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アルロの情報収集その2
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**アルロ
サーヤが運んでいる大きなバケツには山盛りの洗濯物が積み重なっていた。大股で歩き、追い越し様に、わざと手に持っていた布巾を足元に落とした。
「きゃっ」
狙った通り、サーヤは突然足に絡まった布巾にバランスを崩し、よろめいた。
「危ないっ」
すかさず腰に腕を巻き付け、サーヤを抱き止める。洗濯物がバラバラと床に落ちるのは想定内だ。
「あ、ありがとうございます。」
呆然とする彼女をきちんと立たせてから膝をつき、そっと足首に触れながら、見上げた。
「お怪我は?足は捻っていませんか?」
・・・いつだったか、ディラン殿下が使っていた手法を真似てみた。
***
本人に聞けないから、おばさんに聞いた話なのだが、サーヤは俺より1つ年上だった。「年上の女には甘えておけ」という教えを思い出し、俺はサーヤに対し、弟のような可愛いらしさを演出することにした。実際可愛いかどうかはさておき、とにかく些細なことでも頼ってみるのだ。頼る時は必ず、首を斜めに曲げた。
合っているのか?
合っていた。サーヤは頼られることに喜びを示し、そのうち、何かを言う前からあれこれと世話をやくようになったのだ。感心する。
そして、ある程度関係性が深まったところで、俺はある相談事を持ちかけた。頼って話を聞き出すのだ。
「・・・僕、人を探しているんです。」
「え?」
当然サーヤは驚いた。でも築き上げた関係性が、物を言う。
「どういうこと?・・・な、名前は?どんなひと?」
「それが・・、知りません。」
「え?」
「妹なんです。産まれてすぐに別れたから、名前も知らない。だけど最近になって、王妃様の侍女をしているという噂を聞いて。」
嘘だが、無理のない嘘だ。姫様は確か、この国に来る時に、侍女を1人連れて行ったはず。彼女は孤児だった。・・·気がする。
「・・じゃあ、ここで働き始めた理由って」
「はい、妹を探す為です。」
「そうだったのね・・・。」
「サーヤは、王妃様の侍女のことを、ご存知ですか?」
サーヤの顔を窺うと、明らかに狼狽えて見えた。何か、知っているのか?
「え、ええと・・。何て言うか、アリア様はもう・・・」
「もう?」
「・・っ、あ、ここにはいはいらっしゃらないわ。」
「はい、ここへ来て知りました。だけど侍女は?」
目が合わないのは、何か後ろめたいことでもあるのだろうか?サーヤはため息を何度かつき、床を見詰めながら、ぼそぼそと話始めた。
「・・・アリア様の侍女は、3人いたわ。だけど、ごめんなさい。私も詳しくは知らないの。」
「どんな些細な事でも、教えて欲しいです。」
縋るようにお願いしてみたが、サーヤは俺を見なかった。
「誰か、知っている人がいないか聞いてみるわね。」
・・・もどかしい。もどかしいが、
「分かりました、ありがとうございます。」
「い、いいえ、じゃ、じゃあ、私、もう行くわね。」
諦めて礼を言うと、サーヤは足早に去っていった。彼女は他にも何か知っているような気がする。「アリア様はもう、」の続きはなんだったのか?汗が額から滲んできた。気分が悪い。
***
休憩が終わり、王宮内の牢に向かった。今日は大量のゴミが出たらしい。
「あ、お前か?力持ちの新人は。」
「はは、まぁ、力には自信がありますが。」
軽く挨拶済ませると、すぐに建物の横にある物置ような場所に案内された。そこで、男は薄ら笑いを浮かべながら、おもむろに、何枚も重ねられた布を差し出してきた。
「まだ腐敗はしていないんだが、別の臭いがな。」
促されるまま口を覆うと、重い扉が開かれ、中から糞尿の、鼻をつく臭いが漏れ出た。油断して吸い込んでしまい、むせ返る。
「ぅぐ・・・せめてこうなる前に、処置は出来なかったのか?・・ですか?」
素が出るところだった。危ない。
「処置?あぁ、普段はすぐに運ぶから処置の必要はないんだ。今回は多いから牢から運び出すだけで精一杯だった。1人でいけるか?台車はある。」
「運ぶだけでいいならやります。」
「ああ、掃除は別のに頼んである。」
牢で出るゴミだから予想はしていたが、よくもまぁこんなに。何気なく一番手前の塊を足で蹴って転がし・・・、息を飲んだ。
「まさか・・」
慌てて、手当たり次第に転がして確認した。
・・見たことがある、・・こいつは知らない、・・・見たことがある、・・見たことがある・・。
痩せ細って頬まで痩けているが、なんとなく面影が残っている。その知っている顔の半分は、確か先代から残っていた重役、残り半分は、リュムレアムと個人的にも繋がっている者達だ。
「っは、・・は・・はは・・ははは・・」
無意識に笑いがもれた。この国の国王ウィレム陛下は、こんなにも残忍だったのか。こんな手段で、こんな風に簡単に、重役を入れ替えたのか・・・。
・・・・あぁ、姫様・・・・どうかご無事で。
サーヤが運んでいる大きなバケツには山盛りの洗濯物が積み重なっていた。大股で歩き、追い越し様に、わざと手に持っていた布巾を足元に落とした。
「きゃっ」
狙った通り、サーヤは突然足に絡まった布巾にバランスを崩し、よろめいた。
「危ないっ」
すかさず腰に腕を巻き付け、サーヤを抱き止める。洗濯物がバラバラと床に落ちるのは想定内だ。
「あ、ありがとうございます。」
呆然とする彼女をきちんと立たせてから膝をつき、そっと足首に触れながら、見上げた。
「お怪我は?足は捻っていませんか?」
・・・いつだったか、ディラン殿下が使っていた手法を真似てみた。
***
本人に聞けないから、おばさんに聞いた話なのだが、サーヤは俺より1つ年上だった。「年上の女には甘えておけ」という教えを思い出し、俺はサーヤに対し、弟のような可愛いらしさを演出することにした。実際可愛いかどうかはさておき、とにかく些細なことでも頼ってみるのだ。頼る時は必ず、首を斜めに曲げた。
合っているのか?
合っていた。サーヤは頼られることに喜びを示し、そのうち、何かを言う前からあれこれと世話をやくようになったのだ。感心する。
そして、ある程度関係性が深まったところで、俺はある相談事を持ちかけた。頼って話を聞き出すのだ。
「・・・僕、人を探しているんです。」
「え?」
当然サーヤは驚いた。でも築き上げた関係性が、物を言う。
「どういうこと?・・・な、名前は?どんなひと?」
「それが・・、知りません。」
「え?」
「妹なんです。産まれてすぐに別れたから、名前も知らない。だけど最近になって、王妃様の侍女をしているという噂を聞いて。」
嘘だが、無理のない嘘だ。姫様は確か、この国に来る時に、侍女を1人連れて行ったはず。彼女は孤児だった。・・·気がする。
「・・じゃあ、ここで働き始めた理由って」
「はい、妹を探す為です。」
「そうだったのね・・・。」
「サーヤは、王妃様の侍女のことを、ご存知ですか?」
サーヤの顔を窺うと、明らかに狼狽えて見えた。何か、知っているのか?
「え、ええと・・。何て言うか、アリア様はもう・・・」
「もう?」
「・・っ、あ、ここにはいはいらっしゃらないわ。」
「はい、ここへ来て知りました。だけど侍女は?」
目が合わないのは、何か後ろめたいことでもあるのだろうか?サーヤはため息を何度かつき、床を見詰めながら、ぼそぼそと話始めた。
「・・・アリア様の侍女は、3人いたわ。だけど、ごめんなさい。私も詳しくは知らないの。」
「どんな些細な事でも、教えて欲しいです。」
縋るようにお願いしてみたが、サーヤは俺を見なかった。
「誰か、知っている人がいないか聞いてみるわね。」
・・・もどかしい。もどかしいが、
「分かりました、ありがとうございます。」
「い、いいえ、じゃ、じゃあ、私、もう行くわね。」
諦めて礼を言うと、サーヤは足早に去っていった。彼女は他にも何か知っているような気がする。「アリア様はもう、」の続きはなんだったのか?汗が額から滲んできた。気分が悪い。
***
休憩が終わり、王宮内の牢に向かった。今日は大量のゴミが出たらしい。
「あ、お前か?力持ちの新人は。」
「はは、まぁ、力には自信がありますが。」
軽く挨拶済ませると、すぐに建物の横にある物置ような場所に案内された。そこで、男は薄ら笑いを浮かべながら、おもむろに、何枚も重ねられた布を差し出してきた。
「まだ腐敗はしていないんだが、別の臭いがな。」
促されるまま口を覆うと、重い扉が開かれ、中から糞尿の、鼻をつく臭いが漏れ出た。油断して吸い込んでしまい、むせ返る。
「ぅぐ・・・せめてこうなる前に、処置は出来なかったのか?・・ですか?」
素が出るところだった。危ない。
「処置?あぁ、普段はすぐに運ぶから処置の必要はないんだ。今回は多いから牢から運び出すだけで精一杯だった。1人でいけるか?台車はある。」
「運ぶだけでいいならやります。」
「ああ、掃除は別のに頼んである。」
牢で出るゴミだから予想はしていたが、よくもまぁこんなに。何気なく一番手前の塊を足で蹴って転がし・・・、息を飲んだ。
「まさか・・」
慌てて、手当たり次第に転がして確認した。
・・見たことがある、・・こいつは知らない、・・・見たことがある、・・見たことがある・・。
痩せ細って頬まで痩けているが、なんとなく面影が残っている。その知っている顔の半分は、確か先代から残っていた重役、残り半分は、リュムレアムと個人的にも繋がっている者達だ。
「っは、・・は・・はは・・ははは・・」
無意識に笑いがもれた。この国の国王ウィレム陛下は、こんなにも残忍だったのか。こんな手段で、こんな風に簡単に、重役を入れ替えたのか・・・。
・・・・あぁ、姫様・・・・どうかご無事で。
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