夢守りのメリィ

どら。

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23.リゾートの風と、新しい一日(前編)

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カラッと晴れた空の下、真っ青な海が広がる。
白い砂浜に、三角屋根が並ぶ美しい街──海獣族が暮らす港町「ティレルナ」。

「うわあっ! 海だー!!」
両手を上げ、砂浜へ駆け出すメリィ。
潮の香りを含んだ風が、彼女の髪をさらさらと揺らす。

「ここって、美味しい海産物と綺麗なビーチが有名らしいですよ!メリィ姉さま!」
「泳ぎに行きましょう、姉さまっ!」
両脇から手を掴む双子、マヌルとメルル。目をキラキラさせながら、勢いよくメリィを引っ張る。

「遊びに行ってもいいかなぁ…?」
視線でネロに問うようにするメリィ。ネロは思わず苦笑い。

「ずっと歩いて来たんだ。休暇も必要だろ?」
「まずは宿を取って、荷物を置いてからな」

「「やったーっ!」」

タカチホは浜辺を眺めながら、うーん…と首をかしげる。

「しかし、有名な観光地にしては人が少ないですねェ?」

「魚介類、楽しみにしてたんだけどな。なんか、活気がねえっていうか……」
ワノツキがつぶやくように言う。

「季節的なもんじゃないか?」
ネロの言葉に、なんとなくみんな納得しつつも、どこか釈然としない表情を浮かべる。

 

―宿屋「カモメ亭」・午後―

宿屋に着いた一行は、それぞれの部屋へ荷物を運び込んでいた。
メリィとネロの部屋に、控えめなノック音が響く。

「どうぞ~!」

バタン!

「姉さまーっ!!」

勢いよく飛び込んできたのはマヌルとメルル。メリィに抱きつく双子に、ネロが少しだけ苦い顔をする。
……とはいえ同性だし、と何も言えずに目をそらす。

「ねえ姉さま!下のお店でいろんな水着が販売されてるんですって!」
「マヌル達と見に行きましょうよぉー!!」

「わっ、わかった、わかったってば!」

二人に両腕を引かれながら部屋を出ていくメリィ。
その背中を見送り、ふと部屋が広く感じたネロは、ぼんやりと窓の外を見つめる。

「おや? おやおや~?」

突然窓からひょっこりと逆さまに顔を出してきたのは、タカチホ。

「ネロ氏、何やら複雑なご表情~。……んふふ、わかりますヨ! そのお気持ち!」
窓から部屋へ入ると、ずいずいと近寄ってくるタカチホに、ネロは無言で後ずさる。

「では! 小生達も行きましょうか、水着選びにっ!」

「……遠慮しておく」

「ダメです~!青春イベントは全員参加が基本ですからネ~!!」

部屋の入り口でその様子を見ていたワノツキが、ジト目で呟く。

「普通に誘えばいいのになぁ……」

 

―水着ショップ「しぶき屋」・店内―

店内では双子があれこれと水着を手に取り、大はしゃぎしていた。

「これ!この柄可愛いです姉さま!」
「えっと、これはちょっと派手すぎるかな……」

「じゃあ、こっちのは?姉さまに似合いそうですよ!」

「えぇ~!? わ、ちょっと待っ……それはさすがに恥ずかしいかもぉ~~!」

試着室の中から、あたふたとしたメリィの声が漏れてくる。
一方、男性陣は既に着替え終え、店の奥でくつろいでいた。

「ワノツキ、あんたのその腹筋や上腕二頭筋、やっぱすごいな」

「ふふん、まぁ日課だからな。毎晩トレーニングしてる。お前もどうだ?ワノツキブートキャンプでトレーニングでも!」

「いいえ、結構です!小生干からびてしまいます!!」
肩を掴まれたタカチホはぶんぶんと頭を振りながら自分の細い腕を抱え込む。

試着室の外に出てきた双子の姿を見て、ネロが声をかけた。

「二人とも、可愛いの選んだな」
「えへへっ!」
「これはメリィ姉さまに選んでもらったんですよ♪」

マヌルは星柄、メルルは月柄のホルターネックタイプの水着。柄違いのお揃いに、満足げな笑顔が輝いている。

「──エッ、そこに、ネロがいるの!? 聞いてない!!」
試着室から慌てた声が飛ぶ。

「メリィ、もう決まったのか?」

「う、うーん……まだちょっと……」

ひょい、とマヌルがカーテンの隙間から中を覗くと、

「……わぁっ! すっごく似合ってますっ!!」

ぴょこ!とメルルも覗く。

「わぁ…!姉さま!素敵です!!」

ぱっ!と勢いよくカーテンを開ける双子。
「ひゃあっ!?ちょっ、やめてー!!」と悲鳴を上げるメリィ。

現れたのは、レース仕立てのオフショルダー型水着を着たメリィ。
過度な露出はないものの、そのふわふわとした雰囲気と可愛らしさが際立っていた。

「どうです!? メリィ姉さま、すごく可愛いですよねーっ!?」

ニヨニヨと笑いながらネロに詰め寄る双子。
ネロは視線を逸らし、口元を抑えてポツリ。

「……ああ、いいんじゃないか」

耳を赤らめ、逃げるようにワノツキとタカチホの方へ行った。

「あっ!逃げました!」
「してったりですね、マヌル!」

ご満悦な双子に、肩をすくめたワノツキが一言。

「はしゃぎすぎだっての……」

──楽しい時間は、もう少しだけ続く。
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