傲慢上司の躾け方

浅草A太朗

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閑話2

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「…んっ…?」

身体中に当たる水滴が心地よい。
どうやらまた眠ってしまっていたようだ。
ここ数日忙しかったからな。

熱気のこもった中息が吸いづらくて頭がボーっとする。

なんだか妙にスッキリしている。
それは自慰などで抜いた次の日の朝に似ている。
だと言うのに、腹の奥には何か熱が籠ったような
今まで感じたことのない燻る感覚。

いてて、と声を上げながら体を起こせば
喉が痛い。
自らの喉に手を当てて首を捻る?

床にへたり込んだままシャワーを浴びていると
扉越しに佐々木の声が聞こえてきた。

「…中原さん、大丈夫ですか?随分長く入ってらっしゃいますけど…」

「大丈夫だ。問題ない。」

掠れた声しか出ず、喉に走る痛みにグッと顔を顰める。

「中原さん、風邪ひきました?声凄いですけど…」
「かもな、気にするな。」

確かに今ひどい状態で眠っていたし、昨日も酒を飲んだまましっかり布団もかけずに眠っていた。
全く自己管理が出来ていないな、とため息をつく。
帰ったら早々に眠って体力回復に努めよう。

だるい体や痛みも風邪であれば納得もする。

ならば長くシャワーを浴びても悪化させるだけだろう。
さっさと切り上げ、汚した下着を軽く洗いしっかり絞るがこれは穿けたものではないな。
また溜息を起こす。

脳裏には溜息をこぼすと幸せが逃げるよ?と微笑む彼女。

ああ、会いたい。
ここのところ仕事が忙しくて全く会えていないからな。
社長令嬢でモデルともあって自分が構われる事が当然と思っている節がある。
これだけ会えていないと酷く拗ねているだろう。
予定を考えねば、そんな事を考えながら
手早く身支度を済ませる。
ここからタクシーで帰ればノーパンでもなんとかなるだろう。

そういえば佐々木がここに運んでくれたのなら
タクシー代など出しているだろう。
ここは上司として全て払ってやらねば。

「…すまない、迷惑をかけた。」

身支度を整え部屋に戻れば、佐々木も支度を終えており構いませんよとにこりと微笑む。
こいつが同じ方向で良かった。
他のやつに醜態を晒すよりは随分とマシだ。
柔らかい佐々木の笑みにホッと胸を撫で下ろす。

「中原さん体調悪そうだったんで、タクシー回してもらうように連絡しておきましたが…」

続く言葉は問題ないか?だろう。
否やはない、佐々木がやっていなければ自分が頼んでいたに違いないからだ。

「ああ。助かる。」

喉の痛みの為に端的に答える。
ふと体の痛みに体勢を崩せば佐々木が抱き止めてくれる。

「大丈夫ですか?中原さん。」

耳元で俺を案じる声。
優しく抱き止める腕。

何か、今何かがよぎりかけたような。
下腹部に熱が溜まる。
呼吸も知らず知らず早まり、鼓動は高鳴っている。

なんだ!?何故佐々木相手に俺はこんな事になっている?

混乱に陥る俺をよそに佐々木はそのまま
俺を酷く大事なものを案じるように言葉を続ける。

「中原さん呼吸速いですし、体も熱いですね。
やはり早く帰って休まれたほうが。
いや医者にかかった方がよろしいのでは?」

そういってやや腰を屈め視線が俺の目を射抜く。

心配そうな視線に、今ノーパンの股間が奴の足に当たるのはまずい気がする。
相手の胸元を強く押しやり、問題ないことをつたえるべくしっかりと目を見る。

「問題ない。ああここまでのタクシー代やホテル代は俺が払うから安心していいぞ。」

スマートに先に支払わせたであろうタクシー代に運んでもらった分の色をつけて一万円札を渡す。
これは、多すぎますと返されるが迷惑をかけた分だとにこりと笑みを浮かべる。

さてこれ以上折角の休日に佐々木を付き合わせるわけにもいかないだろう。
しっかりと休息を取ってもらい、また月曜日からは仕事に精を出してもらいたい。

「さっさと帰るか。」

支度を終え既にホテル前にまわされていたタクシーに満足を覚える。
近くだと以前言っていたから、一緒に途中まで乗車する事にする。
先についたのは俺のマンションだ。
残り分だとまた万札を彼に握らせ、降りようとしたところで腕を掴まれ振り返る。

「お疲れ様です、支払いもありがとうございます。『大分お疲れのご様子でしたから、休んでください』それでは」

いい性格してやがる。
酔い潰れの世話への嫌味だろうか。
軽く睨みつけ背を向けて俺は家へと向かう。
じんわりと頭に自慰をしてはならないという言葉がカチリと意識に組み込まれた事に気づきもせずに。
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