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63荒野の女豹
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私達はこの広い荒野を縄張りにして活動している。あまりいい言い方ではないけど、一般的には盗賊と呼ばれる集団だ。荒野で息を潜め、ただただじっと、獲物が来るのを待っている。草の茂みの中に1人、2人、、、。また、所々に生える高い木の上や岩影にも1人、2人、、、と。獲物がどの方角から来てもいいように、3人一組で三角の体系を作り、いたるところに隠れているのだ。
私は、というと実はまだ仲間に加わったばかりの新人で、先輩にくっついて木の上にいる。
待っている間は決して動いてはいけない。少しでも動いてしまうと枝や茂みは不自然に揺れてしまう。風の強い日は別として、不自然に揺れる光景はこの広い荒野では目立ち過ぎるのだ。
だから私達は獲物が通る時間帯の夜明け前から日が落ちるまで、ただただじっと待ち続ける。
「ん、来た。」
ふいに先輩が口を開いた。
「えっ? どこですか?」
「ちっ、あんたもっと小さい声でしゃべんな。でかすぎる。」
「すみません、、」
「いちいち落ち込むんじゃないよ、鬱陶しい。ほら、丁度西の方角、豆粒みたいなのが見えるだろ? ありゃ男だね。」
「え、え、、あの、点みたいなやつですか?」
必死で目をこらすと、確かに人だった。
「ああ。黙々と歩いてやがる、いいねぇ。ああいうのがやり易いんだ。1人なのが更にいいねぇ。」
「荷物も大きそうですね。」
「お前やってみるか? 丁度こっちに向かって来る。」
「私が? いいんですか?」
「ああ、あいつなら問題ないだろう。よそ見もせずに歩いてるから最後まで気付かれずにいけそうだ。出来るか?」
「はい!」
うずうずしてきた。今まで練習した成果をやっと発揮できるし、これが上手くいったら少しは認めてもらえる筈。
「おい、力みすぎるなよ、変に力が入ると外すからな。後頭部を一気に行け。」
「はい!」
それから私は目標物が近づいてくるのをじっと待った。胸がどきどき鳴っている。楽しみな気持ちにほんの少し混じる緊張感が心地よい。暫くすると、やっと顔が確認出来るくらいに近づいてきた。良かった、弱そうだ。思わず口の端が上がった。優しそうな顔を見ると少しだけ気の毒に思うけど、私達には生活がかかっている。どうかお金を沢山持っていますように。心の中で何度も祈った。
彼は私のいる木から3m程離れた場所を横切った。先輩が、いけるか?、といった風に私を見た。もちろん、だ。しっかり頷いてから木の幹を力いっぱい蹴り、鍛え上げた肉体をしならせる。目指すは彼の後頭部。 と、突然彼が上を見上げた。 まずい、見られる。慌てて身体を捻りながら頭を蹴った。どうにか当たったけど私はバランスを失って、地面に身体を打ち付けた。
「いたた、、」
「よし、上出来。よくやったな。」
「でも、最後ちょっと失敗しちゃいました。」
起き上がりながら身体に付いた砂を払った。
「結果が全てだよ。見てみろ、見事に伸びてやがる。ふっ、間抜けだな。」
「ちょっと可哀想でしたかね?」
本当に見事に伸びていて、びくともしない。
「同情は止めとけな、痛い目みるよ。それよりほら、さっさと回収。」
「はっ、はい!」
「よし。あぁ、あと足を一本折ってやりな。」
「えっ!? もう伸びてますよ?」
「気が付いて追って来られても困るだろう?足が動かなきゃそんな気失せる。やりな。」
「はい!」
と返事はしたものの、無抵抗の相手の足を折るなんて、、。ちらりと顔を見れば、蒼白くなった顔が哀れに見えた。
膝を、、と思ったけどあまりに不憫で、先輩が見ていない隙に手加減しながら足首を踏みつけた。顔は一瞬苦痛に歪んだ。
「行くよ。」
「っはい!」
成功した私達は奪い取った荷物を持って巣に戻るのだ。お金が沢山入っていますように、、、。
私は、というと実はまだ仲間に加わったばかりの新人で、先輩にくっついて木の上にいる。
待っている間は決して動いてはいけない。少しでも動いてしまうと枝や茂みは不自然に揺れてしまう。風の強い日は別として、不自然に揺れる光景はこの広い荒野では目立ち過ぎるのだ。
だから私達は獲物が通る時間帯の夜明け前から日が落ちるまで、ただただじっと待ち続ける。
「ん、来た。」
ふいに先輩が口を開いた。
「えっ? どこですか?」
「ちっ、あんたもっと小さい声でしゃべんな。でかすぎる。」
「すみません、、」
「いちいち落ち込むんじゃないよ、鬱陶しい。ほら、丁度西の方角、豆粒みたいなのが見えるだろ? ありゃ男だね。」
「え、え、、あの、点みたいなやつですか?」
必死で目をこらすと、確かに人だった。
「ああ。黙々と歩いてやがる、いいねぇ。ああいうのがやり易いんだ。1人なのが更にいいねぇ。」
「荷物も大きそうですね。」
「お前やってみるか? 丁度こっちに向かって来る。」
「私が? いいんですか?」
「ああ、あいつなら問題ないだろう。よそ見もせずに歩いてるから最後まで気付かれずにいけそうだ。出来るか?」
「はい!」
うずうずしてきた。今まで練習した成果をやっと発揮できるし、これが上手くいったら少しは認めてもらえる筈。
「おい、力みすぎるなよ、変に力が入ると外すからな。後頭部を一気に行け。」
「はい!」
それから私は目標物が近づいてくるのをじっと待った。胸がどきどき鳴っている。楽しみな気持ちにほんの少し混じる緊張感が心地よい。暫くすると、やっと顔が確認出来るくらいに近づいてきた。良かった、弱そうだ。思わず口の端が上がった。優しそうな顔を見ると少しだけ気の毒に思うけど、私達には生活がかかっている。どうかお金を沢山持っていますように。心の中で何度も祈った。
彼は私のいる木から3m程離れた場所を横切った。先輩が、いけるか?、といった風に私を見た。もちろん、だ。しっかり頷いてから木の幹を力いっぱい蹴り、鍛え上げた肉体をしならせる。目指すは彼の後頭部。 と、突然彼が上を見上げた。 まずい、見られる。慌てて身体を捻りながら頭を蹴った。どうにか当たったけど私はバランスを失って、地面に身体を打ち付けた。
「いたた、、」
「よし、上出来。よくやったな。」
「でも、最後ちょっと失敗しちゃいました。」
起き上がりながら身体に付いた砂を払った。
「結果が全てだよ。見てみろ、見事に伸びてやがる。ふっ、間抜けだな。」
「ちょっと可哀想でしたかね?」
本当に見事に伸びていて、びくともしない。
「同情は止めとけな、痛い目みるよ。それよりほら、さっさと回収。」
「はっ、はい!」
「よし。あぁ、あと足を一本折ってやりな。」
「えっ!? もう伸びてますよ?」
「気が付いて追って来られても困るだろう?足が動かなきゃそんな気失せる。やりな。」
「はい!」
と返事はしたものの、無抵抗の相手の足を折るなんて、、。ちらりと顔を見れば、蒼白くなった顔が哀れに見えた。
膝を、、と思ったけどあまりに不憫で、先輩が見ていない隙に手加減しながら足首を踏みつけた。顔は一瞬苦痛に歪んだ。
「行くよ。」
「っはい!」
成功した私達は奪い取った荷物を持って巣に戻るのだ。お金が沢山入っていますように、、、。
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