捕獲されました。酷い目にあう前に死にたいのですが、友人が自分の命を無理やり預けて行ったので、そうもいきません。早く返してしまいたい。

ともっぴー

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うっすらとした意識の中で、ウィレムが私に覆い被さっていたような気がする。ひんやりとした感触が、何となく肌に残っていた。
    
    
    
 
「お嬢様、、お嬢様、、」

耳元でジュリの囁くような声が聞こえた。

「、、、」

「お嬢様、、私が分かりますか?」

身体がだるい。重たい瞼を開けるとジュリの顔がぼんやりと見えた。

「、、、」

頷こうとしたけど上手く動かせなかった。喋ろうとしても空気が漏れるだけで、身体中どこも、全く力が入らない。

「お嬢様、、? 」

頷く代わりに、ゆっくり瞬きをした。ジュリは ほっ、と安心して強張っていた表情を緩めた。そしてそのまま みるみる内に泣いているのか笑っているのか分からないような顔になった。

「良かった、、、良かった、、。 目を、覚まさないかと思いました、、。
あの、、お嬢様、、私、本当にごめんなさい。こんな事になるなんて思っていなくて、、」

もう一度、ゆっくり瞬きをした。
よく分からないけど、ジュリのせいではない気がする。

それにしても、、気になる事はたくさんあった。例えば、この見慣れない天井。そして目線を巡らせて目に入った異様な光景、、この部屋には、あるはずの壁の代わりに鉄の棒が並んでいた。
だけれど、全てに靄がかかっているようで思考もふわふわと鮮明ではなく、私は考える事を放棄した。ジュリの顔をぼんやりと見つめていると、ぐぐ、っと顔を寄せてきた。声を潜めて話し始める。

「お嬢様、もう少ししたら陛下がお嬢様に鎮静薬を打ちに来ます。でも、実は中身は別の物に変えてあるんです。今 薬が切れかけているところなので、時期に動けるようになる筈です。」 

いい終わると、また 泣きそうな顔になった。

「すみません、、私に出来るのはこれくらいしか、、」

私はもう一度瞬きをした。話の内容は到底理解出来なかったけれど、聞いている という意味で。

「、、、あ、そうだ、動けるようになるまでは寝たふりをしていて下さい。陛下が気付くとまた薬を打たれてしまうかもしれないので。すみません、、、」

そう言ってジュリは足早に去って行ってしまった。残された私はどうする事も出来ないので、ジュリに言われた通り目を瞑ってウィレムを待つことにした。
間も無く足音が聞こえてきた。ジュリの軽い足音ではないので、ウィレムだろうとは思う。

足音はカツカツとゆっくり近付いてきた。寝たふりを と言われ目を瞑っているけれど、ウィレムの気配を直ぐそこに感じて自然と胸が高鳴った。

突然 ひやり とした物が腕を掴んだ。冷た過ぎてそれがウィレムの手だと気付くのに時間がかかった。そしてすぐにチクリ、と痛みを感じた。
一瞬だけ、びくっと動いてしまったかもしれない。今のがジュリの言っていた鎮静薬なのかしら? 何の為に? 
、、あれ、、私、何をしていたんだっけ? さっきよりも頭の靄が晴れてきて、いろいろと疑問符が浮かんできた。
そして ふっ、と頭を掠めた窓の外の光景。
、、、そうだった、私は宝物庫の剥製を確かめたくて部屋を飛び出したのだ。
じゃあ、今この状況は 勝手に部屋を出てしまったから?
ぐるぐると考えている間、ウィレムは私の顔を撫で続けていたのだけど、次第に動きが変わってきて、考え事どころではなくなってきた。
間近で吐息を感じるようになり唇を触られてどきりとした。そして、思わず動いた指先に はっとした。少しなら動かせそう、、。

ウィレムはすがり付くように身体を密着させながら、いろいろなところに口付けを落としていった。とても冷たくて、まるで私の体温を欲しているかのようで、抱き締めてあげたい と、そう思った。

私の上にのし掛かってきたウィレムが唇を重ねてきた。くっついては名残惜しそうに離れ、またくっついては離れる。起きて、と言われているような気がした。
足の先に力を込めてみると、しっかりと動く感触があった。手を握ってみると力を込める事が出来た。そっと、そうっと 確かめるように両手を持ち上げてみる。
その腕をウィレムの背中にゆっくり落とすと びくっ、と震えた。そのままぎゅうっ、と抱き締めたかったけれど、力が足りず呆気なく離された。

「レイラ、、?」

「、、ィレム、、」

声が掠れて、もう一度言おうとしたら、ウィレムの唇に塞がれた。

「レイラ、、、レイラ、、」

口付けの合間に何度も名前を呼ばれた。答える代わりに、もう一度腕を背中に回すと、ウィレムの顔が私の顔の真横に落ちてきた。枕に顔を埋めている。すん、と鼻を啜る音がしたので ぽん、ぽん、ぽん、、、と優しく叩いてみた。
ウィレムの身体はとても冷たい。それがなんだかとても悲しい。

「、、、泣いても、、いいですよ?」

「黙れ。」

「ふっ、、」

ただの強がりに聞こえてつい、笑ってしまった。

「黙れっ。」

イラついた声だ。それでもやはり強がりに聞こえた。

「、、顔を、見せて下さい。」

「黙れと言っている!」

「ふふっ  駄々っ子みたい、、」

久しぶりのウィレムが嬉し過ぎて、冷たい言い方も愛しくて、ついからかってしまった。よほど勘に触ったのか、かばっと顔を上げて睨んでくる。泣いている訳ではなかった。

「ウィレム、、もっと、、」

怯まず、見つめ返して言うと、ウィレムは一瞬 面食らった顔をしたけれど意外と素直に唇を寄せて来てくれた。嬉しい、、、。 私は唇を合わせながら意識を集中させて、身体の奥にある熱い塊を、ゆっくりと動かした。もっと早くに、こうしておけばよかった、、。
じわりじわりと口の中まで移動してきたその塊を合わさったその唇の隙間に、えいっ、と押し込むと、ウィレムは一瞬固まった後、勢いよく私から離れた。喉が大きく上下したので飲み込んだのだと分かる。目が大きく見開かれたかと思うと、呻きながらベッドから転がり落ちた。

「、あつ、い、、  な、、、に、をっ、、」

「えっ、あっ、、ご、ごめんなさいっ。で、でも、すぐに馴染む筈ですからっ。」

胸を押さえて床の上をのたうつ姿に唖然とした。身体が冷えきっていたからもしかしてとは思ったけれど、これ程だとは、、

「、、ぐ、、 はっ、あ、、熱い、、」

顔からは普段の青白さが消え、真っ赤になって汗が滲んでいた。

「、、ごめんなさい、でも、、燃えているから熱いんです。」

「、、はっ、はっ、、何を、、?」

もがき苦しむウィレムを抱き締めようとベッドから下りようとしたけれど、力が入らず滑り落ちた。這うようにして進み、丸くなった背中にすがり付いた。

「命を、、ウィレムに、私の命を預けました。」

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