引きこもりの魔女の話

ともっぴー

文字の大きさ
上 下
7 / 12

アレク、魔女に会いに行く(1)

しおりを挟む
**アレク

窓の隙間から迷い込んできた紙飛行機が、やたらと追いかけて来ると思っていたら魔女からの手紙だった。
だがしかし、この手紙は、間違いではないのかと思う。もしくは、書いている途中で誤って飛ばしてしまったか?それとも失敗作のつもりで飛行機を作って遊んでいて、飛んでいってしまったとか?
はっ、もしや、ダニエルの名前を出したのがいけなかったのか?喜ぶと思ったが、逆効果だったのかもしれない。魔女は、ああ見えて繊細なところがあるからな。

・・・考えても分からない。

だからといって、もう1度送るか?手間と費用をかけて? うむむ・・。うむむ・・・。

「陛下、どうかなさいましたか?」

「んあ、ああ、何でもない。何でもないのだが・・。」

「お返事が、届いたのですね。では私がダニエルに、お伝えしましょうか?」

「んん・・・、いや、それはいい。あいつに聞かれたら、返事はまだだと伝えてくれ。」

ダニエルと・・無理に会わせる必要も・・・ないか?
・・・ないよな?

「陛下、お返事はその手紙なのでは?」

「いや、ち、違う。いや、そうだが、違う。」

「失礼します。」

「ああっ、」

俺の手から手紙が抜き取られた。

「陛下、『はい。』と書いてありますね。」

「う、うむ。その通りだが。」

「ではダニエルに、了承して頂けたと伝えて参ります。」
「ままま待てっっっ!早まるな。これは、そういう意味ではないかもしれないのだ。」

「と、言いますと?」

「・・・魔女は、ダニエルと会いたくないのかもしれない。おそらく、その『はい。』は、俺からの手紙への返事だろう。」

「・・・両方含めての「はい。」かもしれませんよ。」

「いや、だがしかし、真意を確かめもせずにダニエルに伝える訳にはいかない。」

「また、手紙を送るのですか?」

「いやいや、そんな手間をかける程の案件ではない。」

「ああでは、放置、でよろしいですか?」

「んむむ、だがそうすると、魔女は心配するかもしれないな。」

「あの方が手紙のことくらいで心配などするでしょうか?」

「お前は知らんのだ。」
(····魔女の事を、何一つ)

「では私が、訪ねて参ります。」

「・・・・・・・・・・・・・・・、いや、俺が行こう、お前では辿り着けない。」

「陛下、それは・・」

「お前が駄目だと言うから、今まで行けなかったのだっ。」

「陛下、私が行くなと言ったのではなく、仕事が詰まっているから無理だと申し上げたのです。それもここ半年の事で、それそも以前から陛下自らが、行かないと仰っていたのではないですか。」

「くぅ・・、気が、変わったのだ。ダニエルより先に、会わねばならん。」

「陛下、陛下は以前私に、『その時は止めろ』とも仰っておられましたが。」

「分かっておる!それは重々承知だ。血迷う事などないっ!ただ、顔をみて、安心したいだけなのだ。」

そうだ。分かっている。あれには無理だということも。



***ダニエル

陛下は、あの手紙が「間違いなく届くだろう」と、言ってはいなかっただろうか?・・・おかしいな。ちゃんと会いたがっている事を伝えてくれたのだろうか?
あれから1ヶ月が経とうとしていた。

エルシーは、どう過ごしているのだろう。
最後に言ったあの言葉をエルシーが聞き取っているならば、待っていてるはずだと信じたい。
届いていなかったとしても、俺の名を見て、嬉しく思ってくれるのだと信じている。
信じているのだが・・・返事は、いつだろう。

さらに一週間待ったが連絡はなく、痺れを切らした俺は、失礼を承知で陛下を訪ねた。
···ところが驚くべき事実に、驚愕した。

「陛下が、いない!?」
しおりを挟む

処理中です...