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第2章 王都出張編
2、屋台を回ったら、お腹も心も満たされた
「じゃあ最初はあの屋台に行ってみよう」
悠人がそう言った瞬間、ミアはもう半歩先にいた。尻尾が軽く跳ねて、鼻が空気を探すみたいに動く。
「こっちこっち! 湯気が見える!匂いも!」
「犬みたいなセンサーだな」
「ネコだよ!」
石畳の通りは、音と匂いでいっぱいだった。鉄板の上で何かが弾ける音。鍋をかき混ぜる木べらの音。呼び込みの声が重なって、どこからでも「こっちだよ」と誘ってくる。甘い香りと、肉の香りと、香草の香りが混ざって、歩くだけで腹が鳴りそうだ。
ミアが最初に飛びついたのは、大鍋のスープ屋台だった。深い鍋の縁から白い湯気がもくもく立ち上って、ふわっとした香草の匂いが鼻をくすぐる。中には緑の葉、橙の根菜、ころんとした豆、そして大きめに切られた肉が踊っていた。表面には薄い油の膜がきらりと光っている。
「これこれ! この匂い!」
「匂いだけでうまいな」
「ほら、早く。冷めると怒られるよ」
「誰に怒られるんだよ……」
器を受け取ると、まず熱さが手のひらに伝わった。悠人は息を吹きかけてから一口。塩味が先に来て、そのあと野菜の甘みが追いかけてくる。肉の脂が口の中でほどけて、香草の香りがすっと鼻へ抜けた。
「……あったまるぅ~」
ミアもふうふうしながら飲み、頬がふにゃっと緩む。尻尾がゆっくり揺れ始めた。
「これが王都だよ」
「王都の定義がスープなのか」
次の屋台は炭火の串焼きだった。炭がぱちっと弾ける音、肉が焼ける匂い。串を返すたび、表面の脂がじゅっと鳴って、肉汁がきらりと滴る。
「熱いから気をつけて」
「分かってる。……でも今は無理」
ミアはほっぺを少し膨らませたまま、幸せそうに目を細める。悠人も一口噛むと、外は香ばしく、中は柔らかい。噛んだ瞬間に肉汁が広がって、塩と香辛料が追いかけてきた。
「……これは危険だな」
「危険って言い方、好き」
「食べすぎるって意味でな」
「じゃあ危険をもう一本ください!」
串の余韻を抱えたまま、ミアは次の屋台へ一直線だった。大きな氷を砕く音がしゃりしゃり響く。木の器に黄色い果肉がどさっと入って、乳の匂いがふわっと立つ。店主が勢いよく混ぜると、濃い黄色が滑らかにまとまっていった。
「バナナシェイク!」
「冷たいの、今飲むのか」
「熱いもののあとに冷たいのがくると、世界が回るよ」
「回るのは自分だけだろ」
一口飲むと、冷たさが喉をすべっていく。甘いのに後味が重くない。氷の粒が舌の上でほどけて、乳のまろやかさが追いかけてきた。
「これ何杯でもいけるやつだ」
「でしょ? 危険増えた?」
「危険って言葉を便利に使うな」
少し歩くと、今度はマンゴーの匂いが甘く漂ってきた。透明な壺にとろりとした橙色が揺れていて、上には白い泡がふわっと乗っている。
「マンゴーラッシー!」
「それも飲むのか」
「飲む!」
ミアは受け取って一口。次の瞬間、なぜか黙った。尻尾も止まる。悠人が顔を覗き込むと、ミアは小さく息を吐いて、ぼそっと言った。
「……これ、持って帰れないかな」
「そうだな」
「うん。酸っぱすぎないのに、甘すぎないの。あと、とろっとしてる」
悠人も飲んでみる。乳のまろやかさが先に来て、マンゴーの甘い香りがふわっと広がり、最後に軽い酸味が締めた。
「確かに、うまい。……みんなにも飲ませたいな」
「レオ、絶対顔がにやける」
「それ、想像できる」
腹も心も温まってきたところで、ミアは急に方向を変えた。人の流れが太くなる。石畳が少し広くなり、正面に大きな噴水が見えた。水が高く上がって、光を散らす。鳩がふわっと舞い、子どもが笑いながら追いかけている。
「ここ!」
「ここって?」
「ここで迷子になったの」
「今、堂々と言うな」
ミアは噴水の縁を指さして、当時を思い出すみたいに目を細めた。
「屋台の匂いを追いかけてたら、家族がいなくなってた。で、泣く前に衛兵さんが話しかけてくれて……」
「何て言うか優しい世界だな」
「うん。でもそのあと、すっごく怒られた」
「そりゃそうだ」
「でもね、怒られたあとも屋台は食べた」
「やっぱり反省してないな」
「反省はしたよ。おいしいのは別だよ」
悠人は噴水の水音を聞きながら、ふと胸の内側の封筒を思い出した。明日には役所へ行って、正式な話をする。村の扱いがどうなるか、言葉にしなければならない。
「そういえば、役所に行くのは明日だったな」
口にした瞬間、ミアの動きがぴたりと止まった。尻尾も止まる。視線だけがゆっくり悠人を捉える。
「今日は食べる日!」
「いや、でも明日が……」
「今日は食べる日!」
「……あ、はい」
悠人が素直に返事すると、ミアは満足そうに頷いた。
「よし」
「よし、じゃないんだよ」
屋台通りへ戻ると、香辛料の山を売る店、揚げ菓子を積む店、焼きパンを並べる店が続いていた。悠人は歩きながら言った。
「王都って、匂いでできてるな」
「うん。歩いてるだけで楽しい」
「これ、村に屋台が並んだら面白いよな」
ミアの耳がぴくっと動く。
「夜に灯りつけて、みんなで回るの。子どもも大人も」
「露天のあとに甘い飲み物とか、最高だな」
「でしょ? みんなにも食べてほしい。こういうのがダンジョンにあったら、もっと楽しいよ」
「確かに。……帰ったら、みんなに話そう」
「うん。いっぱい持ち帰ろう。話と匂いと気分」
そう言って笑っていたのに、屋台通りの奥へ進むと、空気が少し変わった。呼び込みの声が減り、足音が静かになる。石畳が磨かれていて、建物の壁が厚い。扉が重そうで、灯りが落ち着いている。衣服のいい人たちが、ゆっくり歩いている。
ミアがふっと足を止めた。視線の先には、黒石と白石を組み合わせた重厚な建物。真鍮の装飾が控えめに光り、両開きの扉は大きく、静かな灯りが入口を照らしていた。ガラス越しには、白い皿と鮮やかなソースの色が見える。屋台の賑やかさとは別の、背筋が伸びる匂いがした。
「……あそこ、前に来たとき気になってた」
「そのときは入らなかったのか?」
「入らなかったというか、入れなかったの。お金なくて」
ミアは少し照れたように笑う。
「値段見て、静かに通り過ぎた」
「……お、おう、そ、そうなんだ……」
悠人の返事が変になって、ミアは小さく笑った。
「リアルでしょ」
ミアはもう一度、扉を見上げる。
「でもね、ずっと覚えてた。中はどんな味なんだろうって」
悠人も同じように見上げた。重い扉。静かな灯り。そこだけ別世界みたいだ。
「じゃあ、ここで晩ご飯にしよう」
「ほんとに?」
「せっかくだしな」
一拍。
ミアがぼそっと言う。
「……お腹いっぱいなんだけど」
「今さらか」
「でも入る」
悠人は笑いながら、軽く肩をすくめた。
「こういう店、村にあったらどう思う?」
「特別な日用?」
「そう。みんなが頑張った日に行く店」
ミアは想像するみたいに尻尾をゆっくり揺らした。
「いいね。ダンジョンにあったら、絶対楽しい」
「覚えられるところは覚えよう」
「うん。いっぱい吸収しよ」
悠人が扉へ手を伸ばす。真鍮の取っ手はひんやりしていて、指先が少しだけ緊張を思い出す。でも、隣ではミアが小さく笑っている。今日は食べる日だ。
視線が自然と上へ向く。重厚な看板が、夜の灯りに浮かび上がっていた。
《レストラン・ルミナリア=ヴァルディエ》
新たな自分のゲートを開く、そんな気配すら感じる。
定住者:???
観光客:???
悠人がそう言った瞬間、ミアはもう半歩先にいた。尻尾が軽く跳ねて、鼻が空気を探すみたいに動く。
「こっちこっち! 湯気が見える!匂いも!」
「犬みたいなセンサーだな」
「ネコだよ!」
石畳の通りは、音と匂いでいっぱいだった。鉄板の上で何かが弾ける音。鍋をかき混ぜる木べらの音。呼び込みの声が重なって、どこからでも「こっちだよ」と誘ってくる。甘い香りと、肉の香りと、香草の香りが混ざって、歩くだけで腹が鳴りそうだ。
ミアが最初に飛びついたのは、大鍋のスープ屋台だった。深い鍋の縁から白い湯気がもくもく立ち上って、ふわっとした香草の匂いが鼻をくすぐる。中には緑の葉、橙の根菜、ころんとした豆、そして大きめに切られた肉が踊っていた。表面には薄い油の膜がきらりと光っている。
「これこれ! この匂い!」
「匂いだけでうまいな」
「ほら、早く。冷めると怒られるよ」
「誰に怒られるんだよ……」
器を受け取ると、まず熱さが手のひらに伝わった。悠人は息を吹きかけてから一口。塩味が先に来て、そのあと野菜の甘みが追いかけてくる。肉の脂が口の中でほどけて、香草の香りがすっと鼻へ抜けた。
「……あったまるぅ~」
ミアもふうふうしながら飲み、頬がふにゃっと緩む。尻尾がゆっくり揺れ始めた。
「これが王都だよ」
「王都の定義がスープなのか」
次の屋台は炭火の串焼きだった。炭がぱちっと弾ける音、肉が焼ける匂い。串を返すたび、表面の脂がじゅっと鳴って、肉汁がきらりと滴る。
「熱いから気をつけて」
「分かってる。……でも今は無理」
ミアはほっぺを少し膨らませたまま、幸せそうに目を細める。悠人も一口噛むと、外は香ばしく、中は柔らかい。噛んだ瞬間に肉汁が広がって、塩と香辛料が追いかけてきた。
「……これは危険だな」
「危険って言い方、好き」
「食べすぎるって意味でな」
「じゃあ危険をもう一本ください!」
串の余韻を抱えたまま、ミアは次の屋台へ一直線だった。大きな氷を砕く音がしゃりしゃり響く。木の器に黄色い果肉がどさっと入って、乳の匂いがふわっと立つ。店主が勢いよく混ぜると、濃い黄色が滑らかにまとまっていった。
「バナナシェイク!」
「冷たいの、今飲むのか」
「熱いもののあとに冷たいのがくると、世界が回るよ」
「回るのは自分だけだろ」
一口飲むと、冷たさが喉をすべっていく。甘いのに後味が重くない。氷の粒が舌の上でほどけて、乳のまろやかさが追いかけてきた。
「これ何杯でもいけるやつだ」
「でしょ? 危険増えた?」
「危険って言葉を便利に使うな」
少し歩くと、今度はマンゴーの匂いが甘く漂ってきた。透明な壺にとろりとした橙色が揺れていて、上には白い泡がふわっと乗っている。
「マンゴーラッシー!」
「それも飲むのか」
「飲む!」
ミアは受け取って一口。次の瞬間、なぜか黙った。尻尾も止まる。悠人が顔を覗き込むと、ミアは小さく息を吐いて、ぼそっと言った。
「……これ、持って帰れないかな」
「そうだな」
「うん。酸っぱすぎないのに、甘すぎないの。あと、とろっとしてる」
悠人も飲んでみる。乳のまろやかさが先に来て、マンゴーの甘い香りがふわっと広がり、最後に軽い酸味が締めた。
「確かに、うまい。……みんなにも飲ませたいな」
「レオ、絶対顔がにやける」
「それ、想像できる」
腹も心も温まってきたところで、ミアは急に方向を変えた。人の流れが太くなる。石畳が少し広くなり、正面に大きな噴水が見えた。水が高く上がって、光を散らす。鳩がふわっと舞い、子どもが笑いながら追いかけている。
「ここ!」
「ここって?」
「ここで迷子になったの」
「今、堂々と言うな」
ミアは噴水の縁を指さして、当時を思い出すみたいに目を細めた。
「屋台の匂いを追いかけてたら、家族がいなくなってた。で、泣く前に衛兵さんが話しかけてくれて……」
「何て言うか優しい世界だな」
「うん。でもそのあと、すっごく怒られた」
「そりゃそうだ」
「でもね、怒られたあとも屋台は食べた」
「やっぱり反省してないな」
「反省はしたよ。おいしいのは別だよ」
悠人は噴水の水音を聞きながら、ふと胸の内側の封筒を思い出した。明日には役所へ行って、正式な話をする。村の扱いがどうなるか、言葉にしなければならない。
「そういえば、役所に行くのは明日だったな」
口にした瞬間、ミアの動きがぴたりと止まった。尻尾も止まる。視線だけがゆっくり悠人を捉える。
「今日は食べる日!」
「いや、でも明日が……」
「今日は食べる日!」
「……あ、はい」
悠人が素直に返事すると、ミアは満足そうに頷いた。
「よし」
「よし、じゃないんだよ」
屋台通りへ戻ると、香辛料の山を売る店、揚げ菓子を積む店、焼きパンを並べる店が続いていた。悠人は歩きながら言った。
「王都って、匂いでできてるな」
「うん。歩いてるだけで楽しい」
「これ、村に屋台が並んだら面白いよな」
ミアの耳がぴくっと動く。
「夜に灯りつけて、みんなで回るの。子どもも大人も」
「露天のあとに甘い飲み物とか、最高だな」
「でしょ? みんなにも食べてほしい。こういうのがダンジョンにあったら、もっと楽しいよ」
「確かに。……帰ったら、みんなに話そう」
「うん。いっぱい持ち帰ろう。話と匂いと気分」
そう言って笑っていたのに、屋台通りの奥へ進むと、空気が少し変わった。呼び込みの声が減り、足音が静かになる。石畳が磨かれていて、建物の壁が厚い。扉が重そうで、灯りが落ち着いている。衣服のいい人たちが、ゆっくり歩いている。
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「……あそこ、前に来たとき気になってた」
「そのときは入らなかったのか?」
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ミアは少し照れたように笑う。
「値段見て、静かに通り過ぎた」
「……お、おう、そ、そうなんだ……」
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「リアルでしょ」
ミアはもう一度、扉を見上げる。
「でもね、ずっと覚えてた。中はどんな味なんだろうって」
悠人も同じように見上げた。重い扉。静かな灯り。そこだけ別世界みたいだ。
「じゃあ、ここで晩ご飯にしよう」
「ほんとに?」
「せっかくだしな」
一拍。
ミアがぼそっと言う。
「……お腹いっぱいなんだけど」
「今さらか」
「でも入る」
悠人は笑いながら、軽く肩をすくめた。
「こういう店、村にあったらどう思う?」
「特別な日用?」
「そう。みんなが頑張った日に行く店」
ミアは想像するみたいに尻尾をゆっくり揺らした。
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「覚えられるところは覚えよう」
「うん。いっぱい吸収しよ」
悠人が扉へ手を伸ばす。真鍮の取っ手はひんやりしていて、指先が少しだけ緊張を思い出す。でも、隣ではミアが小さく笑っている。今日は食べる日だ。
視線が自然と上へ向く。重厚な看板が、夜の灯りに浮かび上がっていた。
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