ママと勘違いされて始まった物語

ミヒロ

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...久しぶりに泣いた。

なんだか泣き疲れ、眠気がピークになった様で、瞼が重い。

ふふ、と誠さんは笑い、

「泣いたから眠くなったでしょ」

ズバリ言い当てられ、思わず、瞼をこじ開けて正面に座る誠さんを見る。

「さっきも話した通り、俺は本でも読んでおくんで。あ、お腹は?空いてない?昼時だけど」

そういえば、理一の看病に追われ、朝からろくに食べてはなかった事に気付かされる。

「お腹空いてるのも忘れるくらい看病してたんでしょ。何か軽く食べる?母さんは看病しているだろうから簡単に何か作って来ようか?」

...さりげなく、なんて事なさそうに。
思いやりの溢れた言葉を誠さんは笑顔で言う。

「だ、大丈夫です」

「まあ、陽平くんが起きたら何か食べにでも行こうか。何か食べたい物はある?嫌いな物とか」

一瞬の間を置き、首を横に振る。

優しい眼差しの誠さんのその瞳を見つめたまま。

「だったら、ラーメンなんかどう?駅前に美味いラーメン屋があって。あー、まだやってるかなあ、随分、実家、帰ってなかったし」

...ラーメン、か。

理一が騒いだら申し訳ないし、随分、食べに行っていないっけ。

外食もなるべく控えていた。

会社員を辞め、理一を保育園に預け、サラリーマン時代、昼間、良く足を運んでいた小さな個人経営のレストランの店主が僕の話しを知り、働かないかと打診してくれた。

正規社員とはいえ、保育園やら理一自身も体の成長もあり、衣類などや保育園の費用、これから理一が学校に行き、大学にも行くかもしれないし、一人暮らしも始めるかもしれないと、貯金も欠かせない。

その為、以前のマンションとは打って変わった1部屋しかない格安な古びたアパートへと引っ越した。

「あ、悪い。勝手に決めて。他にしようか」

「いえ。食べたいです。ラーメン」

困惑気味だった誠さんが、そっか、とはにかみ、本棚へと向かいながら、

「ゆっくり眠ってね。音、立てないように気を付けるから」

...本当に誠さんは優しいな。その優しさが嬉しくもなんだかくすぐったい。

慣れないから、かな。こんなに誰かに優しくされたこと、あんまり無かったから...。

そ、と掛け布団を捲り、体をベッドに移し、寝転がる。

枕カバーから仄かな柔軟剤なのか、優しい香りに包まれる...。

瞼を閉じると自分でも驚くくらいに早く、眠りに吸い込まれていった。
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