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アレク、魔女に会いに行く(2)
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**エルシー
「やっぱりまずいわね‥‥‥」
城の最上階にある展望台から外を眺め、改めて痛感した。少し前まではブロッコリーが敷き詰められたみたいに青々としていた景色が、随分とまばらになってきているのだ。土の色が剥き出しになった場所では、陛下がお尻をふりふりさせながら美味しそうに枝を齧っていた。
「豚は上手くいったのに···。」
つい先日に、ハツカ豚を作る時に使った薬を試しに木に吸わせてみたけれど、増えはしても成長が遅かったのだ。
何かもっと別の手を考える必要がある。しかも早急に····。
はぁ。
陛下を見ながらため息をついた。
どうして陛下は草食なのかしら···。
視線を城の近くに戻すと、陛下の番や、子ドラゴンが、ハツカ豚を追いかけたり、食べたりしている様子が見えた。普通はああだ。陛下だけが、草食なのだ。
「やれやれ。」
山が丸裸になる前に、別の餌を準備しなければならない。そしてそれまではとりあえず、食欲が減退する薬でも飲ませて対応するしかないかしら。
立ち上がって階段を降り、材料庫の部屋の、色とりどりの粉の入った瓶を置いてある棚の前に行った。虹色になるように並べてあるのには理由があって、使う用途によって単色で使ったり混ぜて使ったりするそれは、間違えて配置してしまうと勝手に混ざって効果がおかしくなってしまう。
私は並ぶ瓶の中から青の粉の瓶を選び、動かさないようにそっと蓋を開け、薬匙を入れた。
ところが、左手に乗せている計量紙に2杯入れた後、思わず「あ。」と声が出た。
だって相手はドラゴンだ。これじゃ足りない。
仕方がないので一旦粉を戻し、厨房からボールを持ってきて、その上で瓶をひっくり返し、1匙分だけ瓶に戻して元の場所へ戻した。
すると瓶の蓋が文句を言うようにカチカチと音を鳴らした。
「うるさいわね、すぐまた補充するから。」
ガチン、と蓋の中心に匙を叩きつけると、シュン、と大人しくなった。
「ん、いい子。」
最初から大人しくしとけばよかったのだ。
ひびが入った瓶の蓋は、指に唾を付けてスッとなぞってやると、元通りになった。
****
その数日後のよく晴れた朝、私は身支度を整えて小さな旅行鞄を持って城の前に出た。
「じゃあ、行って来るわね。」
見送りに来た子ドラゴン達の体を順番に撫でてやると、名残惜しそうにすり寄ってくる。
子ドラゴンの母親は、ソワソワと心配そうに顔を見てきた。
「大丈夫、心配ないわ。陛下のこと、よろしく頼むわね。」
陛下は。というと、出来上がった薬がとても良く効いて、萎びたキュウリの様になって横たわっている。
「キュイ。」
戸惑いを見せつつも頷くのを確認して、私は自転車の「サリー」に跨がった。
「行くわよ、サリー。」
声を掛けると、ふわり、と風が起こった。
サリーは以前川に落ちていたのを拾ったもので、錆だらけで汚い自転車だ。1度よかれと思って綺麗にしてやると調子に乗って生意気になった為に、敢えて汚い状態に戻してやった経緯がある。
よし。安定しているわ。
城の上空を仰ぎ見て、作り出した魔方陣が上手く広がっているのを再度確認した。
トン、と地面を蹴ってペダルに足を乗せると、ゆっくりと上昇していく。
何気なく見下ろせば、どこまでも心細そうなドラゴン達····。
う~ん····餌を買ってくるだけなんだけどな。
せいぜい2日程度の外出だ。そう教えてあげたいけど、言葉の全てを理解出来る訳ではない彼らに伝えることは難しかった。
「すぐに帰って来るからねー!!」
せめて明るく声を張り上げたけど、言い終わらない内に、サリーと私は魔方陣の中に吸い込まれていった。
···ん?そういえば城の扉、鍵締めたっけ?
「やっぱりまずいわね‥‥‥」
城の最上階にある展望台から外を眺め、改めて痛感した。少し前まではブロッコリーが敷き詰められたみたいに青々としていた景色が、随分とまばらになってきているのだ。土の色が剥き出しになった場所では、陛下がお尻をふりふりさせながら美味しそうに枝を齧っていた。
「豚は上手くいったのに···。」
つい先日に、ハツカ豚を作る時に使った薬を試しに木に吸わせてみたけれど、増えはしても成長が遅かったのだ。
何かもっと別の手を考える必要がある。しかも早急に····。
はぁ。
陛下を見ながらため息をついた。
どうして陛下は草食なのかしら···。
視線を城の近くに戻すと、陛下の番や、子ドラゴンが、ハツカ豚を追いかけたり、食べたりしている様子が見えた。普通はああだ。陛下だけが、草食なのだ。
「やれやれ。」
山が丸裸になる前に、別の餌を準備しなければならない。そしてそれまではとりあえず、食欲が減退する薬でも飲ませて対応するしかないかしら。
立ち上がって階段を降り、材料庫の部屋の、色とりどりの粉の入った瓶を置いてある棚の前に行った。虹色になるように並べてあるのには理由があって、使う用途によって単色で使ったり混ぜて使ったりするそれは、間違えて配置してしまうと勝手に混ざって効果がおかしくなってしまう。
私は並ぶ瓶の中から青の粉の瓶を選び、動かさないようにそっと蓋を開け、薬匙を入れた。
ところが、左手に乗せている計量紙に2杯入れた後、思わず「あ。」と声が出た。
だって相手はドラゴンだ。これじゃ足りない。
仕方がないので一旦粉を戻し、厨房からボールを持ってきて、その上で瓶をひっくり返し、1匙分だけ瓶に戻して元の場所へ戻した。
すると瓶の蓋が文句を言うようにカチカチと音を鳴らした。
「うるさいわね、すぐまた補充するから。」
ガチン、と蓋の中心に匙を叩きつけると、シュン、と大人しくなった。
「ん、いい子。」
最初から大人しくしとけばよかったのだ。
ひびが入った瓶の蓋は、指に唾を付けてスッとなぞってやると、元通りになった。
****
その数日後のよく晴れた朝、私は身支度を整えて小さな旅行鞄を持って城の前に出た。
「じゃあ、行って来るわね。」
見送りに来た子ドラゴン達の体を順番に撫でてやると、名残惜しそうにすり寄ってくる。
子ドラゴンの母親は、ソワソワと心配そうに顔を見てきた。
「大丈夫、心配ないわ。陛下のこと、よろしく頼むわね。」
陛下は。というと、出来上がった薬がとても良く効いて、萎びたキュウリの様になって横たわっている。
「キュイ。」
戸惑いを見せつつも頷くのを確認して、私は自転車の「サリー」に跨がった。
「行くわよ、サリー。」
声を掛けると、ふわり、と風が起こった。
サリーは以前川に落ちていたのを拾ったもので、錆だらけで汚い自転車だ。1度よかれと思って綺麗にしてやると調子に乗って生意気になった為に、敢えて汚い状態に戻してやった経緯がある。
よし。安定しているわ。
城の上空を仰ぎ見て、作り出した魔方陣が上手く広がっているのを再度確認した。
トン、と地面を蹴ってペダルに足を乗せると、ゆっくりと上昇していく。
何気なく見下ろせば、どこまでも心細そうなドラゴン達····。
う~ん····餌を買ってくるだけなんだけどな。
せいぜい2日程度の外出だ。そう教えてあげたいけど、言葉の全てを理解出来る訳ではない彼らに伝えることは難しかった。
「すぐに帰って来るからねー!!」
せめて明るく声を張り上げたけど、言い終わらない内に、サリーと私は魔方陣の中に吸い込まれていった。
···ん?そういえば城の扉、鍵締めたっけ?
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