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贈り物と報酬
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わたしはほうきとバケツを抱えて二階の廊下を歩く。
思っていたよりこのお屋敷は広い。掃除をするのもなかなか大変だ。
階段を掃除しようとバケツを床に置く。
そのときふと、妙な音が聞こえた。反射的にそちらのほうに顔を向ける。
なんだろう今の音……奥の部屋から聞こえたような……。
わたしは廊下の突き当たりにある部屋に近づいてドアを見上げる。
そういえばアルベリヒさんが言ってた。この部屋だけは掃除しなくて良いって。物置みたいなものだからだとか。
でも、さっきの変な音……もしかして何か床に落ちたのかもしれない。壊れていたりなんかしたら大変だ。
そう考えてそっとドアノブに手をかけたその時
「そこで何してるんだ?」
その声に、わたしは反射的に振り返る。
いつのまにかアルベリヒさんが背後に立っていた。訝しげな目をわたしに向けている。
「ええと、この部屋の中から何か音がしたような気がして……」
おずおずとドアを指差すと、アルベリヒさんが近づいてきてドアを押さえる。
「この部屋は何もしなくていい。そう言ったはずだ」
「す、すみません……」
思わぬ強い語気にわたしが慌てて謝ると、アルベリヒさんははっとしたように
「あ、いや……」
と口ごもる。
なんだろう。この部屋に見られたくないものでもあるのかな。
「そんな事よりも」
アルベリヒさんが空気を変えるように咳払いする。
「今から出掛ける。掃除は良いからお前もついてこい」
そう言って、こちらの返事も待たずにさっさと歩き出してしまった。
わたしは慌てて後を追う。
まったく、アルベリヒさんてちょっと強引なところがあるなあ。
わたしのこと、ただの使用人として雇うつもりはないとか言ってたけど、それならもうちょっとレディに対する気遣い的なものを見せて欲しい。
心の中でぼやきながらもアルベリヒさんの後をついてゆく。
家を出て暫く歩くと、賑やかな通りに出た。道の両脇には様々な商店が建ち並び、大勢の人が行き交っている。
見ているだけで楽しくて、思わずあたりをきょろきょろしてしまい、危うくアルベリヒさんの背中を見失いそうになった。あぶない。
やがて着いたのは、上品な佇まいの一軒のお店だった。看板には【クロウリー宝飾店】とある。
こんなところで何か買うのかな? アルベリヒさんが身につけるものとか?
考えていると、扉を開けながらアルベリヒさんがこちらを振り返る。
「マルグリッドさんに贈り物をしたいから一緒に選んでくれ」
「贈り物? このお店で?」
わたしの疑問に応えるようにアルベリヒさんは口を開く。
「彼女は母親の形見を失ったんだ。相当落ち込んでいるに違いない。代わりとまではいかないが、せめて別のものをと思って。結婚祝いも兼ねてな。けど、どんなものを贈ったらいいのか俺だけじゃ見当もつかないし……」
「え? ええ?」
予想外の答えに、わたしは思わず声を上げてしまった。
まさか、そんなこと考えてたなんて……。
もしかしてアルベリヒさんてめちゃくちゃ良い人? 昨日からマルグリッドさんの事、気にしてたのかな。依頼人の味方って言ってたのは、こういうこと?
でも、それならわたしも共感できる。これでマルグリッドさんの気が少しでも晴れるのなら協力したい。
「わかりました。そういう事なら喜んで手伝います。素敵なのがみつかるといいですね!」
そうしてお店の中をあっちへ行ったりこっちへ行ったり。いくつものアクセサリーを見比べて選んだものは、シンプルな銀のロケットペンダントだった。
あまり親しくもないわたしたちが豪奢なものを贈っても、マルグリッドさんが遠慮してしまうのではと考えてのことだった。受け取ってもらえるといいけれど。
アルベリヒさんが支払いを済ませている間に、改めて店内を見回す。
さっきはプレゼントを選ぶ事で頭が一杯だったけれど、落ち着いてよく考えれば、ここには宝石がたくさんあるんだよね。すごいなあ。
きらきらと反射する光に引き寄せられるように、わたしはショーケースの一角に近づく。
わあ、このイヤリング、きれい……。
その瞬間、胸が高鳴った。なんだろうこの気持ち。このイヤリングを見ているときゅんとしてしまう。これが一目惚れってやつなのかな。繊細な細工の施された銀の土台に青い宝石。それから目が放せない。
「よかったら、試着してみる?」
頭上からの声に、わたしが顔を上げると、店員の女性が笑顔をこちらに向けていた。
「い、いえ、わたしはただ、見ていただけで。試着なんてそんな、おそれ多い……」
お金だって持ってないし。
慌てて首を振るわたしに、女性はいたずらっぽい笑みを浮べた。
「試すだけならタダよ。私もね、ここで働く前はよく試着させてもらっていたの。普通に生活していれば、こんな宝石なかなか身につける機会って無いでしょう? 楽しかったわ」
言われてみれば、確かにそんな機会そうそう無い。そういう事なら、せっかくだし試着させてもらおうかな……?
「あの、それじゃあ、このイヤリングを。青い宝石のこれ……」
わたしが指差すと、女性はショーケースから商品を取り出そうと身を屈める。
「おい、何してるんだ。もう行くぞ」
その時、アルベリヒさんの声が飛んできた。支払いが済んだみたいだ。
わたしは店員さんに謝って、しぶしぶその場を離れた。
うう、もう少しで試着できるところだったのに。残念……。あーあ、あのイヤリング素敵だったなあ。
別の日にこっそり来てみようかな……。
◇◇◇◇◇
お店を出て歩いていると、アルベリヒさんが何かを思い出したように胸に手を当てる仕草をした。
「しまった。忘れ物をした。先に行っててくれ」
「それなら、わたしも一緒に……」
「いや、お前には頼みたい事がある。アップルパイを買ってきてもらいたいんだ」
「アップルパイ?」
「そう。いつものケーキ屋で。今から行けば午後の焼き上がり時間に間に合うはずだ。3つ……いや、4つだ。頼んだぞ。それが済んだら家に戻ってて良いから」
そう言ったかと思うと、アルベリヒさんはくるりと踵を返し、元来た道を戻っていった。
忘れ物ってなんだろう。ちらりと気になったが、任された買い物の事もあり、わたしは歩き出す。
あの人のお気に入りのルーデル菓子店では、ホール型の大きいものだけじゃなく、半月型の食べきりサイズのアップルパイも売っている。あの人は外出するたびその半月型のアップルパイをいくつか買ってきては、わたしにひとつわけてくれる。それで他は全部一人で平らげるのだ。今回もそのつもりなんだろう。
あのお店のアップルパイは、さくさくのパイとごろっとした林檎の食感が素晴らしくてわたしも大好きだ。でも、それを毎日のように何個も食べて、アルベリヒさんは飽きないのかな……まさか、アップルパイが主食だったりして。
しかし、焼きあがり時間まで把握しているとは。どれだけアップルパイ好きなんだ。
ともあれ、ルーデル菓子店のアップルパイは人気商品だ。買い逃したとあってはアルベリヒさんに何を言われるかわからない。
わたしは足早にお店へと急いだ。
◇◇◇◇◇
次の日、アルベリヒさんに例のロケットペンダントを手渡された。
「ちょっとした魔除けの術を施しておいた。マルグリッドさんに届けてくれ」
「それなら、アルベリヒさんが直接渡したほうがいいんじゃ? 今回の件の発案者でもあることだし」
「それは駄目だ。結婚を控えた女性に俺みたいなのが逢いに行って、万が一妙な噂を立てられたら彼女が困るだろ」
はー、そんなことまで考えているのか。しかも魔除けの術までかけてあるとは。昨日買ってすぐにマルグリッドさんに渡さなかったのはそのためか。
そういうことなら仕方ない。届けに行ってあげようではないか。わたしって優しいな。
そうしてマルグリッドさんが働いているというグラール通りのお屋敷を訪ねる。彼女はそこでメイドをしているらしい。
勝手口から他の使用人を通じて呼び出してもらうと、暫くしてマルグリッドさんが姿を現した。
「すみません。お仕事中に」
「いえ、大丈夫よ。それより、何かご用かしら?」
「実は……」
わたしは例のロケットペンダントを差し出す。
「落としたペンダントの代わりにはならないかもしれませんが……」
事情を聞いたマルグリッドさんは恐縮したように胸の前で手を振る。
「そんなの、申し訳ないわ。こちらは報酬もお支払いしてないのに」
「気にしないでください。これは結婚のお祝いのつもりで用意したんですから」
なんて、我ながら偉そうな事言ってるけど、わたしは選ぶのを手伝っただけなんだよなあ……。
でも、ここまできたら、ちゃんと受け取ってもらうことがわたしの仕事だ。
「それにこれ、アルベリヒさんが魔除けの術をかけたものなんです。マルグリッドさんのためにって。だから、どうしても受け取って欲しくて。お願いします。きっと効果ありますよ。知ってますか? アルベリヒさんて最高ランクの魔法使いなんですよ」
わたしの言葉にマルグリッドさんは視線を宙に彷徨わせ、考える様子を見せる。そうした後にふっと表情を緩ませた。
「そんなに私の事を気にかけてくれて、魔法までかけてもらって……私にはもったいないくらい、すてきな贈り物だわ」
「それじゃあ……」
「ええ、あなたたちの好意に甘えさせていただこうかしら」
「よかった」
わたしが胸をなでおろすと、マルグリッドさんはその場でロケットペンダントをつけてくれた。銀色の表面が光に反射して輝く。
「ありがとう。大切にするわね」
はにかんだように笑うマルグリッドさんは、どこか吹っ切れたような表情をしている。失くしたペンダントの事、心の中で整理できたのかな。これから訪れるであろう幸せを感じさせるように、その姿はとても綺麗だった。
◇◇◇◇◇
晴れやかな気分で家に帰り着くと、書斎で本を読んでいたアルベリヒさんに、マルグリッドさんのことを報告する。
「喜んでくれたみたいです。贈ってよかったですね」
それを聞いてアルベリヒさんもほっとしたようだ。
「そうだ。ついでにお前にも渡すものがあったんだ。手を出せ」
渡すもの? なんだろう。アップルパイかな?
不思議に思って両手を差し出すと、その上にアルベリヒさんが何かを載せる。
微かに金属の触れ合うような音がした。
彼の手が離れて、それが明らかになると、わたしは驚かずにはいられなかった。
「こ、これって、イヤリング……?」
しかも、昨日お店でわたしが一目惚れして試着しようとしていたやつだ。うそ。どうして?
「な、なんで……?」
「お前、ここへ来てから何度かあの失せ物探しの魔法を使ったけど、全部無償だったと思ってな。それは今までの俺からの報酬代わりってことで」
「そ、そうじゃなくて、どうしてこれを……!?」
「……もしかして、気に入らなかったか?」
アルベリヒさんはなんだか困惑したような表情を浮かべたので、わたしは慌てて首を横に振る。
「い、いえ、逆です。このイヤリング、欲しかったんです。すごい。どうしてわかったんですか?」
「魔法でお前の心を読んだ」
「え?」
アルベリヒさんはにやりと唇を釣り上げると、話は終わったと言わんばかりに机に向き直り、持っていた本に目を落としてしまった。
心を読んだ? まさかね。冗談だよね? もしそうだとしたら、わたしの心の中のあんなことやこんなことが全部筒抜けだったんだろうか。
……アルベリヒさんのばーかばーか。アップルパイばーか。
……………
よし、読まれてない。
はー、まったく、嘘か本気かわからないようなこと言うのはやめてほしい。無垢な乙女の心を惑わすなんて随分と悪趣味だ。
しかしながら焦りが過ぎ去ると、嬉しさがじわじわと込み上げてきて、わたしは手の中のイヤリングに目を落とす。
「あの、これ、付けてみてもいいですか?」
「当たり前だろ。何のためのイヤリングなんだ」
許可が出たので洗面所へと駆け込む。
微かに震える手でイヤリングを身に付け、鏡を覗き込むと、両耳の下にはきらりと青い宝石が揺れていた。
わあ、すごい! 本物だ! ほんとに欲しかったあのイヤリングだ! 幸せ!
鏡の前でひとり興奮していると、ふらりとロロが現れた。遊び相手でも探していたんだろうか。わたしはその黒い身体をさっと抱き上げる。
「見て見ててロロ。このイヤリング、すごいでしょ。アルベリヒさんに貰ったんだよ」
ロロはわたしの言葉に呼応するように「にゃあ」と鳴いた。
ロロを抱き上げたままくるくるとその場で回ったり、鏡を覗き込んだり、喜びを分かち合っていると、ふと先ほどの疑問が蘇った。
アルベリヒさん、わたしがこのイヤリングを欲しがってたこと、どうやって知ったんだろう。
気になる。本人には茶化されてしまったが。
どうにも気になって仕方が無かったので、買い物を建前にひとり街に出ると、わたしはクロウリー宝飾店の前へと足を運ぶ。耳には例のイヤリングが揺れている。
とはいえ、こんなお店にわたしなんかが一人で入るのはなんとなく気がひける。何度もお店の前を行ったり来たりしながら、中に入るタイミングを見計らっていると、うろうろしているわたしが不審だったのか、お店の中から誰かが出てきた。
昨日試着を勧めてくれた店員さんだ。
「誰かと思ったら、あなただったのね。そのイヤリング、よく似合ってるわ。あの真っ黒い人に貰ったんでしょう?」
真っ黒い人って、アルベリヒさんの事だ。やっぱりあの格好は印象的なんだろう。
「その真っ黒い人ですけど、どうしてこのイヤリングを選んだんですか? わたしがこれを欲しがってたこと、知らなかったはずなのに」
尋ねると、店員さんは何かを思い出したようにくすりと笑った。
「あの人ね。昨日あれからすぐにひとりでお店に戻って来て『さっきまで連れのメイドが見ていた商品を教えてくれ』ってわたしに尋ねたのよ。それで、そのイヤリングだって教えたら、迷う事なく買っていったわ」
えー、アルベリヒさん、そんな事してたんだ……。
「あれ? でも、おかしいな。あの時は『忘れ物をした』って言ってたのに」
そうだ。確かにアルベリヒさんは昨日「忘れ物をした」と言って一人でどこかに行った。てっきりその「忘れ物」を取りに行ったとばかり思っていたけれど、店員さんの話ではすぐにお店に戻ってきてイヤリングを買ったという。それじゃあ「忘れ物」とはなんだったのか。
店員さんはわたしの言葉を聞くと首をかしげた。
「そうねえ。きっと、男の人にも色々あるのよ」
「色々って?」
その問いに、店員さんはふふふ、と笑っただけで、答えてはくれなかった。
◇◇◇◇◇
「なんなんだ、この肉の大きさは」
夕食時、食卓のチキンソテーを目にしたアルベリヒさんが驚きの声を上げる。
「鶏肉がお買い得だったんですよ」
「だからといって尋常じゃない大きさだ。しかもなんで俺のだけ……」
「まあまあ、良いじゃないですか。たくさん食べてお仕事頑張ってください」
どんなお仕事してるのかいまだによくわからないけど……。
アルベリヒさんがテーブルについたところで、わたしは思い切って切り出す。
「あの、アルベリヒさん」
「うん?」
「イヤリング、ありがとうございました。大切にしますね」
さっきはとにかくびっくりしていて、ちゃんとお礼を言っていなかった事を思い出したのだ。言おう言おうと思っていたら、こんなタイミングになってしまった。
大きなチキンソテーもささやかなお礼のつもりだ。
アルベリヒさんはわたしの耳に揺れるイヤリングを少しの間眺めた後に唇を釣り上げる。
「馬子にも衣装」
「は?」
「いや、なんでもない」
今、すごく失礼な事言わなかった? 自分でプレゼントしておきながら、わざわざそんな事言うなんてどうかしてる。
そこまで考えて、わたしは頭を振る。
いや、いやいや、待つんだ。これもまたあの宝飾店の店員さんの言っていたような、男の人にあるという「色々」なことかもしれないじゃないか。わたしにはわかり知れないかもしれないけれど。
……………
……めんどくさいなあ。
思っていたよりこのお屋敷は広い。掃除をするのもなかなか大変だ。
階段を掃除しようとバケツを床に置く。
そのときふと、妙な音が聞こえた。反射的にそちらのほうに顔を向ける。
なんだろう今の音……奥の部屋から聞こえたような……。
わたしは廊下の突き当たりにある部屋に近づいてドアを見上げる。
そういえばアルベリヒさんが言ってた。この部屋だけは掃除しなくて良いって。物置みたいなものだからだとか。
でも、さっきの変な音……もしかして何か床に落ちたのかもしれない。壊れていたりなんかしたら大変だ。
そう考えてそっとドアノブに手をかけたその時
「そこで何してるんだ?」
その声に、わたしは反射的に振り返る。
いつのまにかアルベリヒさんが背後に立っていた。訝しげな目をわたしに向けている。
「ええと、この部屋の中から何か音がしたような気がして……」
おずおずとドアを指差すと、アルベリヒさんが近づいてきてドアを押さえる。
「この部屋は何もしなくていい。そう言ったはずだ」
「す、すみません……」
思わぬ強い語気にわたしが慌てて謝ると、アルベリヒさんははっとしたように
「あ、いや……」
と口ごもる。
なんだろう。この部屋に見られたくないものでもあるのかな。
「そんな事よりも」
アルベリヒさんが空気を変えるように咳払いする。
「今から出掛ける。掃除は良いからお前もついてこい」
そう言って、こちらの返事も待たずにさっさと歩き出してしまった。
わたしは慌てて後を追う。
まったく、アルベリヒさんてちょっと強引なところがあるなあ。
わたしのこと、ただの使用人として雇うつもりはないとか言ってたけど、それならもうちょっとレディに対する気遣い的なものを見せて欲しい。
心の中でぼやきながらもアルベリヒさんの後をついてゆく。
家を出て暫く歩くと、賑やかな通りに出た。道の両脇には様々な商店が建ち並び、大勢の人が行き交っている。
見ているだけで楽しくて、思わずあたりをきょろきょろしてしまい、危うくアルベリヒさんの背中を見失いそうになった。あぶない。
やがて着いたのは、上品な佇まいの一軒のお店だった。看板には【クロウリー宝飾店】とある。
こんなところで何か買うのかな? アルベリヒさんが身につけるものとか?
考えていると、扉を開けながらアルベリヒさんがこちらを振り返る。
「マルグリッドさんに贈り物をしたいから一緒に選んでくれ」
「贈り物? このお店で?」
わたしの疑問に応えるようにアルベリヒさんは口を開く。
「彼女は母親の形見を失ったんだ。相当落ち込んでいるに違いない。代わりとまではいかないが、せめて別のものをと思って。結婚祝いも兼ねてな。けど、どんなものを贈ったらいいのか俺だけじゃ見当もつかないし……」
「え? ええ?」
予想外の答えに、わたしは思わず声を上げてしまった。
まさか、そんなこと考えてたなんて……。
もしかしてアルベリヒさんてめちゃくちゃ良い人? 昨日からマルグリッドさんの事、気にしてたのかな。依頼人の味方って言ってたのは、こういうこと?
でも、それならわたしも共感できる。これでマルグリッドさんの気が少しでも晴れるのなら協力したい。
「わかりました。そういう事なら喜んで手伝います。素敵なのがみつかるといいですね!」
そうしてお店の中をあっちへ行ったりこっちへ行ったり。いくつものアクセサリーを見比べて選んだものは、シンプルな銀のロケットペンダントだった。
あまり親しくもないわたしたちが豪奢なものを贈っても、マルグリッドさんが遠慮してしまうのではと考えてのことだった。受け取ってもらえるといいけれど。
アルベリヒさんが支払いを済ませている間に、改めて店内を見回す。
さっきはプレゼントを選ぶ事で頭が一杯だったけれど、落ち着いてよく考えれば、ここには宝石がたくさんあるんだよね。すごいなあ。
きらきらと反射する光に引き寄せられるように、わたしはショーケースの一角に近づく。
わあ、このイヤリング、きれい……。
その瞬間、胸が高鳴った。なんだろうこの気持ち。このイヤリングを見ているときゅんとしてしまう。これが一目惚れってやつなのかな。繊細な細工の施された銀の土台に青い宝石。それから目が放せない。
「よかったら、試着してみる?」
頭上からの声に、わたしが顔を上げると、店員の女性が笑顔をこちらに向けていた。
「い、いえ、わたしはただ、見ていただけで。試着なんてそんな、おそれ多い……」
お金だって持ってないし。
慌てて首を振るわたしに、女性はいたずらっぽい笑みを浮べた。
「試すだけならタダよ。私もね、ここで働く前はよく試着させてもらっていたの。普通に生活していれば、こんな宝石なかなか身につける機会って無いでしょう? 楽しかったわ」
言われてみれば、確かにそんな機会そうそう無い。そういう事なら、せっかくだし試着させてもらおうかな……?
「あの、それじゃあ、このイヤリングを。青い宝石のこれ……」
わたしが指差すと、女性はショーケースから商品を取り出そうと身を屈める。
「おい、何してるんだ。もう行くぞ」
その時、アルベリヒさんの声が飛んできた。支払いが済んだみたいだ。
わたしは店員さんに謝って、しぶしぶその場を離れた。
うう、もう少しで試着できるところだったのに。残念……。あーあ、あのイヤリング素敵だったなあ。
別の日にこっそり来てみようかな……。
◇◇◇◇◇
お店を出て歩いていると、アルベリヒさんが何かを思い出したように胸に手を当てる仕草をした。
「しまった。忘れ物をした。先に行っててくれ」
「それなら、わたしも一緒に……」
「いや、お前には頼みたい事がある。アップルパイを買ってきてもらいたいんだ」
「アップルパイ?」
「そう。いつものケーキ屋で。今から行けば午後の焼き上がり時間に間に合うはずだ。3つ……いや、4つだ。頼んだぞ。それが済んだら家に戻ってて良いから」
そう言ったかと思うと、アルベリヒさんはくるりと踵を返し、元来た道を戻っていった。
忘れ物ってなんだろう。ちらりと気になったが、任された買い物の事もあり、わたしは歩き出す。
あの人のお気に入りのルーデル菓子店では、ホール型の大きいものだけじゃなく、半月型の食べきりサイズのアップルパイも売っている。あの人は外出するたびその半月型のアップルパイをいくつか買ってきては、わたしにひとつわけてくれる。それで他は全部一人で平らげるのだ。今回もそのつもりなんだろう。
あのお店のアップルパイは、さくさくのパイとごろっとした林檎の食感が素晴らしくてわたしも大好きだ。でも、それを毎日のように何個も食べて、アルベリヒさんは飽きないのかな……まさか、アップルパイが主食だったりして。
しかし、焼きあがり時間まで把握しているとは。どれだけアップルパイ好きなんだ。
ともあれ、ルーデル菓子店のアップルパイは人気商品だ。買い逃したとあってはアルベリヒさんに何を言われるかわからない。
わたしは足早にお店へと急いだ。
◇◇◇◇◇
次の日、アルベリヒさんに例のロケットペンダントを手渡された。
「ちょっとした魔除けの術を施しておいた。マルグリッドさんに届けてくれ」
「それなら、アルベリヒさんが直接渡したほうがいいんじゃ? 今回の件の発案者でもあることだし」
「それは駄目だ。結婚を控えた女性に俺みたいなのが逢いに行って、万が一妙な噂を立てられたら彼女が困るだろ」
はー、そんなことまで考えているのか。しかも魔除けの術までかけてあるとは。昨日買ってすぐにマルグリッドさんに渡さなかったのはそのためか。
そういうことなら仕方ない。届けに行ってあげようではないか。わたしって優しいな。
そうしてマルグリッドさんが働いているというグラール通りのお屋敷を訪ねる。彼女はそこでメイドをしているらしい。
勝手口から他の使用人を通じて呼び出してもらうと、暫くしてマルグリッドさんが姿を現した。
「すみません。お仕事中に」
「いえ、大丈夫よ。それより、何かご用かしら?」
「実は……」
わたしは例のロケットペンダントを差し出す。
「落としたペンダントの代わりにはならないかもしれませんが……」
事情を聞いたマルグリッドさんは恐縮したように胸の前で手を振る。
「そんなの、申し訳ないわ。こちらは報酬もお支払いしてないのに」
「気にしないでください。これは結婚のお祝いのつもりで用意したんですから」
なんて、我ながら偉そうな事言ってるけど、わたしは選ぶのを手伝っただけなんだよなあ……。
でも、ここまできたら、ちゃんと受け取ってもらうことがわたしの仕事だ。
「それにこれ、アルベリヒさんが魔除けの術をかけたものなんです。マルグリッドさんのためにって。だから、どうしても受け取って欲しくて。お願いします。きっと効果ありますよ。知ってますか? アルベリヒさんて最高ランクの魔法使いなんですよ」
わたしの言葉にマルグリッドさんは視線を宙に彷徨わせ、考える様子を見せる。そうした後にふっと表情を緩ませた。
「そんなに私の事を気にかけてくれて、魔法までかけてもらって……私にはもったいないくらい、すてきな贈り物だわ」
「それじゃあ……」
「ええ、あなたたちの好意に甘えさせていただこうかしら」
「よかった」
わたしが胸をなでおろすと、マルグリッドさんはその場でロケットペンダントをつけてくれた。銀色の表面が光に反射して輝く。
「ありがとう。大切にするわね」
はにかんだように笑うマルグリッドさんは、どこか吹っ切れたような表情をしている。失くしたペンダントの事、心の中で整理できたのかな。これから訪れるであろう幸せを感じさせるように、その姿はとても綺麗だった。
◇◇◇◇◇
晴れやかな気分で家に帰り着くと、書斎で本を読んでいたアルベリヒさんに、マルグリッドさんのことを報告する。
「喜んでくれたみたいです。贈ってよかったですね」
それを聞いてアルベリヒさんもほっとしたようだ。
「そうだ。ついでにお前にも渡すものがあったんだ。手を出せ」
渡すもの? なんだろう。アップルパイかな?
不思議に思って両手を差し出すと、その上にアルベリヒさんが何かを載せる。
微かに金属の触れ合うような音がした。
彼の手が離れて、それが明らかになると、わたしは驚かずにはいられなかった。
「こ、これって、イヤリング……?」
しかも、昨日お店でわたしが一目惚れして試着しようとしていたやつだ。うそ。どうして?
「な、なんで……?」
「お前、ここへ来てから何度かあの失せ物探しの魔法を使ったけど、全部無償だったと思ってな。それは今までの俺からの報酬代わりってことで」
「そ、そうじゃなくて、どうしてこれを……!?」
「……もしかして、気に入らなかったか?」
アルベリヒさんはなんだか困惑したような表情を浮かべたので、わたしは慌てて首を横に振る。
「い、いえ、逆です。このイヤリング、欲しかったんです。すごい。どうしてわかったんですか?」
「魔法でお前の心を読んだ」
「え?」
アルベリヒさんはにやりと唇を釣り上げると、話は終わったと言わんばかりに机に向き直り、持っていた本に目を落としてしまった。
心を読んだ? まさかね。冗談だよね? もしそうだとしたら、わたしの心の中のあんなことやこんなことが全部筒抜けだったんだろうか。
……アルベリヒさんのばーかばーか。アップルパイばーか。
……………
よし、読まれてない。
はー、まったく、嘘か本気かわからないようなこと言うのはやめてほしい。無垢な乙女の心を惑わすなんて随分と悪趣味だ。
しかしながら焦りが過ぎ去ると、嬉しさがじわじわと込み上げてきて、わたしは手の中のイヤリングに目を落とす。
「あの、これ、付けてみてもいいですか?」
「当たり前だろ。何のためのイヤリングなんだ」
許可が出たので洗面所へと駆け込む。
微かに震える手でイヤリングを身に付け、鏡を覗き込むと、両耳の下にはきらりと青い宝石が揺れていた。
わあ、すごい! 本物だ! ほんとに欲しかったあのイヤリングだ! 幸せ!
鏡の前でひとり興奮していると、ふらりとロロが現れた。遊び相手でも探していたんだろうか。わたしはその黒い身体をさっと抱き上げる。
「見て見ててロロ。このイヤリング、すごいでしょ。アルベリヒさんに貰ったんだよ」
ロロはわたしの言葉に呼応するように「にゃあ」と鳴いた。
ロロを抱き上げたままくるくるとその場で回ったり、鏡を覗き込んだり、喜びを分かち合っていると、ふと先ほどの疑問が蘇った。
アルベリヒさん、わたしがこのイヤリングを欲しがってたこと、どうやって知ったんだろう。
気になる。本人には茶化されてしまったが。
どうにも気になって仕方が無かったので、買い物を建前にひとり街に出ると、わたしはクロウリー宝飾店の前へと足を運ぶ。耳には例のイヤリングが揺れている。
とはいえ、こんなお店にわたしなんかが一人で入るのはなんとなく気がひける。何度もお店の前を行ったり来たりしながら、中に入るタイミングを見計らっていると、うろうろしているわたしが不審だったのか、お店の中から誰かが出てきた。
昨日試着を勧めてくれた店員さんだ。
「誰かと思ったら、あなただったのね。そのイヤリング、よく似合ってるわ。あの真っ黒い人に貰ったんでしょう?」
真っ黒い人って、アルベリヒさんの事だ。やっぱりあの格好は印象的なんだろう。
「その真っ黒い人ですけど、どうしてこのイヤリングを選んだんですか? わたしがこれを欲しがってたこと、知らなかったはずなのに」
尋ねると、店員さんは何かを思い出したようにくすりと笑った。
「あの人ね。昨日あれからすぐにひとりでお店に戻って来て『さっきまで連れのメイドが見ていた商品を教えてくれ』ってわたしに尋ねたのよ。それで、そのイヤリングだって教えたら、迷う事なく買っていったわ」
えー、アルベリヒさん、そんな事してたんだ……。
「あれ? でも、おかしいな。あの時は『忘れ物をした』って言ってたのに」
そうだ。確かにアルベリヒさんは昨日「忘れ物をした」と言って一人でどこかに行った。てっきりその「忘れ物」を取りに行ったとばかり思っていたけれど、店員さんの話ではすぐにお店に戻ってきてイヤリングを買ったという。それじゃあ「忘れ物」とはなんだったのか。
店員さんはわたしの言葉を聞くと首をかしげた。
「そうねえ。きっと、男の人にも色々あるのよ」
「色々って?」
その問いに、店員さんはふふふ、と笑っただけで、答えてはくれなかった。
◇◇◇◇◇
「なんなんだ、この肉の大きさは」
夕食時、食卓のチキンソテーを目にしたアルベリヒさんが驚きの声を上げる。
「鶏肉がお買い得だったんですよ」
「だからといって尋常じゃない大きさだ。しかもなんで俺のだけ……」
「まあまあ、良いじゃないですか。たくさん食べてお仕事頑張ってください」
どんなお仕事してるのかいまだによくわからないけど……。
アルベリヒさんがテーブルについたところで、わたしは思い切って切り出す。
「あの、アルベリヒさん」
「うん?」
「イヤリング、ありがとうございました。大切にしますね」
さっきはとにかくびっくりしていて、ちゃんとお礼を言っていなかった事を思い出したのだ。言おう言おうと思っていたら、こんなタイミングになってしまった。
大きなチキンソテーもささやかなお礼のつもりだ。
アルベリヒさんはわたしの耳に揺れるイヤリングを少しの間眺めた後に唇を釣り上げる。
「馬子にも衣装」
「は?」
「いや、なんでもない」
今、すごく失礼な事言わなかった? 自分でプレゼントしておきながら、わざわざそんな事言うなんてどうかしてる。
そこまで考えて、わたしは頭を振る。
いや、いやいや、待つんだ。これもまたあの宝飾店の店員さんの言っていたような、男の人にあるという「色々」なことかもしれないじゃないか。わたしにはわかり知れないかもしれないけれど。
……………
……めんどくさいなあ。
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