29 / 43
ジョンとクレア
しおりを挟む
**ジョン
畑で作業をしていたら、珍しくクレアが、俺に近付いてきた。
「ジョン、私、手伝おうか?」
心臓が跳び跳ねた。クレアが、俺を?
「い、いいのか?」
「ええ。どうせ家に帰ってもやることないし。」
「そうか、じゃあ、頼む。ありがとう。」
こんな事は子供の頃以来だ。だけど今は、あの時のように、近くに兄さんがいるわけでもない。緊張しながら収穫用の籠を渡すと、そのまま、すぐ俺の近くにしゃがんだ。
「め、珍しいな。クレアが、その、お、俺に話し掛けてくれるなんて。」
「そう?嫌だった?」
「違うっ、あっ、そうじゃなくて・・」
こんなに緊張しているのは俺だけなのか?ドキドキしながらクレアを横目でみたが、顔色を変えることなく作業をしていた。
「ねぇジョン、アリーさんって、どう思う?」
「え?アリーさん?どうって?」
唐突に聞かれ、何を答えればいいのか分からない。
「男の人から見て、どうなのかなぁ?って思って。」
「お、男の人・・って、俺のこと?」
当然の事なのに、クレアに言われると照れてしまう。クレアも俺を男として見てるってことか?
「ジョンも男の人でしょう、違うの?」
「いやっ、いや、勿論男だよ。」
答えるとクレアは俺を見た。いつになく真面目なような、思い詰めたような、
「アリーさん、どう思う?」
「えっ、あっと、しっかりした、女性だよね。」
「他には?可愛いと思う?」
「ん、んーと、可愛い・・かな、いや、可愛いというよりは綺麗?かな、?でも小柄だから・・・」
上手く説明出来ずに、言葉を探していたのだが、そのうち、クレアが不機嫌な顔をしていることに気が付いた。
「あっ、あっと、もも勿論、クレアの方が綺麗だし可愛いと思うけどね。」
「当然でしょ、私の方が若いんだから。」
「そうだよね。当然だ。はは。」
他の女性を褒めたから怒ったのかな。
俺の発言がクレアに影響を及ぼしていることが、思いの他、嬉しく感じてしまう。つい口の端が上がった。
「でも、可哀想。」
「え?アリーさんが?」
「ええ。だって、何も覚えていないなんて、私だったら恐いわ。」
「まぁ、・・確かにそうかもしれないな。」
情けなく笑った兄さんの顔が、浮かんだ。兄さんは、何か知っているのかもしれない。
「ねぇ。手伝ってあげるのはどうかしら?私達、2人で。」
「う、あっと、い、いいのかな?」
2人で、と言われ、思わず声が裏返ってしまった。
「きっとアリーさんを探している家族だっているはずよ。」
「そ、そうだよな。」
悲しそうに言うクレアを見て、それもそうだと思った。だけど、いいのか・・・?
「私、おばさんに相談してみる。」
不安はよぎったが、クレアの一生懸命な気持ちが伝わってきて、俺も頷いた。
「うん、そうだな。相談して、いいって言われたら、俺も手伝うよ。」
「ジョン、ありがとう。」
クレアが俺に向けてくれた笑顔が、とても可愛かった。
***
「お母さんっっ、見て見てっっ!!」
クレアを連れて家に戻ると、なにやらミラが大騒ぎをしている。
「これもっ、これも、これもっ!見て、すごいでしょ!?全部アリーさんがしたのよ。」
「ミラ、何事?」
ミラは、声をかけると勢いよく振り返った。
「あっ、ジョン兄さん、クレアさんもっ、見てこれ、綺麗でしょ?」
ミラが見せびらかしているのは、刺繍だった。
「んん・・・?見にくいな。」
「糸がなかったんだもんっっ。でもよく見て。これ、絶対売り物になるって。」
ミラの横に立つアリーさんは、少しそわそわしている。
顔を近付けると、布の切れっぱしに、細かな模様や、鳥や植物が描かれているのが分かった。
「へぇ、器用なもんだな。クレアも、見る?」
「・・・ええ。」
どうした?急に元気がない。
「マーサ、どうかしら?」
アリーさんが母さんに聞いた。母さんは切れっぱしのうちの1枚を、じっと見詰めている。
「ああ、この腕前なら十分だよ。ジョン、明日糸と布を買ってきておやり。アリーさん、とりあえず小さな物から作ってごらんよ。出来たら町に持って行ってみようじゃないか。」
「やった!アリーさん、やったわ!」
母さんの言葉にミラが跳び跳ね、無理やりにアリーさんの手を持って、振り回した。一緒にいたチビ達も、意味も分からず真似して大騒ぎだ。思わずつられて笑っていると、その騒がしいミラとは離れた場所に、クレアが母さんを引っ張って行くのが見え、耳を傾けた。
「おばさん、これは、どういうことですか?」
「ああ、アリーさんがね、実は刺繍が得意だったんだってさ、それで、刺繍で稼げないかって話だよ。」
「っそれじゃあまるで、ここで暮らしていくみたいじゃないですか!」
「クレア、クレア、落ち着きなさい。大丈夫だから、アリーさんは自分で生活していく力をつけたいんだとさ。」
「でもっ・・」
「クレア、アリーさんが自立出来たら、その方がいいじゃないか。」
「あ・・・・、そっか、そう、ですよね。・・・すみません。」
・・・何を話しているんだろう。ミラ達が騒がしすぎて、上手く聞こえない。
・・・あ、1つ思い当たった。クレアはさっそく母さんに、アリーさんの家族を見付ける手伝いをする提案をしているのかもしれない。
畑で作業をしていたら、珍しくクレアが、俺に近付いてきた。
「ジョン、私、手伝おうか?」
心臓が跳び跳ねた。クレアが、俺を?
「い、いいのか?」
「ええ。どうせ家に帰ってもやることないし。」
「そうか、じゃあ、頼む。ありがとう。」
こんな事は子供の頃以来だ。だけど今は、あの時のように、近くに兄さんがいるわけでもない。緊張しながら収穫用の籠を渡すと、そのまま、すぐ俺の近くにしゃがんだ。
「め、珍しいな。クレアが、その、お、俺に話し掛けてくれるなんて。」
「そう?嫌だった?」
「違うっ、あっ、そうじゃなくて・・」
こんなに緊張しているのは俺だけなのか?ドキドキしながらクレアを横目でみたが、顔色を変えることなく作業をしていた。
「ねぇジョン、アリーさんって、どう思う?」
「え?アリーさん?どうって?」
唐突に聞かれ、何を答えればいいのか分からない。
「男の人から見て、どうなのかなぁ?って思って。」
「お、男の人・・って、俺のこと?」
当然の事なのに、クレアに言われると照れてしまう。クレアも俺を男として見てるってことか?
「ジョンも男の人でしょう、違うの?」
「いやっ、いや、勿論男だよ。」
答えるとクレアは俺を見た。いつになく真面目なような、思い詰めたような、
「アリーさん、どう思う?」
「えっ、あっと、しっかりした、女性だよね。」
「他には?可愛いと思う?」
「ん、んーと、可愛い・・かな、いや、可愛いというよりは綺麗?かな、?でも小柄だから・・・」
上手く説明出来ずに、言葉を探していたのだが、そのうち、クレアが不機嫌な顔をしていることに気が付いた。
「あっ、あっと、もも勿論、クレアの方が綺麗だし可愛いと思うけどね。」
「当然でしょ、私の方が若いんだから。」
「そうだよね。当然だ。はは。」
他の女性を褒めたから怒ったのかな。
俺の発言がクレアに影響を及ぼしていることが、思いの他、嬉しく感じてしまう。つい口の端が上がった。
「でも、可哀想。」
「え?アリーさんが?」
「ええ。だって、何も覚えていないなんて、私だったら恐いわ。」
「まぁ、・・確かにそうかもしれないな。」
情けなく笑った兄さんの顔が、浮かんだ。兄さんは、何か知っているのかもしれない。
「ねぇ。手伝ってあげるのはどうかしら?私達、2人で。」
「う、あっと、い、いいのかな?」
2人で、と言われ、思わず声が裏返ってしまった。
「きっとアリーさんを探している家族だっているはずよ。」
「そ、そうだよな。」
悲しそうに言うクレアを見て、それもそうだと思った。だけど、いいのか・・・?
「私、おばさんに相談してみる。」
不安はよぎったが、クレアの一生懸命な気持ちが伝わってきて、俺も頷いた。
「うん、そうだな。相談して、いいって言われたら、俺も手伝うよ。」
「ジョン、ありがとう。」
クレアが俺に向けてくれた笑顔が、とても可愛かった。
***
「お母さんっっ、見て見てっっ!!」
クレアを連れて家に戻ると、なにやらミラが大騒ぎをしている。
「これもっ、これも、これもっ!見て、すごいでしょ!?全部アリーさんがしたのよ。」
「ミラ、何事?」
ミラは、声をかけると勢いよく振り返った。
「あっ、ジョン兄さん、クレアさんもっ、見てこれ、綺麗でしょ?」
ミラが見せびらかしているのは、刺繍だった。
「んん・・・?見にくいな。」
「糸がなかったんだもんっっ。でもよく見て。これ、絶対売り物になるって。」
ミラの横に立つアリーさんは、少しそわそわしている。
顔を近付けると、布の切れっぱしに、細かな模様や、鳥や植物が描かれているのが分かった。
「へぇ、器用なもんだな。クレアも、見る?」
「・・・ええ。」
どうした?急に元気がない。
「マーサ、どうかしら?」
アリーさんが母さんに聞いた。母さんは切れっぱしのうちの1枚を、じっと見詰めている。
「ああ、この腕前なら十分だよ。ジョン、明日糸と布を買ってきておやり。アリーさん、とりあえず小さな物から作ってごらんよ。出来たら町に持って行ってみようじゃないか。」
「やった!アリーさん、やったわ!」
母さんの言葉にミラが跳び跳ね、無理やりにアリーさんの手を持って、振り回した。一緒にいたチビ達も、意味も分からず真似して大騒ぎだ。思わずつられて笑っていると、その騒がしいミラとは離れた場所に、クレアが母さんを引っ張って行くのが見え、耳を傾けた。
「おばさん、これは、どういうことですか?」
「ああ、アリーさんがね、実は刺繍が得意だったんだってさ、それで、刺繍で稼げないかって話だよ。」
「っそれじゃあまるで、ここで暮らしていくみたいじゃないですか!」
「クレア、クレア、落ち着きなさい。大丈夫だから、アリーさんは自分で生活していく力をつけたいんだとさ。」
「でもっ・・」
「クレア、アリーさんが自立出来たら、その方がいいじゃないか。」
「あ・・・・、そっか、そう、ですよね。・・・すみません。」
・・・何を話しているんだろう。ミラ達が騒がしすぎて、上手く聞こえない。
・・・あ、1つ思い当たった。クレアはさっそく母さんに、アリーさんの家族を見付ける手伝いをする提案をしているのかもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ
Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。
理由は決まって『従妹ライラ様との用事』
誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。
「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」
二人の想いは、重なり合えるのだろうか ……
※他のサイトにも公開しています。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる