ないものねだり

をかや れいと

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ちかちゃん

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‪私に詩を教えてくれた人が‬
‪どうやら遠くに行くみたい‬

‪私に詩を書く仲間を持つことの‬
‪良さを教えてくれた人が‬
‪ひっそり書きたいとここを離れるみたい‬

‪文学部にも入ったことのない私は
文学部のような居心地の良さを感じていました

書くことを共有できる友を持つのは
初めての経験で
自分の作品を褒められたり
人の作品に関心を持ったり
あなたの作品に心救われたり
誰かの言葉に傷つけられたり

書くことで私は私を表現していました
現実では決して見せられない私を
言葉にすることで安定していたのです

書くことで私は不特定多数の誰かに
いいね!といわれたり、回されたり
人を勇気づけたり、人に傷つけられたりしました
言葉にすることで私は私になり
その私を好きだという人もいれば
苦手だという人もいた

言葉を武器に持つということは
強みでもあり弱みでもあることを同時に知る

慣れない世界の中で唯一
きちんと初めて繋がった人なので
そうか、さよなら(よくあることね)とは思えずに
早朝にこんなものを書いています

おはようと言えばおはようと言ってくれることの
幸せを今噛み締めています

あの頃、全員が暇を持て余していた頃
私にバトンを回してくれてありがとう
をかやれいとであることの意味合いを
知らせてくれてありがとう

感謝というのは
その都度きちんと伝えなければならないと
思わせてくれてありがとう

丸いお目目のきちんと首輪のつけた黒猫が
ふらっと私の前に現れて
きちんと歩ける道まで案内してくれたみたい

私がありがとうという声は
コンクリートに整えられた一本道に
響くだけで
首輪をつけた黒猫はつがいの猫を見つめて
私の方を振り返ることはなかった

こんな風に何人もの人を誘っては
いろんなものを置き去りにしてきたんだろう

つがいの猫と笑い合って
細い脚をペタペタとコンクリートにつける
あなたの後ろ姿を見つめていた

夏のコンクリートに火傷したみたいな
細い脚に目が向いた時
あなたがこちらを振り返った

気がつくと私は目にいっぱいの涙を溜めて
溢れる寸前で情けない表情をしていた

丸いお目目が少し細くなって
大丈夫だよと私にいってるみたいだった
同じように笑った、私の目からは涙がこぼれ落ちて
もう大丈夫だよと心の中で黒猫に言った

いつか、きっとないけれど
また巡り合う機会があれば古本屋巡ろうね
思いつきだけどたん塩食べに行こう

ありがとう、ちかちゃん
またね
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