。」
「ありがとう。」
うわっ。
更にパワーアップした笑顔の破壊力ハンパないです。
眼福。ごっつぁんです。
山盛りのお弁当を宝物を扱うかのような手つきでマジックバックにしまったデレクさんをお見送りしたあと。寝室のベッドにパタリと倒れ込む。
・・なんかお弁当作りより疲れた。寝る。おやすみなさい。
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