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21.星を纏う猫たちと白き魔王の伝説 (後編)
しおりを挟む翌朝。旅立ちの準備を終え、広場で待つネロたちのもとに、マヌルが現れる。
そのすぐ後ろから、もう一人、全く同じ姿の少女が歩いてきた。
「ええっ!?双子だったの!?」
メリィが目を見開く。
「ふふっ。驚きました?姉のメルルです」
「妹のマヌルですよっ!!」
「凄い…!!見た目も声も一緒!」
にこにこする双子に、ワノツキは首を傾げて言った。
「ちょっと待て。じゃあ昨日、宿屋で話してたのはどっちだ?」
「「ふふ、どちらでしょう~?」」
マヌルとメルルが声を揃えていたずらっぽく笑う。
「んん??……うーむ……!」
頭を抱えて悩むワノツキの周りを双子がくるくるとまわる。
その隣でタカチホが指を立てる。
「宿屋にいたのはマヌルさん。長老様のところまで案内してくださったのはメルルさんでしょう?」
双子が同時に「「すごーい!!」」と声を上げ、目を輝かせる。
「なんでわかったの!?」「こんなに早く気付かれたの、初めて!」
とタカチホにずいずい寄っていく。
タカチホは、くすりと笑って双子の耳を交互に指差す。
「こちらが丸くて、そちらが三角……耳の先、ほんの少しだけ違いますよねェ」
「観察力が高いですね~!」
「おおー!!さすがです!」
双子は感心しきりに拍手を送る。
「それでね」と、マヌルが話を続ける。
「長老さまの占いで、マヌルとメルルはあなたたちと一緒に行くように言われたの」
「マヌルたちがいれば、星の流れで禁域に入れる時期もわかるし」
「戦う事だって出来ます!」
「「足手まといにはなりませんよっ!」」
メルルとマヌルが声を揃えるように言った。
メリィはにこっと笑って、「女の子の仲間が増えるのは嬉しいなぁ」と歓迎モード。
「これからよろしくね!」
「よろしくお願いします、メリィ姉さまっ!」
「姉さまっ!」
その横でタカチホがにこやかに腕を広げる。
「いや~一気に大所帯となりましたねェ~! んふふ、小生、華やかさ増し増しのこの雰囲気も好きですよォ~」
ネロは一同を見渡して小さく笑みを浮かべた。
「じゃあ……そろそろ行こうか。次の街へ」
その夜、焚き火のそばで──
野営の準備も終え、夕食を食べた後、星を見上げながらワノツキがふと呟いた。
「フィズ、元気にやってるかなぁ……」
風が草を揺らし、火の粉が空へと舞う。
同じころ──蛇族の街・ツヅリ
――夢見の館・地下研究室
鈍い機械音が響き、冷たいガラスのカプセルが並ぶ研究室。
「ははっ……興味深い反応だ」
白衣の男――ボア教授が、分厚いカルテに目を走らせながら、笑った。
「シュヴァル様、あなたが彼らをここに導いてくれたおかげで――」
教授はカルテから顔を上げて微笑む。
「貴重なサンプルを二つと……良い実験体《モルモット》が一つ、手に入りましたよ」
「人造魔人化計画……ね」
暗がりからゆっくりと歩いてきた男――シュヴァルが机に置かれていた資料を手に取る。
「悪夢が怪物を生む時代は、終わりを迎える……か」
ボア教授は目を輝かせ、語る。
「そうです。怪物を”制御”し、魔人という神の力を再現する。
この研究が成功すれば、この世から悲劇が消えるんですよ!」
「ふうん……君も大概、狂ってるね」
シュヴァルが目を向けた先。
ガラスの中で静かに眠るフィズの姿。
薄く呼吸するその胸元で、赤色をした夢の結晶が淡く輝きを放っていた――。
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