捕獲されました。酷い目にあう前に死にたいのですが、友人が自分の命を無理やり預けて行ったので、そうもいきません。早く返してしまいたい。

ともっぴー

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5 後半店主オリバー(旦那様)視点

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**レイラ

綺麗だと呟いたその人は、まるで大事な宝物を見るような目付きで、私のことを見つめた。その目があまりに柔らかくて戸惑ってしまう。逃げる私を捕らえたのはあなた達なのに。

「おい! 馬鹿っ!!」

その時突然別の男がやって来た。ずかずかと近寄り男の胸ぐらを掴んだかと思うと、反対の腕を振り上げる。思わず目を背けると 痛そうな音がした。

「馬鹿が。目を覚ませ。檻に布をしっかり被せて、絶対に見るな。」

はぁはぁと、肩で息をしながらそう言うと、男は檻の鍵をもぎ取って出ていった。直ぐにガタガタと床が揺れ始め、これは馬車の中なのだと理解した。殴られた男が床で転がっている。

「すみませんでした、、」

「え?」

ぼそっ、と消えそうな声が聞こえて思わず聞き返した。

「すみませんでした、、、俺、、何も、出来なくて、、」

声が震えている。仰向けで、顔は腕で覆われているから見えないけれど、、、

「泣いているの?」

「、、、すみませんでした、、」

声はますます震え、つい気の毒に思ってしまった。

「、、こっちに、来て。」

少し悩んだけれど思いきって、そう、声を掛けた。彼はぴくっと動いておそるおそるこちらを見てくる。あぁ、やっぱり、泣いている。

「こっちに、来て。」

繰り返すと、ゆっくり起き上がって、素直に檻のそばまで這って来た。私は鎖の付いた腕を出した。

「終わったらまた付けていいから、一度外してちょうだい。」

この状況で人の心配をする事になるなんて、思いもよらなかった。自分に呆れてしまう。

男は首を傾げながらも鎖を取ってくれた。

「顔を、みせて。」

右目の横辺りを殴られた様で、そこが腫れていた。その痛々しく腫れたところをそっと触れ、魔力を込める。ゆっくりと元通りになった。
彼は最初、何が起きているか分からない様子で、目を瞬かせていたが、やがて痛みが無くなった事に気が付いて慌てだした。

「え、、え?、痛くない、、そんな、、あなたが、? 俺はあなたにこんな仕打ちをしているのに、、、。 あなたは、俺が憎くないのですか?」

「、、憎くはないわ。だって、助けてくれようとしてくれたでしょう? ありがとう。」

首を横に振ってからそう答えると 男は一瞬目を見開いて、押し黙り、俯いた。
肩が揺れ、嗚咽が漏れてくる。

その姿を見て、少しだけ心が和んだ。結果はどうあれ、助けようと足掻いてくれたその気持ちが嬉しかった。こんな絶望でも、優しい人はいるのだと、温かい気持ちになれた。

泣いている姿をしばらく見守っていると、段々と落ち着き始めた。

「さぁ、また怒られる前に、布を掛け直した方がいいわ。見てはいけないのでしょう? 」

また殴られるのは可哀想だと思って言ったのだけれど、彼は心外だと言わんばかりに私を見た。

「、、っ そんなこと言わないで下さい。俺は平気です。それより、もし良ければもう少し、話していたいのですが、、」

「私は構わないのだけど、、、」


その後 どこかに着くまでの間私達はたくさんの話をしながら、馬車が止まれば布を下ろし、また動きだせば上げる、を繰り返した。

彼の名前はマイクといって、子供の頃に拾われて今の仕事をしているのだと。歳は19歳。仕事の話題になると、何度も何度も謝るので、私は自分の話を聞かせたりもした。もちろん村の事や、シンのことには触れないように気を付けた。仲良しの友人が居たことや、どんな遊びをしていたかだとか、好きな食べ物とか。当たり障りの無いことだけど、マイクはじっと嬉しそうに聞いていた。もう帰れないのだと思うと涙がでたけれど、マイクが手を握ってくれて、とてもありがたかった。

馬車は、時々休憩しながら何日か走った。そして何度目かの明け方、どこかに到着した。
その時マイクの顔が強張ったので、ここから彼は付いてこれないのだと思った。安心させるように笑ってみせた。

「マイク、ありがとう。とても楽しかったわ。」

「レイラ、、本当にすみません。助ける事が出来なかった、、、」
「おい、着いたぞ! 早く来い!」

マイクは呼ばれて行ってしまい、別の男達が入ってきた。檻ごと持ち上げられてどこかの部屋へと運ばれる。
檻が開けられたかと思うと、引きずり出され何人もの女の人に取り囲まれて、服を脱がされ、ごしごしと洗われた。
そして、清らかな身体か調べるのだと押さえ付けられ、屈辱を味わった。シンが憎いと思った。
最後に綺麗な服を着せられ、化粧をされ、また檻へと戻される。

早くシンに命を返してしまいたい。強く、強くそう願った。




***店主オリバー(旦那様視点)

マルクスとマイクが、生きたジェミューを入手したと報せを寄越してきた。ただし1人だけである。
2度と手に入らない程の貴重な品で、どう使おうかと悩んでいたところに、噂を聞きつけた隣国リュヌレアムの王子、ディラン殿下が、買い取りたいと、はっきり意思をお示しになられた。
隣国とのパイプを太くするのには丁度いい機会であるし、言い値でいいと仰って下さったのだ。
断る理由はない。と、いうよりは他に選択肢は無いように思われた。
興味を示す者は他にもいて、その中で一番有力なのが国内一の富豪だった。珍しい品が手に入ると必ず興味を示す方で、常連客でもあるのだが、王子が相手だと話にならない。

ところが急に、我が国アリドゥラムの国王陛下が私に、城へ来るようにとお命じになられた。

「、、、そなたは、珍しい物を手に入れたそうであるな。」

「は、はい。そうでございます。つい先日ジェミューの女を生け捕り致しました。しかしまだ手元に着いておりませんで、不確かな情報をお耳に入れる訳にはいかず、報告が遅くなってしまいました。」

まさか陛下が興味をお持ちになるとは思えなかったので、わざわざ報告もしていなかったのであるが、そうとは言えない。

「ほう、余の耳には入らずに、先に隣国に知らせるとはな。」

「とっ、とんでもございません! 陛下を差し置いて隣国などということは絶対に有り得ません。濡れ衣でございます。」

「しかし向こうの王子は知っていたぞ。」

「たたた確かに、ディラン殿下はご存じな様ですが、どこでお聞きになられたかは存じ上げません。」

「もうじき手に入るとも言っていたが?」

「まさかでございます!私はお売りするとは一言も申しておりません!!」

「ほぅ、、、ではどうするつもりなのだ?」

「私はその品をこの目で確認し、陛下に献上するに相応しいかどうかを見極めるつもりでした。」

「ふん。まぁよい。隣国にはこちらから、手違いがあったと知らせておいてやる。」

「ははっ。ありがとう存じます。」

「それで、、、それはいつ来るのだ?」

「明日の午前中でございます。お急ぎでしたら、直接持って来させる事も可能でございます。」

「ふん。まるで余が欲しくて堪らぬ様ではないか。そんなに急がずとも良い。」

「かしこまりました。しっかりと、磨き上げて参ります。」


急いで戻り、店の者に準備をさせる。絶対に、不備があってはならない。

「おい! この衣装は派手過ぎる! 陛下はもっと品のあるものがお好みだ! すぐに持ってこい!!」

「髪飾りなどは、いかがしましょうか?」

「当然、衣装に合わせた者を。あー、参ったな、金ばかりが掛かる。」

場を収める為に、献上すると言ってしまったのだ。気に入って貰えるなら、今後に繋がる事は間違いないのだが、、、出ていく金も惜しいものだ。

「パパ、マルクス達が帰ってくるんですって?」

騒ぎを聞きつけた娘のリサがやってきた。

「あぁ、そうだ。明日には着くと思うが、どうした?」

「だって、久ぶりでしょう?気になって。」

「気にするなんて珍しいな。」

リサが昔からマルクスに懐いているのは知っている。いつまでも幼いままではない娘が、マルクスに特別な感情を持ってしまわないか、心配だった。だが、最近はマイクに構いだして安堵していたのだ。
もちろんマイクが相応しいというのではなく、年相応の相手だと言うだけだが。

親としては家柄のしっかりしているサイラスが好ましい。仕事内容も、店の表に立つサイラスの方が跡取りとして相応しいのだ。

突然再び浮き上がってきたマルクスに不安を感じつつ、気付かないふりをした。今はまだ、そっとしておこう。結婚相手に誰が相応しいか、いずれ気付くことだろう。
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