魔物になろうズ!

鳥ふみと

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俺の初めて

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「……」
「……」

 デスナイト森山さんと獅子姫レオナとの戦いは、睨み合いに入っている。

 互いに動きを牽制しながらの、このわずかの間に。
 森山さんが、俺に小声で話しかけてきた。

「佐嶋君……相手は必ず一度は、距離を詰めて私にすごく接近すると思うの」

「あ、ハイ?」

「それで、お願いがあるの」


 いきなり俺に出番が回ってきそうで、一気に緊張した。
 脂汗が出ないのは、ヴァンパイアの特性なのか……。
 ヤヴァイ。マジで、一気に緊張する。


すきを私が相手を誘うから。あの女がつられて接近した瞬間に、佐嶋君は鎧から出てあの女にしがみついて。そして出来れば噛みついて」

「えええ?」

「できる。佐嶋君なら出来るよ……相手を押し倒してエッチな事をするようなイメージで襲うの!」

「……」

「失敗しても良いの。最低でも、相手の片足にしがみついてもらえれば。一気に勝負が決まる」


 ……たしかに。

 そんな気もする。

 だがしかし……。 

 俺は、怖い。 


「相手は、私たちの知らない能力をたくさん持っているかもしれない」

「たしかに」

「回復とか魔法とか、インチキ臭い技が、この世界にあふれているかもしれないじゃない?」

「……むむ」


 森山さんの言うとおりだ。

 相手の強さがわからないから、一気に決めたいのか。


「……わかりました。行きます!」

 俺も覚悟を決めた。

「ありがと。じゃ。しかけるよ!」


 そういうと、森山さんは大剣の構えを大きく変えた。

 いわゆる剣道の上段の構えだ。
 打ち下ろしの斬撃や、剣では大きなリーチをとれる構え。

 防御はかなり捨てた構えだが、そのむき出しの胴体の中にはヴァンパイア佐嶋が潜り込んでいるとは獅子姫さんも思うまい……。

 そして森山さんは少しずつ距離を詰めていく。


「ほう……」


 獅子姫レオナも受けて立つように、体中に黄金色の闘気をまといはじめた。
 うう。サ〇ヤ人かよ……こえー。


 しかし、もう賽は投げられ。ヤルからには失敗は許されない。


(押し倒す……押し倒す……押し倒す……暴行! 抱きつく! そして噛みつく!)


 たまに逮捕されてニュースになる痛い人って、こんなこと考えているのかも知れない。

 それくらい俺も気合いを入れた。

 そして、その時がやってまいりました……。

 一気に踏み込み、上段からの大剣を打ち下ろす!

 さらに素早い踏み込みでレオナが、大剣の下をかいくぐるように距離を詰め。

 右の拳が黄金の輝きを放ちながら、デスナイトの胸甲ブレストプレートをブチ抜く!?



 っとその瞬間に俺は、飛び出した!


 「アヴァヴァバーーーーーッ!」

 おおよそヴァンパイアにはふさわしくない叫び声を上げ、おれは正面からレオナに飛び掛かる。

 「うぁあ!?」

 いきなりデスナイトの胸甲が吹っ飛んで、中からヴァンパイアが飛び出してくるのだ。

 レオナにとっては、いわゆる想定外って奴だろう。



 そして。


 俺は、むしゃぶりつくようにレオナに抱き着くと、レオナのバストにかぶりついた。

 攻撃のために重心が前のめりになっていたレオナを抱え込むようにそのまま倒れる。



 森山さんから見れば、目の前でレオナが俺に覆いかかぶさるように倒れ込んだようになるはずだ。

 その上から、森山さんが大剣を打ち下ろせば俺たちの勝ちだ!


「ぐわっ! な、離せっ!」

「っーーーー!!」


 俺はレオナの身体にしがみついて離さない。

 レオナは意外に、いい匂いで柔らかく気持ちよかったが。

 楽しんでいる余裕はない!

 俺も必死でレオナのバストに吸い付いた。


「死ねこの! 糞エロっ!!」


 ドゴンっ!!

 と、俺は。

 なにか重い衝撃を頭部に受けて。

 意識が飛んだ……。
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