捕獲されました。酷い目にあう前に死にたいのですが、友人が自分の命を無理やり預けて行ったので、そうもいきません。早く返してしまいたい。

ともっぴー

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***ジュリ視点***

お嬢様に、涙を流しながら1人になりたい、と言われ、私はどうすることも出来ずに部屋を出た。お嬢様の顔が頭から離れなくて、胸は、ぎゅうぎゅうと押し潰されそうだ。

時間を置いて、もう一度お嬢様を見に行ったとき、お嬢様はまだ泣いていた。
まだ乾きそうにない涙の跡が、どれだけ泣き続けているのかを物語っている。ただでさえ華奢で儚げなお嬢様の身体は触れたら消えてしまうのではないかと思われた。
こんな事なら あんな嘘をつかなければよかった。

夕食も食べられないというお嬢様にはとりあえず寝ていて貰うことにして、私は急いで部屋を出た。陛下がもうすぐ部屋に戻って来てしまう。その前に、どうしたらいいのか聞かないと、、、。私は必死でメリッサを探した。
まず向かったのは さっき会った厨房で、でもそこにメリッサはいなかった。
冷や汗が止まらない。お腹の下の方が、きゅぅ、と冷えてきた。
焦りながら洗濯場を探し、リネン室も探したけどやっぱりどこにもいなくって、、きょろきょろと見渡していたら、突然 窓の向こうの庭にある、温室が目に飛び込んできた。私は滅多に立ち寄らない場所だけど、温室では王妃殿下専用の花を育てていたはず。直感だった。弾かれた様に夢中で走り、たどり着いた先で、私はやっとメリッサを見つけることができた。

「メリッサ! はぁっ、 良かった。あのね、  はぁっ、、はぁっ、、お嬢様に、あの、話を、したのだけど、はぁっ、、お嬢様が突然泣き出してしまってっ。 はぁっ、はぁっ、どうしよう、私、、どうしていいか分からなくって。」

呼吸を整える余裕もなくて、はぁはぁ と息を切らせながら一気に聞いた。

「お嬢様、泣いたの?」

しゃがんで花を見ていたメリッサが、くるりと振り向いた。足元には花びらがたくさん落ちていた。

「ええっ、すごくっ。 はぁっ、私、どうしよう、もうすぐ陛下が戻ってくるのにっ」

メリッサは、大丈夫 と、にっこり微笑んだ。

「ジュリはすごいわ。もうお嬢様の本心を引っ張り出せたのね。」

「え、、、? どうして? 私、失敗したんじゃ、、」

「お嬢様は大丈夫よ。泣いたのは余程びっくりしたからだと思うわ。でも直ぐに逃げ出さないのなら大丈夫。ジュリの言う通り、お嬢様の気持ちは本物だったのね。後は陛下に慰めて貰ったらいいのよ、ね。」

そう言われると、なんだか大丈夫な気がしてきた。メリッサに、すごい と言われ、気分が上昇した、嬉しい。

「私は成功したのね、、? あぁでも、陛下に何て言えば、、 」

「あははっ。」

「え?」

突然メリッサが笑い声を上げたので、思わず目を丸くしていると、彼女は花を1本折ってから立ち上がった。影にかくれていた花壇が露になって、どきりとした。そこに花がほとんど無いのは、元からだったのかしら、、? 足元に散らばった花びらが、違和感を誘うけれど今はそれどころじゃなくてかき消した。

「ふふ。ジュリって本当にお利口さんだわ。あ、お利口さんは失礼だったわね、ええと、素晴らしい人、ね。あのね、陛下に作り話まで伝えると ややこしくなるから、真実の部分だけ、白状なさいな。エレノアの侍女から聞いた、って言うのは忘れないでね。」

「真実の、部分だけ? でも真実って、どこまでなの?」

「あら、私、最初に言ったじゃない。ジェミューの剥製が宝物庫にあるって。そこだけ伝えて、お嬢様が泣いているって言えば、後は陛下がどうにかしてくれるわ。ほら、急いだ方がいいんじゃない?」

「わ、分かったわ! ありがとうっ」

良かった。私は合っている、間違えていない、大丈夫。 、、、大丈夫。


**

ばたばたと1人分の夕食をワゴンに乗せて部屋に滑り込んだら、間も無く陛下が戻ってきた。

「ん? レイラはどうした?」

「あ、ええと、、あの、お嬢様は、今、お休みに、、」

「何故だ?」

いざ目の前で聞かれると緊張してしまう。

「あ、あの、少し気分が優れないようでして、、あの、ええと、、」

「はっきり言え。」

「はい、あの、私、お嬢様がこんなに驚くとは思ってもみなくて、、それで、あの、エレノア様の侍女から聞いた噂話をうっかりお嬢様に話してしまったのです。」

「何をだ?」

陛下が苛立っている。早く言わないとと思うのに、説明するのが難しくて、おたおたしてしまう。

「へ、陛下、あの、すみません、私、ジェミューの剥製がこの王宮の宝物庫にあるっていう話を聞いて、それを、お嬢様に、、」

「は、、、? ジュリ、今、何を言った?」

陛下のお顔を見て、どきっとした。さっきまでの自信は瞬く間に消えていった。やっぱり私は間違えていた? 心臓が縮み上がる。

「あ、、えっと、、へ、陛下? あ、あの、す、すみませんでした。わた、私、、そんなつもりじゃなくて、、ただ、き、聞いた話を、」

「違う、そんなことは聞いていない。レイラに何を言った?」

「あの、あの、宝物庫にジェミューの剥製がある、と。」

「それでレイラは? 今どこにいる?」

「あの、あの、、だから、、お、お休みに。」

陛下の足が即座に寝室へ向かった。

「あのっ、あのっ、寝室じゃありませんっ」

慌てて後ろ姿に呼び掛けると、陛下はドアの取手に掛かった手を ぴたり、と止めた。

「何故だ?」

「え、ええと、1人になりたいと言って、ご自分の、部屋に、、」

「、、、」

「あの、へ、陛下?」

「、、、もういい、下がれ。」

「でもあのっ」

「下がれ。」

部屋を出るときに、一瞬だけ振り返って陛下の顔を盗み見た。

私は、なんて大変な事を、、、 陛下の、今にも泣きそうな顔を、私は 初めて見た。


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