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74 ウィレム、ジュリを拾う(過去話)
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***ウィレム視点***
ある日、父が友達というものを俺に与えた。
みすぼらしい身なりをした少女で、俺と同じくらいの背丈だ。友達にするにはあまりに貧相だが、優しくしてやれ、という父の命令通り、優しく接した。名前はリラ。彼女は俺を名前で呼ぶことも許されていた。
一緒に過ごす時、リラは決まって花畑を選ぶので、俺はいつも しぶしぶ付いていった。
「なぁ、リラ、そんなに花ばっかり摘んで楽しいか?」
「へへ、うん。すごく楽しい。ウィレムもやってみて。今ね、花冠を作ってるの。」
「、、、いや、俺はいいよ。」
正直、女の子の遊びは分からない。
父はいつも俺に、強くなれ、強くなれ、と狂ったような厳しい訓練をさせた。王は絶対的に強くなければならないというのが父の考えで、実際父は強かった。そして魔力を持った俺は更に強くなければ許されないのだ。
それなのに、どうして花を摘むのが楽しいという少女を、友達として与えたのだろう、、、。向こうの方ではオーウェン達が剣の稽古をしているのが見える。あっちの方が為になりそうだ。ちらりとリラを見れば嬉しそうに微笑まれた。
「ふん。」
「、、ウィレムは楽しくないの?」
「ん? わぁっ、泣くなよ。」
つまらなくて、つい鼻を鳴らすと、リラは泣きべそをかきはじめた。正直 面倒臭い。
「花、むしればいいのか?」
溜め息をついて、近くの花を引っぱった。
直後、俺の手元を見るリラの目が、大きく開かれた。
「ぷっ、あははっ! すごいっ、根っこごと取れたっ! あはははっ」
ぐい、と引っ張った花は根っこから抜けて、リラは余程面白かったのか、転げ回って笑った。
なんだ、こんな事で喜ぶのか。泣かれるのも面倒なので続けて何本か花を引き抜くと、その度にリラは大笑いして転がった。
「ふっ、馬鹿みたいだ。」
馬鹿みたいなリラを眺め、ほんの少し、羨ましいと思った。
**
ここ暫くリラの姿を見ないな、と思っていたら、突然父から呼び出された。執務室を訪ねると、付いてこいと言われ、言われるままに付いて行った。
父はいつも詳細を話さない。俺はただ、命令の通りに動くことを望まれていた。
着いた所は牢で、俺は あぁまたか、と思った。牢に入れられた人間は俺の魔力の練習台だ。
ただ、その時 視界に入ってきた足が1人分で、俺は おや?と思った。いつも父は力を強くする為に人数も範囲も より大きくしたがっているからだ。
それは隣国リュヌレアムを支配下に置こうとする父の計画の一部で、父は リュヌレアムは発展途上にはあるが国土も広く資源が豊富だから早いうちに手を打たなければ危険だ、といつも言っていた。
顔を上げると目の前に引っ張り出されていたのはリラだった。リラは押された拍子に、ガクガクと震えていた足がもつれ、その場に倒れ込んだ。地面に手をついたまま、恐怖に怯えた目で、俺を見る。
「父上、リラが何か?」
「ふむ、残念なことに、これは今日、罪を犯した。」
「罪、ですか。一体どんな?」
「今朝、盗みを働いたのだ。信用していたのに本当に残念だよ。」
「あぁ、それは残念です。」
リラの身体を見るとガリガリに痩せほそっており、わざと飢えさせたのだと分かった、きっと、罪を犯させる為に。
「ウィレム、罪を犯した者はどうする?」
「もちろん、罰を与えます。」
「ふむ、物分かりが良くなったな。して、どのような罰がいいと思う? これは信頼を裏切った。ただの盗みとは訳が違う。」
「 死 です。」
父の望む答えは直ぐに分かった。
父は、時々こういった小細工めいたことをしては俺を試すのだ。だけど、俺はもうこんな事では動じなくなっていた。
「ふむ。では、後は任せよう。」
そう言うと父は一歩引いて、用意された椅子に腰掛けた。
改めてリラを見ると、青ざめ、縮こまって歯をガチガチと鳴らしていた。あの時笑っていた少女とは全く別物に見える。一歩、また一歩と近寄ると、逃げるように後ろにずりずりと下がっていく。腰が立たなくなったのか動きがおかしくて、いつかの兎を思い出した。
「リラ、悪いな。」
父に聞こえないくらいの小さな声で呟くと、リラには聞こえたらしく、大きく首を横に振った。
「嫌、、止めて、こ、来ないで、お願い、、」
リラの周りに、じわじわと水溜まりが広がった。恐くて小便を漏らしたのだ。俺は早く終わらせようと、一気に力を込めた。
瞬間、パンッ、と大きな音が鳴り響き、リラの半身は破裂したように飛び散った。
つい、力を込めすぎたのだ。
「すごいじゃないか!! ウィレム、今のは凄かったぞ! 」
父は歓声を上げると椅子から立ち上がって俺に近付き、肩を叩いた。喜ぶ父の姿が虚しい。全身に受けたリラの破片が気持ち悪くて、一刻も早く洗い流したいと思った。
**
時が過ぎ、国王となった俺は隣国リュヌレアムと協定を結ぶことにした。
リュヌレアムといえば、父が支配下に置きたがっていた国なのだが、俺はそれに従わなかったのだ。父が手に入れた物はあくまでも父の物で、俺はそれ以上父の物を増やしたくなかった。父とは別の方法を模索している最中での試みだ。
そしてこの日は、協定締結式が行われる日で、王宮の中では慌ただしく準備が行われている。
その準備の最中、何の気なしにぶらぶらと見回っていると、騒ぎが起こった。
どうやら、鼠が一匹忍び込んだらしい。
直ぐに捕らえられた鼠はガタガタと震えていた。まだ幼い少女だ。
「陛下、お見苦しい処をお見せして申し訳ございません。この者は直ちに連れて行ますので。」
外部から侵入した鼠は直ちに駆除される。それを知ってか知らぬか、少女は恐怖のあまり、小便を垂らしながら目の前を引き摺られて行く。その姿を見てふいに、かつての少女を思い出した。
「待て、それは余が拾おう。」
気が付けば、口が勝手に動いていた。
「へ!? い、いえ陛下、これは罪を犯した者でして、、」
「要らぬから処分するつもりなのであろう? 違うのか?」
「は、はい、、確かにこれから処分致す処ではございますが、、」
「ふん、なら処分したつもりでここに置いて行け。それを余が拾う。」
「は、、? へ、陛下、、一体何を、、」
「置いて行け。聞こえぬか?」
「い、いえっ、、 で、では、こ、ここに捨ててさせていただきます。」
「ふん、早く行け。」
何となくだ。ただ、何となくリラを思い出しただけだった。
ある日、父が友達というものを俺に与えた。
みすぼらしい身なりをした少女で、俺と同じくらいの背丈だ。友達にするにはあまりに貧相だが、優しくしてやれ、という父の命令通り、優しく接した。名前はリラ。彼女は俺を名前で呼ぶことも許されていた。
一緒に過ごす時、リラは決まって花畑を選ぶので、俺はいつも しぶしぶ付いていった。
「なぁ、リラ、そんなに花ばっかり摘んで楽しいか?」
「へへ、うん。すごく楽しい。ウィレムもやってみて。今ね、花冠を作ってるの。」
「、、、いや、俺はいいよ。」
正直、女の子の遊びは分からない。
父はいつも俺に、強くなれ、強くなれ、と狂ったような厳しい訓練をさせた。王は絶対的に強くなければならないというのが父の考えで、実際父は強かった。そして魔力を持った俺は更に強くなければ許されないのだ。
それなのに、どうして花を摘むのが楽しいという少女を、友達として与えたのだろう、、、。向こうの方ではオーウェン達が剣の稽古をしているのが見える。あっちの方が為になりそうだ。ちらりとリラを見れば嬉しそうに微笑まれた。
「ふん。」
「、、ウィレムは楽しくないの?」
「ん? わぁっ、泣くなよ。」
つまらなくて、つい鼻を鳴らすと、リラは泣きべそをかきはじめた。正直 面倒臭い。
「花、むしればいいのか?」
溜め息をついて、近くの花を引っぱった。
直後、俺の手元を見るリラの目が、大きく開かれた。
「ぷっ、あははっ! すごいっ、根っこごと取れたっ! あはははっ」
ぐい、と引っ張った花は根っこから抜けて、リラは余程面白かったのか、転げ回って笑った。
なんだ、こんな事で喜ぶのか。泣かれるのも面倒なので続けて何本か花を引き抜くと、その度にリラは大笑いして転がった。
「ふっ、馬鹿みたいだ。」
馬鹿みたいなリラを眺め、ほんの少し、羨ましいと思った。
**
ここ暫くリラの姿を見ないな、と思っていたら、突然父から呼び出された。執務室を訪ねると、付いてこいと言われ、言われるままに付いて行った。
父はいつも詳細を話さない。俺はただ、命令の通りに動くことを望まれていた。
着いた所は牢で、俺は あぁまたか、と思った。牢に入れられた人間は俺の魔力の練習台だ。
ただ、その時 視界に入ってきた足が1人分で、俺は おや?と思った。いつも父は力を強くする為に人数も範囲も より大きくしたがっているからだ。
それは隣国リュヌレアムを支配下に置こうとする父の計画の一部で、父は リュヌレアムは発展途上にはあるが国土も広く資源が豊富だから早いうちに手を打たなければ危険だ、といつも言っていた。
顔を上げると目の前に引っ張り出されていたのはリラだった。リラは押された拍子に、ガクガクと震えていた足がもつれ、その場に倒れ込んだ。地面に手をついたまま、恐怖に怯えた目で、俺を見る。
「父上、リラが何か?」
「ふむ、残念なことに、これは今日、罪を犯した。」
「罪、ですか。一体どんな?」
「今朝、盗みを働いたのだ。信用していたのに本当に残念だよ。」
「あぁ、それは残念です。」
リラの身体を見るとガリガリに痩せほそっており、わざと飢えさせたのだと分かった、きっと、罪を犯させる為に。
「ウィレム、罪を犯した者はどうする?」
「もちろん、罰を与えます。」
「ふむ、物分かりが良くなったな。して、どのような罰がいいと思う? これは信頼を裏切った。ただの盗みとは訳が違う。」
「 死 です。」
父の望む答えは直ぐに分かった。
父は、時々こういった小細工めいたことをしては俺を試すのだ。だけど、俺はもうこんな事では動じなくなっていた。
「ふむ。では、後は任せよう。」
そう言うと父は一歩引いて、用意された椅子に腰掛けた。
改めてリラを見ると、青ざめ、縮こまって歯をガチガチと鳴らしていた。あの時笑っていた少女とは全く別物に見える。一歩、また一歩と近寄ると、逃げるように後ろにずりずりと下がっていく。腰が立たなくなったのか動きがおかしくて、いつかの兎を思い出した。
「リラ、悪いな。」
父に聞こえないくらいの小さな声で呟くと、リラには聞こえたらしく、大きく首を横に振った。
「嫌、、止めて、こ、来ないで、お願い、、」
リラの周りに、じわじわと水溜まりが広がった。恐くて小便を漏らしたのだ。俺は早く終わらせようと、一気に力を込めた。
瞬間、パンッ、と大きな音が鳴り響き、リラの半身は破裂したように飛び散った。
つい、力を込めすぎたのだ。
「すごいじゃないか!! ウィレム、今のは凄かったぞ! 」
父は歓声を上げると椅子から立ち上がって俺に近付き、肩を叩いた。喜ぶ父の姿が虚しい。全身に受けたリラの破片が気持ち悪くて、一刻も早く洗い流したいと思った。
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時が過ぎ、国王となった俺は隣国リュヌレアムと協定を結ぶことにした。
リュヌレアムといえば、父が支配下に置きたがっていた国なのだが、俺はそれに従わなかったのだ。父が手に入れた物はあくまでも父の物で、俺はそれ以上父の物を増やしたくなかった。父とは別の方法を模索している最中での試みだ。
そしてこの日は、協定締結式が行われる日で、王宮の中では慌ただしく準備が行われている。
その準備の最中、何の気なしにぶらぶらと見回っていると、騒ぎが起こった。
どうやら、鼠が一匹忍び込んだらしい。
直ぐに捕らえられた鼠はガタガタと震えていた。まだ幼い少女だ。
「陛下、お見苦しい処をお見せして申し訳ございません。この者は直ちに連れて行ますので。」
外部から侵入した鼠は直ちに駆除される。それを知ってか知らぬか、少女は恐怖のあまり、小便を垂らしながら目の前を引き摺られて行く。その姿を見てふいに、かつての少女を思い出した。
「待て、それは余が拾おう。」
気が付けば、口が勝手に動いていた。
「へ!? い、いえ陛下、これは罪を犯した者でして、、」
「要らぬから処分するつもりなのであろう? 違うのか?」
「は、はい、、確かにこれから処分致す処ではございますが、、」
「ふん、なら処分したつもりでここに置いて行け。それを余が拾う。」
「は、、? へ、陛下、、一体何を、、」
「置いて行け。聞こえぬか?」
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