逃げ出した王妃アリアのその後

ともっぴー

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手紙

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***ミラ

アリーさんが療養施設に行って、少し立ったある日、外で作業をしていると、女の人が訪ねてきた。アリーさんに会いに来たのだとか。
母さんには、誰かにアリーさんの事を尋ねられても知らないと答えなさい、言われていたので、言われた通り、知らない、と答えた。
すると今度は、ノア兄さんはどこか、と聞いてきた。どうやら、ノア兄さんとも知り合いらしい。

「ねぇー、お母さん、アリーさんとノア兄さんの知り合いっていう女の人が来てるんだけど。」

作業を止めてお母さんに相談しに行くと、ロパとお昼寝をしていたらしいお母さんが、寝ぼけた様子で部屋から出て来た。

「あぁ、ミラかい。何だって?」

「だから、アリーさんと、ノア兄さんの知り合いの女の人が」

「え・・、ああ。・・・外で、あぁいや、中に入ってもらって。ミラは外に出ていなさい。」

「?・・・はぁい。」

思い当たる事があるのか、お母さんの顔は少し強張って見えた。
最近、どこか怪しい。


**ノア

1通の手紙が届いた。俺宛てに。
一見普通の手紙で、差出人は書いていない。だが、受け取った途端、嫌な予感がして、全身に鳥肌が立った。
手紙に触れた指が、滑らかな感触を覚える。
上質の紙で作られた便箋だ。封に使われているのは、濃い、紺色の封蝋。印にはありふれた物が押されてあるが、そのところどころに少しだけ虹色が混じっていた。

紺はウィレム陛下の色だ。そして虹色は、新しい王妃の存在を漂わせている。まるで当て付けのようだ。邪魔をするなと言っているのか?

まだ公にしていない王妃をわざとちらつかせるのは、明らかな牽制だった。というか、ウィレム陛下とは、そもそも連絡を取り合う予定などない。繋がりがバレて困るのは、お互い様なのだ。それでも俺の手元に手紙が届いたのは、それだけお怒りということなのか。

俺は、何か失敗したのだろうか?中を読むのを躊躇してしまう。いや、中は空かもしれないが。

・・・・開けよう。
開けて確かめるしかないのだ。
ポケットからナイフを取り出し、おそるおそる封を切った。何が出てくるか。
ふぅ、と一呼吸おいて、中を覗いた。

「・・・ん?、・・・・布、か?」

手の平の上で、封筒を逆さにして、トントン、と軽く叩くと、入っていた布が、ひらりと乗った。

「紋章?・・・・   ・・っ、はっ!!」

隣国の物だ。アリーの国の、王家の紋章。
途端に、全身から汗吹き出した。どういう事だ?アリーに何かあったのか?
これは警告か、予告か。
警告でも告知でも、思い当たる節はない。だが、これがもし予告だったら。
すぐさま馬を、家まで走らせた。とにかくアリーをこの目で確認しなければ。


**

「アリー、俺だ。アリーっ!」

ドアを叩いても返事がない。心臓がバクバクと異常な速さで脈打っている。

「アリーっ!いないのかっ!?」

思い切り体重を掛け体当たりすると、ガコンッ、と蝶番ごとドアが外れた。

部屋は・・空、だ。どういう事だ?
階段をかけ下り、家まで走った。

「母さんっ、俺だ、ノアだっ!母さんっ!?」

「ノ、ノア?」

ロパを抱いたまま、母さんが部屋から出て来た。

「アリーが、アリーがいないんだっ」

「あ、あぁ。それは・・、あ、あんた、どうして急に戻って来たんだい?」

「それは後でっ、母さん、アリーは!?」

母さんの目線は、漂っている。どうして俺を見ないんだ?詰め寄って、両肩を掴んだ。

「母さん、アリーは、どこにいる?」

「・・・・」


「アリーさんなら、怪我をしたんで療養施設に入ってもらっとる。」

「・・・っ!?」

背後で声がして、振り返ると、父さんがドアの前に立っていた。母さんの肩を離し、ふらりと足を向けた。

「怪我って?俺、何も聞いてないけど。」

「階段で、足を滑らせたようだ。大した怪我ではない。だが、本人がそれがいいと言ったんだ。お前に心配を掛けたくないから、伝えるな、とも。だから、母さんを責めるな。」

「は・・、え・・?階段?どうして・・?い、いつ?・・ど、どこの施設だ?」

「・・・聞いてどうする?」

「・・っ、決まってるじゃないか!迎えに‥」
「やめとくれよっっっっ!!」

「・・・は?」

母さんが、悲鳴のように叫んだ。
ロパが目を覚まし、ふぎゃふぎゃと泣き出す。

「ノア、お願いだから、やめとくれ。もうあの娘には、関わらないでおくれよ・・。」

関わらないでくれ・・・?

「・・はっ、・・はは、・・母さん、どういう意味?それじゃまるで、わざとアリーを施設に入れたみたいに聞こえるじゃないか。」

母さんに詰め寄ろうとすると、間に父さんが立ちはだかった。

「お前の為に、考えたことだ。」

「俺の為?ははっ、ほんとおかしいな。ねぇ、父さん、俺、今、嬉しそうに見える?」

わざとおどけてみせた。でないと、掴みかかってしまいそうだ。

「あああの娘は、隣国の人間なんだろうっ?隣国の問題は、隣国の者に任せておけばいいじゃないか。」

「隣国・・?何の話だ?隣国の者って、誰の事だよ。」

「・・・」

「なぁ母さん、それじゃ何にも分からない。ちゃんと、分かるように説明してくれないか?でないと、俺、何をするか分からない。」

身体中の血液が、静かに煮えたぎる。これ以上おかしな事を言われると、本当に・・・。
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