ボディジャック

ドライフラワー

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第1章 乗っ取られた分身を取り戻せ!

15.生い立ち

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ライカが風呂に入らないと街に行きたくないと、言ったため手製の露天風呂を作ったマリクとリード。
露天風呂を作ってから3日目、まだ街にはたどり着いていなかった。
身をきれいにするという目的は達成されていた。
だが、

「せっかく作ったのにたった1回の入浴だけなんても勿体ない!!」
「景色も最高だから、明るいうちに入りたい!」
「きれいなお花見つけたの。これをお風呂に浮かべたいわ!」
「服が汚いから洗濯もしなきゃ!!」

などなど、ライカがものすごく惜しむので、まだ森の中にとどまっていた。
かくいう、マリクも傑作と言っていい露天風呂を使い捨てにするのは気が進まなかった。
リードもこの露天風呂を気に入っていたので、周辺で狩りなどして、この地に長居をしていた。
そのため、露天風呂は使いやすいように工夫されていった。
小川をせき止めて、水を汲みやすくし、その水を入れておくタンクも岩で作った。
香りのよい花や野草を入浴剤として、風呂に浮かべたりもしていた。

「ああ、極楽~」

ライカは洗濯という一仕事を終え、昼間から入浴を楽しんでいた。

「大量大量、今日の獲物だ」
「お疲れ様です、リードさん」

リードはシカやキジと野草を担いで帰ってきた。
マリクはそれを受け取り、今晩の夕食を作る。
リードはシカの角や鳥の羽根など、売れそうなものを取って手入れをするのが日課になっていた。

「あいつ、また風呂入ってるのか?」
「はい、とっても気に入ってくれていて、僕としても嬉しいです」
「私らが入る湯あるのかな?」
「ちゃんとためてありますよ」

マリクはタンクの方に目をやった。
タンクは3個になっていた。
一番大きのがライカ、次がリード、一番小さいのがマリクだ。

「なら、いいけど・・・」

リードは文句も言わずに作業に戻った。

「ライカさん、お食事できましたよ!」
「はーい、今行く。リード、お風呂の準備もできてるわ」
「サンキュー」

リードは食事を終えると風呂に入りに行く。
その後にマリクが入る順番だった。
夜の番にもライカは加わるようになり、3人で交代する。
日没から真夜中をリードが、真夜中をライカ、明け方までがマリクの担当になっていた。

真夜中、マリクは目を覚ました。
リードは横になっている。
焚火の火は燃えている。
しかし、夜の番をしているはずのライカの姿はない。
焚火を中心にリードとマリクを守るように結界が張られていた。
マリクは起き上がり、露天風呂がある岩山を登った。
ライカは露天風呂から月を眺めていた。
岩風呂の縁に腰を掛けて、入浴ではなく、月光浴をしていた。
月は満ちていた。
月光を浴びたライカはとても美しく、月の精が舞い降りたようだった。

「ライカさん、隣、いいですか?」
「マリク、来てたの…」

月の精はバツの悪い顔をした。

「ごめんなさい、ちゃんと見張りしてなくて‥‥」
「ちゃんとしてるじゃないですか、結界張ってありましたし…」

マリクは笑いながらライカの額に手を当てた。

「結界なんて張って、大丈夫ですか?」

ライカが息を呑み、諦めたように微笑んだ。

「気付いてんだ…」
「こうして、月の光を浴びて魔力を回復させていたんですね」
「うん、でも、現状維持がやっとなの。街にたどり着いても、目的を果たせそうにないわ…」

弱気なライカを見てマリクは力になりたいと強く思った。

「人探しですよね、何か手伝えませんか?」
「ありがとう、でも、私もどうしたらいいか、わからないの。手がかりは、『私の名前が入った物』を持っている人だけだから」
「他に信託は降りてないんですか?」
「信託は自分の体じゃないと降りないわ」
「そうなんですか…」
「神託を得て、思わず自分の体から飛び出してきちゃったけど、早とちりだったみたい。人探しは、自分の体に戻ってからするわ」

ライカの役に立てそうにないマリクは肩を落とした。

「でも、決心がなかなかつかないの‥‥もう少しこのままでいたいわ。マリク、まだ時間があるから、もう少し寝てて」
「わかりました…」

マリクは岩山をトボトボ降りて、自分の寝床に戻ったが、眠れない。
この場所を離れてしまえば、愛しい人との別れが待っていた。







月の下で話した次の日の夕飯の時だった。

「ねぇ、リードとマリクはどこで生まれて、なんで旅しているの?」

不意にライカが2人の生い立ちを聞いてきた。

「あ、嫌なら、別に言わなくていいんだけど、2人のこともっと知りたくて…なんか、2人とも、いろんなことできるから…」

ライカに興味を持ってもらって、マリクは嬉しかった。

「別にいいですよ。僕は北の国の生まれです。家は貧しくて、僕は口減らしで、人買いに売られるところだったんですけど、魔術の才があることがわかって、魔術師の弟子になりました。師匠から、ある程度の魔術を学んだあと、修行の旅をしています」
「すごい!!魔術の才があって良かったね!」

ライカは手を叩いて喜んだ。

「リードは?」
「私は…生まれがどこか知らない」
「え、でも、おばあさんに育ててもらったんですよね?」
「ばあちゃんとは血がつながってない。たまたま通りかかったゴミ捨て場で、私を見つけて拾ってくくれたんだ。だから、生まれはどこか、いつ生まれたかなんて、全然わからない。ばあちゃんが死んでからはずっと1人で旅を続けてる」

天涯孤独な身の上をリードは事も無げに行ったが、マリクとライカは衝撃を受けた。

「リードさん、捨て子だったんですか!?」
「リード、可哀想!」

ライカはリードに抱きつく

「うわあ、抱き着くな!」
「やだ、離れない!!」

ライカはリードの手を握った。

「誕生日もわからないなんて、可哀想すぎる。だから、今日をリードの誕生日にしましょう!!」
「え?」

ライカの突飛な発想にリードは目を丸くした。

「それいいですね!」

マリクも乗った。

「今からリードの誕生日会します!ちょっと、待ってて!!」
「は?」

呆けるリードを置いてきぼりにして、ライカはいったんその場を離れて、すぐに戻ってきた。
手には花輪を持っていた。
それをリードの頭に乗せた。

「ピッタリ!お花がたくさんあったら作ってみたの!」
「すごく似合ってます!じゃ、僕も何か…!!」

と、言ったものの急にプレゼントなど準備できるはずもない。
マリクは立ち上がって歌った。

「ハッピーバースデートゥユー、ハッピーバースデートゥユー、ハッピーバースデーディア、リードさん!ハッピーバースデートゥユー!!」
「お誕生日おめでとう!私と同じくらいだから、16歳ね!」

ライカが拍手をし、マリクも倣った。
リードは始め、突然決められた自分の誕生日と年齢の設定にキョトンとしていたが、

「誕生日か…祝ってもらったのは、初めてだ。ありがとう」

気恥ずかしそうに顔を掻いていた。
その後、3人で歌を歌ったりして、賑やかに過ごした。
寒さが去り、過ごしやすい季節がリードの誕生月になった。








真夜中、露天風呂で月光浴をしているライカの元へマリクがまた行こうとしている。

「今日は私に譲ってくれないか、マリク?」

リードが声をかけると、マリクは驚いて振り返った。

「リードさん、気付ていてんですか?」
「ライカは私の分身だぞ。状態ぐらいわかるよ」

マリクは顔を強張らせた。

「‥‥いつまでもここにいるわけにはいかないだろう?」
「そうですね…」

マリクは観念したようにリードに道を譲った。
リードは岩山を登り、月光浴をしているライカの元へ行った。
ライカは微笑んでリードを迎えた。
来るのが分かっていたようだ。

「…粘ってるな…」
「うん、でも、もうこれが精いっぱい」

ライカは弱弱しく微笑んで、

「街に行ったら、この体、あなたに返すわ」
「そうか…」
「ごめんなさい…勝手に体借りちゃって。もっと、ちゃんとあなたと話をしてたら、もっと早く仲良くなれたのに」

ライカが謝ってきた。

「今更、仕方ないさ。私の方こそ、ちゃんと、話を聞かなかった。悪かったよ」

リードも謝った。

「ありがとう、今まで待ってくれたんでしょう?」
「まあな…で、決心はついたのか?」
「うん、自分の体に戻ったら、運命にあがなってみる。それでダメだったら、運命を受け入れるわ。受け入れても死ぬわけじゃないから」
「そうか…」

ライカの決心は固まったようだった。

「それでね、街に行ったら、リードとマリクにお礼がしたいの」
「お礼?」
「うん、例えば、服。洗濯したけど、あんまりきれいにならなかったでしょう?クリーニングに出してきれいにしてあげる」
「別にいいよ。どうせ、汚れるし」
「ダメよ。きれいにしておかないと、リードの腰に巻いてるそのケープいい材質なの汚すぎるわ!マリクのローブも!!」

腰のロープはリードの育ての親である尼僧の形見だった。

「じゃ、お言葉に甘えるよ」
「ええ、甘えて!後、ケーキを食べましょう!リードの誕生日ケーキなかったから!そして、またマリクに歌ってもらいましょう!」
「そうだな」
「それが終わったら、帰るね…」

ライカが微笑む。
リードの誕生日の続きと、ライカ自身の送迎会の意味も含んでいた。
リードは少し寂しい気持ちになったが、了承して、岩山を降りた。







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