異世界アイドル〜恋愛禁止条例認証〜推しの悲しみは何があってもファンは許しません!世界に反してだってお仕置きよ‼︎

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 ドサ周りを繰り返し、村から村へ、次いで街へ、そしてとうとう王都間近の街でもライブができるようになったグループ、アイドル『シンデレラ』一行。
 野外オーケストラの舞台を使い、光の魔法使いと何度も何度も打ち合わせを繰り返し調整する。
 通常ここまでの調整などはしない。今世において光の魔法使いが舞台を照らすとき灯りを調整することぐらいしかしない。至って単純な仕事である。
 しかしシンデレラ達、リコリにとっては全く違う。

 各自のソロパートなど、それこそ見せ場が多いのだ。

 知的担当ラナは少しばかりあった聖女の力のせいで両親から引き離され、連れていかれた教会では力の強い聖女達や教会関係者に虐められてきた。
 出会った頃は笑顔を見せてくれることもなく、それでもシンデレラのメンバーとして活動するにつれ、本来の慈愛ある優しい微笑みを見せてくれるようになった。
 それを更に輝かせるためにもラナのソロが入る瞬間、他の光が暗くなり、ラナに当たる光がピンクに染まり強くなる。
 揺れる三つ編みが輝き、今では心からの微笑みを浮かべ歌うラナ。

 パルはパルでこの世界には珍しいハーフアップツインテール。これはパルの許可を取りリコリがプロデュースした。
 平民の母親が貴族のメイドとなり、お手付きにされたあとあっさりと捨てられて生まれてきたのがパルである。
 その貴族には子供がおらず、最終的には母親と引き離され無理矢理離れで監禁されながら貴族として、貴族家の当主となるため勉強漬けにされていたパル。
 そんなパルも最初は張り付けた作り物めいた笑みを見せるだけだったが、今となってはあざと可愛いが売りの妹キャラを確立し、元気な笑顔を見せて歌いだせばパルに翠の光が注ぐ。

 そしてキャラ確立と言えばメロルである。
 元高位貴族令嬢でありながら、悪役令嬢キャラであり強気お姉様(女王様とも言われる)担当メロル様。
 メロルは正真正銘元お貴族様。それも高位の。3歳の頃には婚約者を決められたが、その婚約者に浮気された上に「君が冷たいから浮気するんだ」なんて台詞を貰い、しまいには「運命の恋人を見つけた」と宣言され婚約破棄。あれよあれよと全てメロルのせいにされ、慰謝料請求までされて貴族として疵物と扱われることになってしまった。
 残されたのは、悪役令嬢と言う肩書。
 けれどもメロルはリコリと出会うことで強くなった。その悪評である肩書さえも味方につけ、強気な微笑みを魅せながらソロパートに入るとメロルに淡い紫の光が当たり、それが揺れるように濃くなっていく。

 そうして3人のソロパートが終われば、一転して真っ暗になる。

 そこに浮かび上がるのはセンターの正統派美少女、愛され平民のルーリィだ。
 ルーリィの推し色である青で染め上げられルーリィのソロパートが始まる。そしてそれが終われば次々に色を変え、歌の流れによってカラフルに変えられていく。

 そんな舞台上で輝くメンバーを、ひ弱に見えるがとても頑丈なマネージャー兼プロデューサー兼何でも屋のリコリは舞台袖、ではなく、客席から見つめていた。

「尊い……」

 と、涙を流しながら。

 そして曲転換。リーダーであるメロルが声を張り上げた。

「ラストの曲ですわ。皆様準備は良くて? 行きますわよ、盛り上げなさい!!」

 その言葉をきっかけにラストの曲へと入る。
 客席では増えつつある、そしてリコリ主導で出来上がったファンクラブメンバーとリコリが視線を合わせて頷き合う。
 そして曲の合間、間奏のとき。

「清楚な微笑み、癒しの微笑み、おーれーのラナ!」
「超絶可愛い! 皆の妹、可愛い妹、パル!」
「麗し女王、素敵な素敵なお姉様、メ、ロ、ル、サ、マ!」

 流れるように間奏に順番に聞こえてくる客席からの合いの手。そしてやっぱり一際大きいのは。

「好き好き大好き、世界で一番愛してるー! 俺達のお姫様、ルーリィ!」

 その声に笑顔を見せ、踊りの合間に手を振るルーリィ。さすがアイドル。さすがセンター。

 そしてリコリは合いの手だけではなく他にも頑張ってきた。それもこれも広さのある舞台でライブができるようになったからであるが、いつかはぜひともやりたかった。
 そのためにわざわざ客席を計算し席の配置をして、ある程度のスペース、ライブを見るのに邪魔にならない位置を作り、オタ芸をマスターしたお客さんを配置した。

 元は過疎の進んだ村とも呼べないような場所から始まり、お客さんがいないことすら最初はあった。
 それが今はどうだろうか。

 こうしてステージに向かい合いの手が入り、オタ芸を披露してくれる熱烈なファン。そしてそれができるだけの広さがある舞台でおこなえるライブ。
 確かにリコリは奮闘した。アイドル『シンデレラ』のため。

 会報誌を作りファンの心得を伝え、ファンクラブの発足や根回し。ライブ前には盛り上げるために前説のようなこともしてきた。
 そして今となってファンもアイドルグループ『シンデレラ』のファンであることに喜び、自信を持ち、共にこの一体感を感じ生み出している。

 そしてライブが終わり『シンデレラ』のメンバーが舞台から姿を消して行く。それと同時に静寂が一度訪れ、その後に騒めくように興奮した声がどこかしらから聞こえてくる。

「パルちゃん可愛すぎ、やべえ、俺の嫁!」

 と、剣士風の男が言えば。

「ラナさんの三つ編みは天界の三つ編み。ラナさんにホーリーされたい。もう存在が癒し」

 細身の事務仕事風な男性がうっとりと言う。

「メロメロ、メロル様に罵倒されたい!」

 太めのでっぷりとした商人風の男が言えば、割り込んできたルーリィとお揃いのボブカットの冒険者の装いをした女性。

「あら、センター中のセンターのルーリィが1番よ! 愛くるしさ、MCの愛嬌マジ最推し!! 至高のアイドル」

 知らない者同士のはずなのに知らず討論となり、カッ、と視線を合わせる。

「「「「シンデレラ最の高!!」」」」

 テンション最高潮に自然と声を重ね、そのまま連れ立って酒場に行くことにしたようだ。
 気持ちは分かる。推しを愛する者は友である。どんなグッズを買ったか、どんなグッズを持っているか、などの声が離れながら聞こえてきた。

 そんな一部始終を見ていたリコリは愛ゆえに繋がる絆とファンの有難みに浸ってしまう。
 だから近づく影に気づかなかった。

「あのー、リコリたんですか?」
「ん? リコリではありますが……?」

 声をかけてきたのはエルフの少女と人間の少女。
 リコリは『たん』付けで呼ばれたことに首を傾げたが、すぐに驚きから身を引いてしまう。

「キャー! あのリコリたん!! マジで可愛いよね!?」
「ってか、肌綺麗すぎない!? 同じ生き物に思えない!!」

 二人の少女に押されるように呆気にとられたが、どうやらメンバーに混じってリコリも練習することや、会報誌やMCでメンバー達がリコリのことをメンバーとして扱う発言をするためにリコリのことも気になっていたんだろう。リコリ自身、実際にライブ前の前説や振り付けの説明などでステージ上に立つこともあったのだから。

 なかなか勢いのあるファンである。メンバーの皆に傭兵こと警備員を付けてて良かったと安堵した。
 しかしそうして少女たちが興奮して騒いでいると、徐々に他にも人が集まってきて困る。

「リコリたんだとっ!」
「リコリたん、可愛いぃー!!」
「マジ、天使過ぎてしんどい。握手して下さいぃぃい」
「リコリたんはいつから正規メンバー活動なんですか?」

 矢継ぎ早に問われながらファンサービスまで求められると困ってしまう。戸惑いどうしようかと思っていたら天使が現れた。

「ちょっとぉ! パルよりリコリの方が良いの?」

 ちらりとリコリにアイコンタクトを向け、助けに来てくれたはずのパルは少しいじけたように、それでもあざとく上目遣いでファンを煽り、ニコッと可愛い笑みに変える。

「キャラ被りなんてパルに言うファンは嫌いになっちゃうよぉ?」

 あざと毒吐き可愛いぃ、と若干聞こえてくる気がするけど無視無視。この状態をどうしようかと思っていたら本当の天使がやってきた。

「パルちゃん、今日の反省会忘れてますよ?」

 天使じゃなくて聖女だった。少しおっとりと優しく言うラナ。

「ラナさん厳しめー。リコリが囲まれてるから来たのにー」

 ぷー、っと擬音が付きそうに膨れるパルにラナは微笑む。その後ろからメロルまでやってきた。

「リコリはいつまで愚民に囲まれてますの?」
「メロル様は言い方キツイですよぉ」

 メロルの後にぼそりと呟くラナ。メロルは聞こえてるのかいないのか、特に気にした様子はなかった。
 けれどもこの状態は頂けない。すでにシンデレラのメンバー3人が集まってしまってる状態だ。マネージャーとして由々しき事態である。
 どうやってファンを落ち着かせ、この3人を無事に裏に戻すか考えていると明るく溌剌とした声が響く。

「もー! 皆楽しそうなのに私呼ばれてないし!!」

 泣いちゃうよー、とふざけながらルーリィご登場。その姿にファンのボルテージは上がっていく。

「来たーーーー! センターーーーー!!」
「えっ!? メンバー前揃い!??」
「ヤバい!! 神5キタ!!」
「リコリたんまで揃ってるっ! 真面目にヤバっ!」

 ざわつく客席にボルテージが上がっていくファン達。さすがにその状況にリコリだけではなくメンバーも焦っていく。

 ここに居るファン皆がアイドルのシンデレラを推してくれている。人も人種も関係なく応援してくれている。
 それは嬉しいが、今の人垣は危なすぎる。ライブ終了後のテンションも相まってボルテージは上がっていく一方だし、王都の近くということは古参ファン以外の一般人気も上がってきており、この会場にも様々な人が来ている。
 それこそまだファンの心得全てを理解していない人も。

 リコリはすぐに服に隠していた笛を吹いた。
 それは人には嫌な音に聞こえる救援用の笛だ。何かあったとき用に準備し皆にも渡している物だ。

 笛の音が響き渡ればそこに集まっていた人達が身悶える。そして音を聞きつけやって来た雇いの警備員達に指示を出し、仲間を連れてその場から逃げ出した。

 打ち上げ予定の宿屋に逃げ込めばメンバー皆で息を荒くし、ついその視線を合わせては珍しくラナが小さくではあるが声を上げ笑い口を開く。

「す、凄かったですね、皆さん」
「ですわよね、本当に凄かったですわ。皆さんにわたくしも驚きましたわ」
「パルはわりと嬉しかったよ?」
「本当? あんなに囲まれて怖くなかったのパルちゃん? 私、ほんとっにびっくりしたんだから」

 さすがのルーリィもパルの発言に驚き、その顔を凝視するがパルは笑っていた。
 パルは笑顔のまま皆の顔を見渡し、にこりととても嬉しそうに口を開く。

「だってパル達凄くない!? こんなに人気出てるってことだよ。最初なんて全然お客さん来なくて1人のお爺ちゃんの時だってあったし、そこからも3人とかもあったし」

 その言葉にどこか懐かしそうに、それでも緩む口端を上げルーリィが呟く。

「確かに」
「一時は泣いたもんねー。人気や知名度、何よりアイドルの概念の無さ無さ具合に」
「……ですよね。今では信じられないぐらいのファンの皆様や出来事ばかり」
「ま、まあ、わたくし達が人気がで、で、出るのは当たり前ですわっ!」

 メロルが腕を組み顔を反らしながらツーンと高圧的に言うが、所々噛み噛みで、その上少し頬が赤らんでいるのが見えてつい小さく笑ってしまった。
 皆の表情からも、言葉からも、アイドルグループとして充実し喜び、誇りがあることが見えてリコリの顔も自然と笑う。
 そしていつも、いつでも、毎日だって思っていることを口にする。

「私は最初から信じてたよ! きっと強く大きくなって、沢山のファン達ができるアイドル、私達のシンデレラを!!」

 出会った頃から、リコリの中では皆に出会う前から何度も何度も言う同じ台詞。瞳を輝かせ満面の笑みで言い切る揺るぎないリコリの姿についフッ、と小さな笑う声が響き、それは全員での大きな笑い声へと変わる。
 そのまま次々と出てくる思い出話。
 メンバーの過去のトラブルや人気の無さ。振り付けに困って皆で頭を抱えたこと。時にはライブにユニコーンが来て客席をどうしたら良いのか訳が分からなかったこと。

 メンバー皆、様々な過去を背負いながらアイドルとなる事を決心し、アイドルと言うものをリコリに教えてもらい強く気高くなった。その志はまだまだ上を向いている。

 笑い声は絶えない。ああだった、こうだった、この時は。そんな話が次々と出てくる。
 自分たちの宿屋には魔道具の音遮断を最近は当たり前のように置けている。そのおかげでいくら盛り上がっても問題はない。そのことにもリコリは嬉しくて笑ってしまう。

 今の人気と過去の惨めさ。それが今は笑い話になって今日は王都近くの大ホールを貸し切りにすることができた。
 その舞台の大きさに皆々が大興奮して今日のライブの話にも移っていくく。
 その表情が嬉しそうで、楽しそうで、やっと報われたような実感を感じつつ、いつものメンバーの素のお喋りに自分たちのファン達を有難く思い、噛み締めては皆で幸せな寝息を漏らした。

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