夢守りのメリィ

どら。

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46.火、爆ぜる街(後編)

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朝――。
一行は宿の食堂に顔を揃えていた。

「……おやおやおや~? メリィさん、その目……」
最初に気付いたのはタカチホだった。

「随分泣かれたようで? ふむ……ま、まさか、昨晩ネロサンとメリィサンってば、小生達には言えないような……あんなことやこんなことを!?」
大袈裟に、大振りにタカチホは驚いてみせた。

「タ、タカチホさま!」
双子が慌てて手を振る。人差し指を唇に当てて「しーっ」と制止のポーズ。
「そういうのは……たとえ気付いてても……言わないものです!」

「ははは、何だお前ら。少しは進展したのか?」
からかうように続けるワノツキ。

ズメウはというと、無表情でパンをちぎりながら、じっとメリィたちを見ている。

「もう、みんな……からかわないでよ~」
メリィが困った顔でぷくっと頬をふくらませる。

そこへ、珍しくネロが乗ってきた。

「メリィ……昨日はあんなに長く――」
間を置いて、微笑む。
「オレの腕の中で“ないていた”のに」

アクセントが絶妙だった。

「「きゃーーっ!!」」
双子が顔を真っ赤にして顔を隠す。

「ふっ…くく…反則的な言い回しだな……」
ワノツキが喉の奥でくつくつと笑う。

「…ッ!!ネロのバカーーーー!!」
顔を真っ赤にして、メリィがネロの背中をべちんと叩く。
ネロは肩をすくめて「ははは」と笑う。

賑やかな空気の中、いつもの調子のメリィを見て、ネロが小さく呟く。

「……みんな、ありがとな」

その声に、タカチホもワノツキも、静かに微笑んで頷く。

その時だった。

じっと無表情で食事を続けていたズメウが、ふいに顔を上げる。

「……なんだ。二人は夜伽をしたのか?」

「「「「「ッ!?」」」」」

再び場が凍りつく。

「げほっげほっ……!は、はぁ……ッ!? お前……!!!」
ネロが飲んでいたコーヒーを吹き出し咽せ、顔を真っ赤にしている。

「アッハハハハハ!!! だ、だめです!小生のお腹が捩れ切れます!!!!」
タカチホはテーブルを叩きながら爆笑。

「ククッ……ズメウ…おまえってやつは、空気を砕く才能がマジでやべぇな……」
ワノツキも喉の奥を鳴らしながら苦笑。

「……違うのか?」
ズメウはきょとんとした顔で皆を見回す。

「ズメウさま、今のは……さすがに……」
「ストレートすぎます……!」
双子も小声でオロオロ。

食堂中が賑やかな笑いに包まれた。

***


朝食を終えた後、一行は預けていた武器を受け取りに鍛冶屋へと向かう。

「待ってたぜ」
屈強な鍛冶師が腕を組んで迎える。整えられた武器たちは新品のように鋭く光り、見違えるほどだ。

「うわ……すっご……」
「おお……」
思わず感嘆の声が漏れる。

「これで、もう少し長生きできるだろ」
鍛冶師が渋く笑う。
一同、深々と頭を下げ礼を述べた。

すると鍛冶師が少し声を低めて言った。

「一つ、頼みがあるんだが……」

「街の北に行ったところに洞窟があってな。そこでしか採れねぇ鉱石があるんだが……最近魔物が棲みついちまってよ。街の鉱夫が大怪我して帰ってきてよ、鉱石が掘れねぇ。退治してくれりゃ助かるんだが……」

「街の人たちに危害を加えるなら、魔物でも、怪物でも関係ないよね」
メリィが大鉈の柄に手をかける。

「試し切りにも……ちょうどいいかもな」
鋭くなった短剣を見ながらネロが微笑む。

「……洞窟、ですかァ……」
タカチホが意味深に目を細める。

「おい、洞窟っぽいとこ行く度に思い出さる気か?」
ワノツキが盛大にため息をつく。

その一言に、ズメウと双子が「?」と首を傾げる。

「何かあったんですか?」
「洞窟って……そんなに危ないんです?」

「あ~いや……まぁ、危ないには危ない…な」
ネロが歯切れ悪く返す。

「……だな。詳しくは言えねぇが……な」
ワノツキが軽く頭を掻く。

「え~気になります~!」
「教えてください~!」

「黙っとけ」
ネロが不機嫌そうに返すと、タカチホは愉快そうに肩をすくめた。

「ま、行くしかないわけですが」
タカチホが手をひらひらと振る。


「……今回は気を付けような、ネロ。またアイツのネタにされたんじゃたまったもんじゃねぇ」
ワノツキがぼそりとネロに言う。

「あぁ、そうだな。細心の注意をはらう」
ネロが小さく呟くが、その顔はほんのり赤い。

「?一体何の話だ……」
ズメウはまたもや首を傾げながら一行を眺めていた。

一行は賑やかに笑いながら、北の洞窟へと向かっていくのだった。
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