31文字のうた

金時るるの

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文化祭という名前のぼっちにはつらい祭りが始まるようで

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 文化祭が近づいてきた。
 あれから先輩に言われた通り、毎日30分だけはクラスの出し物の手伝いをしている。作業中にぼっちになるのではと危惧していたのだが、意外にも野々原さんが

「森夜さん、よかったら一緒に作業しようよー。今画用紙切り抜いておばけ作ってるんだけど、顔が何か決まらないんだよねー。森夜さんネイルアート上手かったよね? それを活かしてかわいいおばけの顔描いてよー」

 などと誘ってくれたのだ。
 そうして私はおばけの顔担当となった。小田桐先輩のために眼鏡をかけたおばけも作っておこう。

 しかし、誘ってもらってありがたい事ではあるが、地味ぼっちの私は、このキラキラグループ内では浮いてしまい、少々の居心地の悪さを感じる。
 でも、もうすぐ30分経つはず。そうしたらきっと――
 と、その時、私の携帯のバイブ音が周囲に響いた。この際ガラケーだから恥ずかしいなどとは言っていられない。私は瞬時に携帯を取り出し通話ボタンを押す。

「……もしもし」
「おう。森夜 30分経ったから部室に来ていいぞ」

 日比木先輩の声はそれだけを告げると通話を終了してしまった。でも、私にとっては救いの電話。早速周囲に告げる。

「あの、部活の出し物のために先輩から呼び出されちゃって……」
「ああ、いつものやつね。あとは引き継ぐから行っていいよ」
「うん。ごめんね。ありがとう」

 そのまま荷物をひっつかんで教室を後にした。



 それを繰り返してなんとか訪れた文化祭当日。

 結局我が短歌部は、私が提案したように、見学者にお題を出して貰って、それに沿った短歌を即興で作る。というパフォーマンスをすることにした。
 事前に激安眼鏡チェーン店で、小田桐先輩リクエストの赤フレームの伊達眼鏡も買ってきて準備万端。
 だったはずなのだが――
 なぜか当日、日比木先輩が部室に大きなボストンバッグを抱えてやってきた。

「先輩、なんですか? その荷物」
「何ってお前、衣装だよ」
「衣装……?」
「ほら、一般的に短歌って古風なイメージだし、ここは和風を押し出して行けばいい感じなんじゃないかと思ってさ。和服をレンタルしてきた。もちろんお前の分もな」
「え……私、そんな話聞いてないんですけど」
「そりゃ言ってねえからな。サプライズだよサプライズ。何でもいうこと聞く約束だったろ?」

 そんなおかしなサプライズいらない……
  しかし私がそんな約束を交わしたのも事実だ。

「小田桐先輩は知ってたんですか?」
「いや、僕も今日初めて知ったけど……でも、まあいいんじゃない? 和服に眼鏡っていうのも新鮮で」

 あ、だめだこの人、眼鏡の事しか考えてない。

「というわけで行くぞ。話はつけてあるから」

 張り切る日比木先輩と、眼鏡があれば上機嫌な小田桐先輩を、私のようなか弱い乙女が制御できるはずもなく、なんだかんだで連れてこられたのは茶道部の部室。
 日比木先輩がドアをノックすると、八神先輩が顔を覗かせた。今日の先輩は着物を着ている。すらりとした立ち姿がきれいで大人っぽい。

「森夜さん、久しぶり。元気だった? 短歌部も面白そうな事するみたいだね。話は聞いてるよ。こっちにどうぞ。あ、小田桐君たちはそっちね」

 着替えのためか、部室内はいくつかのつい立てで仕切られていて、私はそのうちの一つの裏側へと案内される。そこで日比木先輩から預かった風呂敷包みを差し出す。この中に私の分の衣装が入っているとか。それを普段から和服に慣れ親しんでいるであろう茶道部の人達に着付けして貰おうという魂胆らしい。
 風呂敷包みの中は、紫と白の矢柄の着物とワインレッドの袴。それを八神先輩は手際よく私に着せてくれる。

「やっぱり帯はちょっと上のほうで結んだほうがかわいいよねー」

 などと言いながら。
 こんな複雑なものをいとも容易く扱う姿は、さすが茶道部といったところか。尊敬してしまう。
 着付けが終わると手早くメイク道具を並べ、私の顔にお化粧を施してゆく。
 うーん、茶道ができてで着物や袴の着付けもできてメイクもできる。更に彼氏さんまでいるなんて……八神先輩って女子力高いリア充だなあ。
 おまけに私の髪の毛を色々アレンジしてリボンまで結んでくれた。

「うんうん。良い感じ。さ、自分でも見てみなよ」

 そう言われて大きな鏡の前に連れていかれる。と、そこには大正時代から抜け出してきたような女の子が立っていた。
 後頭部で結んだハーフアップの髪の毛には袴と同じような色のリボンが揺れる。

「わあ、すごい。大正時代からタイムスリップしてきた人みたいです」
「我ながら会心の出来かも。これでブーツでも履いてれば完璧なんだけどなあ」

 確かに袴に上履きというのはかなりミスマッチだ。
 と、そこで思い出した。

「あ、それなら通学用に履いてきたのがあるので、あとで靴底を拭いて綺麗にして使います」

 さっきまではあんまり乗り気じゃなかったが、実際に鏡に映った自分の姿を見るとテンションが上がってきて、わたしはすっかりその気になってしまった。

「それじゃ小田桐君たちに見せに行こ? あっちもそろそろ終わってる頃だろうし」

 八神先輩に連れられつい立て裏から出ると、ちょうど小田桐先輩達と鉢合わせた。二人とも紺の着物に灰色の袴、襟からは白いシャツが覗く。

「二人ともその格好似合ってますね。昔の書生さんみたい」
「森夜さんもよく似合ってるよ。それに眼鏡を足したら完璧だね。なあ日比木」
「お前はいい加減眼鏡から離れろ。でも、まあ人前に出ても恥ずかしくない程度には良くなってる。八神に感謝だな」
「はい、八神先輩、ありがとうございました!」

 頭を下げると、八神先輩が苦笑する。

「いやいや、森夜さんのベースが良いからだって。それに、こっちとしてはネイルアートのお礼のつもりだよ。他の部員まで巻き込むのは公私混同も甚だしいけど、それはまあ、生徒同士の助け合いって名目で事でひとつ。よかったら休憩がてら茶道部のスペースにも遊びに来てね」

 そうして笑顔で送り出してくれた。

 和装なので床の方がいいだろうということで、化学室前の廊下にゴザと座布団を敷いて、その前に和紙と筆を用意する。それを使って墨で短歌を書くの予定なのだ。
 ちなみに私の短歌を披露するのは短歌部のイメージダウンにつながるだとか、なにげに酷い事を言われ、先輩達が短歌を考えている間、見学者にお茶を配る係になった。
 解せない気持ちを抱えたまま、最後の仕上げに眼鏡をかけると、それを見た小田桐先輩が

「うん、いいね。いいよいいよ……!」

 だとか、心なしか興奮した様子で褒めてくれた。拍手までして。
 眼鏡派の眼鏡愛おそるべし……

「どうせならみんなで眼鏡かければよかったのになあ。知的な雰囲気を醸し出せるし最高だと思うんだけど」
「そういえば日比木先輩はどうして裸眼のままなんですか?」
「俺は眼鏡はかけない主義なんだ。世界が見えすぎてしまうからな」

 なんだかかっこいい答えが返ってきた。

「森夜、お前はもっと外の世界を見たほうがいい」

 余計な一言も付け加えてきた。

 そうして後はお客さんが来るのを待つだけだったのだが――

「……おい、客が全然こねえぞ」
「うーん……やっぱり短歌っていうと一般的に固いイメージがついちゃってて敬遠されるのかもなあ。場所も校舎の端っこだしね」

 一応人通りのある場所に手作りポスター等を張っているのだが、それでもこちらに向かってくるような人影は見えない。
 思えば、私だって短歌といえば最初のころは古今和歌集のようなものを想像していたのだから、一般人だってそういう認識を持っていても不自然ではない。
 しばらく遠くで聞こえる喧騒などに耳を傾けていたが、やがてしびれを切らしたように日比木先輩が紙に何か書き始めた。
 そこには大きく

『短歌部! 化学室前にて即興短歌承ります!』

 という文字が。

「おい、森夜、お前ちょっとこれ持って宣伝してこい」
「え!? な、なんで私が……無理ですよ無理無理!」
「実際に短歌を作る俺らがこの場を離れるわけにはいかねえだろ? 大丈夫だ。ちょっとその辺を歩いてくればいいから」
「いや、ほんとに無理ですって……! 許してください!」

 宣伝のためにひとりきりでこんな格好で大勢の人の前を練り歩くだなんて、そんな勇気は持ち合わせていない。
 小田桐先輩に視線を送って助けを乞うも

「その恰好と眼鏡があれば宣伝効果抜群だね。眼鏡の魅力も伝わるし」

 とか言ってる。もうだめだ。この人は眼鏡が絡むと残念男子になってしまうみたいだ。
 すると、日比木先輩がじろりと私を睨む。

「お前、なんでも言う事きくって約束したよな?」
「う……」

 それを言われるとどうしようもできない。
 そういうわけで、私はサンドイッチマンよろしく、例の宣伝文句の書かれた紙を片手にしぶしぶと喧騒の中心へと足を踏み入れたのだった。


 先ほど渡された紙を胸のあたりに掲げながらおそるおそる廊下を歩く。
 すると、周囲には意外にもふりふりのメイド姿の女の子や、もっさもさの着ぐるみを着た人達など、私なんかよりずっと目立つ人が大勢いた。しかも、大声で呼び込みまでしている。
 なんだ、これなら別に私ひとり増えたところで悪目立ちすることもないだろう。さっさと歩きまわって、宣伝したつもりになって化学室前に戻ろう。先輩もその辺を歩いてくればいいって言ってたし。
 急に気分が軽くなって、本来の目的も忘れてあちらこちらに目を向ける。あ、眼鏡スーツカフェなんてのもある。小田桐先輩に教えたら喜ぶかな。
 あっちはお芝居の上演かあ。色々あるなあ。そういえばうちのクラスはどうなったんだろ。部活を理由にほとんど手伝いしなかったけど、ちゃんと完成したのかな?
 などときょろきょろしていたその時

「ねえねえ、君、どこのクラスの子?」

 見れば二人組の男子が私の目の前に。
 も、もしかして! この人たち短歌部に興味あるのかな!?

「い、いえ。これはクラスの出し物じゃなくて、その、短歌部のパフォーマンスの宣伝で……」

 私は紙を示しながら若干テンパりながらも必死で説明するが、なぜか男子達は戸惑ったような表情を浮かべる。

「タンカブ……? いや、そうじゃなくて、クラスを聞いてんだけど」
「え? だ、だからその、クラスの出し物じゃなくて、部活の出し物なんですよ」

 お、おかしいな。なんだか話がかみ合わない。目の前の男子達もなんだか困ったように顔を見合わせる。
 ま、まずい。知らないうちにおかしな事言っちゃったかな。ど、どうしよう……
 気まずい思いで立ちすくんでいると

「あれ? もしかして、森夜さん?」

 という女の子の声が聞こえた。見れば男子達の後方にゴスロリ衣装で肌は異様に白く、それでいて目の周りが黒くて、真っ青な唇をしている女子と、その隣にはミイラ男のように包帯で全身を覆った人物が。
 誰なのか判別するのは難しいが、先ほど聞こえた声からすると同じクラスの……たぶんあの人だ。
 お化け屋敷風カフェなるものをやるとは聞いていたが、こういう方向性なのか。なるほど。
 ともあれ、これは好機だ。これ以上おかしなことを口走らないうちに逃げよう。

「え、ええと、とにかく、化学室前でやってるので、良かったら見に来てくださいね」

 目の前の男子達にそう告げると、小走りでゴスロリっ娘とミイラ男のところに駆け寄った。
 
「あの、いつもと雰囲気が変わってるから間違ってたらごめんね。もしかして、野々原さん……?」
「え? そうだよ『呪いのフランス人形ノノ』っていうんだ。あ、ひょっとしてわからなかった? それってうちらのコスプレクオリティの高さを証明してるって事じゃん? やったね! うぇーい!」

 野々原さんは隣のミイラ男子とハイタッチを交わす。
 はー、こういうのって青春ぽいなあ。いいなあ。

「森夜さんもそのかっこかわいいねー。びっくりしちゃった。それが例の部活の出し物?」
「う、うん、そう。人が来ないから宣伝してる最中で。あの……あんまりクラスの手伝いできなくてごめんね」
「いいよいいよ。そっちもなんか大変なんでしょ? 一人きりで宣伝してるくらいだし」
「う、うん……」

 ほんとはぼっちになりたくないから、部活という言い訳を使って逃げていたとはとても言えない。曖昧に笑って誤魔化す。
 それにしても、今日の野々原さんは饒舌というか、フレンドリーというか。なんだかいつもと違うなあ。
 普段はこんなに仲良く話す事なんてないのに。やっぱり文化祭という特別なイベントが、みんなのテンションを爆上げさせているんだろうか?
 それを裏付けるかのように、野々原さんは「あ!」と声を上げた。
 
「そうだ。森夜さん、よかったらうちのクラス見て行かない? 森夜さんってば、あんまりいなかったから、完成形がどんなのか知らないでしょ?」
「え? で、でも……」
「いいじゃん、ちょっとだけ」

 野々原さんは私の手を取るとずんずん歩き出す。
 お、女の子と手を繋いでしまった……! こんなの小学生の時以来だ! なんだか仲良しの友達って感じがする!
 ……ちょっと覗くくらいなら大丈夫だよね……?
 心の中で先輩たちに謝りながらも、手を引かれ着いた自分のクラス。
 出入り口に垂れる暗幕をかき分けて中に入ると、4個の机を並べた上にテーブルクロスを掛けた席が何組か置かれ、その上に微かに光を放つ灯りが置かれている。うす暗い室内では魔女やオオカミ男達なんかが給仕をしていた。
 これがお化け屋敷風カフェ……あ、私が顔を描いた画用紙のお化けが天井からぶら下がっているのが見える。蛍光塗料でも塗ってあるのかぼんやり光を放っている。

 思わず辺りを見回していると、ひとつの人影が近づいてきた。タキシードみたいな服を着て、口の端から血のようなものを流しているように見える。吸血鬼らしい。
 吸血鬼は大仰に両手を広げる。

「フハハハハ! ようこそ我が屋敷へ。一人で来るとは良い度胸だ。気に入ったぞ。しもべに案内させるゆえ特製の血のワインでも堪能してゆくがよい」

 どうやらこのお化け屋敷の主という設定らしい。なかなか考えてるなあ。そして私をお客と勘違いしたみたいだ。暗い室内だし格好も浮いてるから仕方ないか。

「違う違う。この子はお客じゃないよ。森夜さんだよ。そこで逢ったから連れてきたの……です。ご主人様」

 しもべ設定を思い出したかのようにとってつけた丁寧語で野々原さんが説明すると、

「えっ? 森夜……さん? なんかいつもと雰囲気違う」
「うそー、ほんとに? 袴かわいい。すごく似合ってる」

 などと、主だけでなく他のしもべ達まで素の性格丸出しで集まって来ては盛り上がる。
 あれ、なんだろう、この和気あいあいとした空気。こんなの初めて。

「校内を歩き回って部活の宣伝をしてたんだって。部活の出し物で忙しかっただろうにクラスの手伝いもしてくれて大変だったでしょ? えらいよねー」
「そ、そんな事ないよ」

 先輩に命令されて仕方なく。ともいえない。
 でも、みんなは私が無理して手伝っていたように見えたらしい。
 もしかして日比木先輩はこれを見越してあんな命令を……? 

 そんな事を考えていると、鋭い声が響いた。

「ちょっとみんな、浮かれるのもいい加減にしてよ。他のお客様に迷惑でしょ?」

 腰に手を当てながらお説教して来たのは、ネコミミのカチューシャをつけた桜坂さん。黒猫を連想させる黒いワンピースに身を包んで、肉球の付いたもこもこな手袋をしている。

 言われてみればその通りだ、私という存在のせいでお化け屋敷という雰囲気が台無し。
 おまけにみんなが設定していたであろうキャラの設定崩壊まで招いてしまった。

「ついさっきまで『呼び込み行ってくる』とか言いながら、男といちゃいちゃしてサボってたヤツに言われたくないんですけど」

 横からは野々原さんのそんな呟きが聞こえた。
 まずい、クラスの空気まで悪くなりかけてる!
 遮るように慌てて謝る。

「ご、ごめんなさい。邪魔するつもりはなかったんだけど……その、短歌部でも即興短歌イベントを化学室前でやってるから、興味があったら見にきてね。それじゃあ、お邪魔しました。みんなも頑張って」

 なんとか宣伝を終えると、そそくさと教室から逃げ出した。
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