魔物になろうズ!

鳥ふみと

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プチプチしたい!

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 怒りモードの森山さんに睨みつけられ、俺は身動きできない。


「……」


 しかし。

 失礼しました~っ! と森山さんの鎧の中から出ていきたいのだが。

 下手なリアクションをすると、森山さんがどう出るのか……予想がつかない。

 俺は、やっぱり動けなかった。


「……佐嶋君」 


「あっ、はい……」


「……言っておくけれど、私は何も覚えていないからね」



 ええええ?

 と言うか、覚えているだろ。ソレ。


「えっと……」


「おぼえてなーいいっ!!!」





 デスナイト森山さんの叫び声とともに胸甲ブレストプレートが開き、外に放り出された俺。

 思わずへたり込む俺に向かって、森山さんはビシッ! と指さして宣言した。


「佐嶋君も忘れることっ!! いいわね!?」



「……あ、ハイっ」


 いや、でも。

 すんごくディープなことしてくれておいて。

 忘れろと言われても……



 ……これって、後でデレる方向なのだろうか?



 とか思っているうちに。



 俺は異変に気がついた。



 ……ゴブリンたちが、静かに。静かに息をひそめ。

 森山さんを囲むようにひれ伏している。


「?」「?」


 ……あえて、このように表現しよう。

 俺の事に夢中になっていた森山さんは、ゴブリンの異変には気がつかなかったようで。

 俺と同様に『何ごと?』状態だった。


「……なんだか面倒クサいわね」



 森山さんの距離が、なんだかいつもより近い。



「うーん……これは、どうしましょうか? つか…吉田さ……んは?」



 言っているうちに気がつけば。

 デスナイト森山さんの悪魔デビルスヘルムが俺の顔の真横で俺をガン見している。

 赤く輝く森山さんの目が、いつもより激しく明滅している。



「ゴブリン皆殺しにすれば脳内の帝国とかも無くなるわけだから解決でOKじゃない?」

 なんだか、なんだか興奮気味に森山さんが言う。


「……ムラムラ…じゃない。モヤモヤってするのよ! ストレスなのよっ! バラバラにしたい!」

 わーー、なんだか、なんだか。本当になんか危険な雰囲気だ。

 モンスター丸出しすぎですよ。森山さん。


「こいつら、プチプチってヤってると。なんかちょーっとだけ気持ち良いのよ」

 専用武器のグレートソード大剣・オブ・ザ・シンを、ザクザク地面に突き刺しはじめた。

 森山さんの目の点滅がヤバイ。

 やっぱり。なんか、イラついている。



「そ、そおですかぁ。で、でも。森山さ…ん。吉田さんをプチってしまうのはダメですよぉ……」



 ちょぉーと、恐怖で喉がかすれて。弱々しい声しか出せなかったが。

 俺は雰囲気を変えようと。



 無理やり森山さんに微笑んでみた。


「……」


 それで彼女は落ちてしまったらしい。 


「やっぱり無理!」

「は?」

「佐嶋君、来て! きてぇーーー!」

「おわわわ!?」


 大剣を放り投げた森山さんは、俺の両肩をつかみ上げると胸甲ブレストプレートに俺を無理やり押し込んだ。

 ええええ?



 まさかの即デレなの?

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