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123.娯楽の街③
しおりを挟む夜の帳が下り始めた頃、一行はふたたび服屋の扉をくぐった。
暫くすると、店の奥から――
「サイコーーーーー!!!!!」
店主の甲高い声が炸裂し、思わずネロが身構える。
「なんだ……!?」
「外まで響いてますネ……」
タカチホがやれやれと肩をすくめる横で、店の奥に立っていたズメウはというと、すでに完成した衣装に身を包んでいた。
「やっぱり私の目に狂いはなかったわ!!」
店主は目を輝かせ、シャッター音を響かせながらズメウの周囲をぐるぐると動き回っている。
フラッシュと共にカメラが瞬き、ズメウは渋面で呟いた。
「……もうよいか?」
「まだダメよ!」
店主はピシッと指を立てて言い切った。
「クール担当のあなたに併せて――そう、可愛い双子ちゃんを添えるのよ! ああ、こんな眼福なことあるかしら!!」
「お待たせしましたー!」
奥から現れた双子は、お揃いのAラインワンピース姿。
黒を基調にしたシンプルなドレスは、背中にかけて大きなリボンが飾られ、裏地の赤がちらりと覗くたびに少し大人びた気配を添えていた。
「わあ……可愛い!」
メリィが思わず頬を綻ばせる。
「ありがとうございます、姉さま!」
「ズメウさまの隣でも見劣りしてませんでしょうか?」
双子がズメウの隣へ立つと、店主がうっとりした表情で頷いた。
「完璧……もう一枚……ああ、もう一枚だけ撮らせて!」
その様子を椅子に座って眺めていたメリィに、店主がすかさず目を向ける。
「さあ、あなたもいらっしゃい!」
「え、え~~……わたしはいいよぉ……」
小さく笑い両手を振りながらも、メリィもドレス姿に着替えていた。
彼女が身に纏っていたのは、ホルダーネックタイプの黒いロングワンピース。肩が露わになり、首元には星の飾りが輝いている。
スカートの裾には銀糸で織られた星の刺繍がグラデーション状に広がり、まるで夜空をそのまま身に包んだかのようだった。
「……アナタ、着痩せするタイプね。これは活かさないと損よ」
採寸の際、胸元を測った店主にそう告げられたことを思い出し、メリィはちょっとだけ頬を染めぷるぷると首を振った。
そのとき――
「着替え、終わったぞ」
そう言って出てきたのは、ネロ、タカチホ、そしてシーダだった。
「わぁ……皆、かっこいいね!!」
メリィがぱっと顔を輝かせる。
ネロは黒地に金糸の刺繍が施された燕尾服。整えられた髪は金色のリボンで纏められ、涼やかな表情――旅人には見えないほどの堂々たる姿だった。
タカチホは紺色のチャンパオ姿。大きな龍の刺繍が裾を彩り、ゆとりのある袖がひらりと揺れていた。
「……小生としては……袖周りをもっと広くして欲しかったですねェ……」
こだわりを諦めきれない様子で袖口を引っぱる。
シーダは黒のタキシードを着ていたが、首元のリボンに不満げな表情だった。
「首が……苦しい……それに、リボンって、女の人のじゃないのか……?」
「ううん、すごく似合ってるよ、シーダ」
メリィが笑顔でそう言うと、シーダは小さく「……ほんとに?」と呟き、ぱっと顔を明るくした。
「うんうん! メンズもレディースも良いね! さすが私のチョイス!!」
店主は満足げに腕を組んだが、タカチホの服を見てふいに口を尖らせた。
「……まぁ、一名だけ思い通り着てくれなかった子もいるけどね!!」
「んー!さて、どなたの事でしょうネ!小生は目立たぬように……視線を避けておきましょう……」
そっと目を逸らすタカチホに、メリィはくすりと笑った。
「そうだ……ねぇ、あなた達!もしよかったら、集合写真、撮っていかない?」
店主がふと思い出したように提案する。
「いいですネ!」
タカチホが即答する。
「折角ですし、記念に一枚……いや、十枚くらい撮っていただきまショウ!」
そんなにとるの!?と言う店主のツッコミに一行は笑った。
写真機の前に一行が集まっていく。
そのとき、ネロがメリィの方を見た。
そして、ごく自然な仕草で腰を下げ――右手を差し出す。
「……お手をどうぞ、メリィ」
「……う、うん。ありがとう、ネロ」
ほんの少し恥ずかしそうに、でも嬉しそうに。
メリィはネロの手を取った。
シャッターが切られる。
夢を巡る旅の中で、とても普通な――だけど、かけがえのない瞬間。
仲間と共に過ごした証が、一枚の写真に残された。
それは、彼らにとって間違いなく――宝物となった。
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