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しおりを挟む***アリア視点***
「だから陛下、どういう事でしょうか?説明が足りていません!」
私としたことが、つい声を荒げてしまった。
でも、それくらい憤っているのだ。
「だから、衣装は最初の物にすればいいと言っている。余は疲れている。」
陛下は先程からずっと、同じ言葉を繰り返していらっしゃった。本当に訳が分からない。
「私だって疲れました。納得のいく説明をお願いします。」
「とにかく、最初の衣装を使え。国が懐かしかったのだろう、丁度いいではないか。」
「そんな、、、 あんまりではないですか?」
「もういいだろう。出て行きなさい。」
結局私は引き下がるしかなく、納得出来ないまま部屋へと戻った。
「アリア様、どういたしますか?」
「、、、リサを呼んで頂戴」
**
「恋人? あの年寄りが?」
「はい、それが、、お爺さんではなかった様で、、、」
「待って。話を整理するわね。つまり、シンは連れて行かれた恋人を迎えに来てたってことなのかしら?」
「恐らく、、、」
「呆れた。じゃあ私達は騙されていたの?」
呆れながらも、そんな危険を犯すほどの愛とはどのような物なのだろうと考えていた。私はそんな感情をまだ知らない。
「気付く事が出来ず申し訳ありません。」
「はぁ、、、ところで、あの装身具は何だったの?」
「あ、あれは、確かにシンさんの物だと思います。要望道りに仕上がっていましたので。」
「そう、、、」
「婚礼の衣装は当初のもので、後任の店に引き継いでおります。本当に申し訳ありませんでした。」
オリバー商会は罰が決定するまで、休業命令が出たと言っていた。私の知らないところで、勝手に騒動が起こり、勝手に処置されていく。やるせない気持ちだった。自分の目で見て、きちんと確かめおきたいと思った。
「何処にいるのかしら、、」
何か行動を起こそうにも婚礼前の私も時間は慌ただしく過ぎていき、その事は後回しになってしまっていた。
そして婚礼を7日後に控えた日、私は王妃の部屋へと移動した。
部屋の中を見て回っていると、寝室にあるドアに気付いた。
「ねぇ、このドアは何かしら?鍵が掛かっているようだけど。」
「ふふ。アリア様、これは陛下のお部屋と繋がっているドアなのですよ。」
「繋がっ、、、 ごほん、陛下のお部屋って、隣なの?」
つまり婚礼後に待っているあの行為の為のドアなのかと、恥ずかしくなり一瞬取り乱してしまった。
「いいえ、陛下のお部屋は少し離れた場所にありますので、王妃の部屋にだけ特別にドアがつけられているのですよ。」
「そう、、鍵は、何処にあるの?」
「鍵はございません。陛下だけが開ける事が出来るのです。」
ふとあの女の事を思い出した。このドアの向こうには、陛下だけじゃなくあの女も一緒にいるのかもしれない。
リサの話を聞く限り、陛下は激昂しておいでだった様だけど、その後は一体どうなったのかしら?
「ねぇ、ジュリと話をすることは出来て?」
***レイラ視点***
何度も繰り返し同じ夢を見ていた。
外には危険な罠があるのよ。
そして運悪く村まで持ち帰ると大変なことになるの。だから、気付いたらすぐに皆から離れること。そして、追手がくる前に命を捨てなさい。
幼い頃に母から何度も聞かされた話。
私達の村は、寄せ集めの村だ。誰もが、大切な誰かを失っている。そして、悲劇を避ける為に移動して、住みかを移しながら生活している。移動の時は一番恐い。けれども、移動を怠れば惨事が待っている。
私が失った大切な誰かは家族だった。母と父、それから妹。
その時、どういう理由だったかは忘れてしまったけれど、移動の予定が遅れていた。
そして、運悪く狩人に見つかったのだ。咄嗟に逃げ出せなかった人は諦めて命を絶った。私もそうしなければ、と思ったのだけれど、母が逃がしてくれた。母に急き立てられて必死で走って、振り返ったら、もういなかった。
妹は小さすぎて走れなかった。
父は、最後まで私を逃がすために抵抗してくれていた。
逃げ延びて生き残った私達は、他の村に合流したのだ。
私達の村は、寄せ集めの村だ。
懐かしい夢を見て目が覚めた時、自分が何処にいるのか分からなかった。それに身体が重たくて、だるい。手首がずくん、と痛んだ。
少し動かすと、いつの間にか巻かれた魔力封じの鎖が音を立てた。
視界には見慣れない天井が広がっていた。
ふと、顔を横に向けると、陛下の2つの目があった。自分の、折り曲げた腕を枕にして、じっとこちらを見ている。私はびくっとして口を開きかけた。
「ウィ、、」
「し、、」
陛下のもう片方の手が動き、指が私の唇に触れた。見るだけで胸が締め付けられるような、そんな目で私を見つめてきた。
私が起こした騒動を思い出した。真っ先にシンが無事かどうかを聞かなければいけないのに、陛下に説明をして、行動の訳を知ってもらいたいと思ってしまった。
「あの、ウィレム陛下、、」
「黙れ」
低い声でそう言われ、言葉を飲み込んだ。肘をついて上半身だけ起き上げた陛下が私に影を落とし、親指だけ唇に残しつつ頬に触れた。怒っているのか、そうでないのか分からない。でも、その怒っているような言葉が、その切ない目が、私を自惚れさせた。
咄嗟にしてしまった行為に怒っているのだと思って、早く誤解を解かなくちゃと、焦った。
私の気持ちを知ってもらいたい。気持ちさえ通じ合えば、きっと話だって、聞いてくれる、そう信じていた。
「いいえ、黙り、、」
「黙れ!」
黙りません、と、話を聞いて貰いたかったけれどそれは叶わなかった。
大きい声を出されて、私は目を見開いた。
「ふん、ただ黙っていればいい。」
そう言って、陛下の身体が覆い被さる様に落ちて来て、唇と唇が重なった。
優しく触れるだけの口付け。拒む事は出来なくて、受け入れた。確かめるように何度か繰り返され、次第に深くなっていく。嬉しい筈の口付けなのに、ただただ悲しくて、涙が頬を伝った。
「泣くのか?」
陛下が気付いて涙をなぞった。
「あ、、、」
「ふん、泣いても何も変わらない。」
むくっと起き上がり、ベッドから降りた。そのまま部屋から出ていこうとするのを見て、聞かないといけない事を思い出した。
慌てて後ろ姿に話しかけた。
「あのっ、シンは、無事ですかっ?」
一瞬、ぴたりと、歩みを止め、すぐに動き出した。返事は貰えないのかと思った時、ぼそっと呟く様に、生かしてある、とだけ言った。
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