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モンスター料理

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見た事もないようなデカい包丁を使い、キールは豪快にモンスターを捌き始めた。

「ひーーー!!!」

「なんだ、スカイ。モンスター食った事ないんか?」

ある訳がない。

ブルブルと首を横に振る。

「まあ、狩りもなあ、こっちが狩らないと人間達が襲われちまうし。だが、食える分だけ、て決まりはあるんさ。今日は世話になってるばあさん達の分も狩ったんだ、が!」

ドン!と豪快な音を立て、モンスターが刻まれていく。

「あー、スカイ。すまんが、外の農園から野菜を摂ってきてくんねーか」

「あ、は、はい!」

藁と木造で出来たキールの一軒家から裏手に出ると、沢山の野菜が実っていた。

トマトや玉ねぎ、じゃがいもやきゅうりや茄子など、名前は違うのかもしれないが、全て見た事のある野菜ばかり。

幾つかを毟り、再度、俺はキールの元へ戻った。

モンスターと野菜の煮込み、串に差し焼いたモンスターの何処かの肉。

焼いたモンスターにはキールが塩のようなものを振っている。

「さ、食いな」

「い、いただきます....」

モンスターと野菜の煮込みの入った器に口を寄せ、恐る恐るスープを啜る。

「....!美味い!」

「んー!モンスターのいい出汁が出て、なかなか美味く出来たな」

ガツガツとキールの振舞ってくれた料理を貪った。

「モンスターがこんなに美味いなんて...!」

「アッハッハ!そんなんで良く生きて来られたなあ。明日にでも捌いた肉はサリー達に持って行くか」

「サリー達...ですか?」

「この村の小さな喫茶店のばあさんよ。と、その孫のリリンは女だもんでな。さすがにモンスターは狩れないからよー。大衆食堂のおっさんは自ら狩れるが」

「あ、あー、なるほど...女性でしたら、そうですよね」

「サリーのばあさんは狩りは得意じゃーあるが、かと言って、喫茶店にリリンを置いていく訳にもいかないからなー」

「おばあさんが、狩り...」

「まあ、ほら、食え食え。明日は忙しくなるし、食べたらさっさと寝るぞ」

「あ、は、はい」

ガブ、と部位はわからないが焼きモンスターを食いちぎる。

「....鶏に近い」

「....鶏?」

いきなり、キールが動きを止めた。

「鶏の肉を食べたか、お前」

凍てつく声に慌てて首を横に振る。

「だよなぁ、びっくりさせんな。鶏は卵を産んでくれる、尊い存在だで。人間を襲う訳でもないのに食う訳がねー。卵を戴くのも申し訳ないっつーのによー」

キールがこれまた豪快に焼きモンスターを食った。

...この世界では鶏は神聖なものだと知った。
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