ファンタジー・ロール・プレイング〜ゲームキャラクターで異世界を制覇します!〜

阿久津 ユウマ

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始まりの章

2話 初の◯◯

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 名も知らぬ森、枯れた大樹が閑散と聳える見慣れた風景、いつ終わるか分からないこの移動を俺はひたすらに歩き続けている。

 地面には枯れ葉が敷き詰められていて踏みしめる度に乾いた葉の割れる音が鳴り、風が通る度に枯れ木の枝が風鳴りを響かせていた。

 今日で4日目。散策を始めて何一つ変わる事のない風景に俺は辟易としていた。

 これだけ歩いても変わる事のない群生に最早、注意力と言う部分が大分削られ、これから出会うだろうモンスター……もしくは野生動物かもしれない獣達の格好の餌食とされているかもしれない。

 多少の魔法が使えようと、襲われるかもしれないと言う不安な感覚が楽に成る訳ではないのだ。俺は3回の野宿でそれを嫌という程味わってしまった。

 正直に言おう、俺は憔悴していると。

 幾らアイテムで寝袋があると言っても、どれだけ強力な結界を張るアイテムがあったとしても、安全な家屋セーフティーエリアが確立されていない環境で1人、一般市民が夜の森で生活するには過酷すぎた。

 しっかりとした月明かりで明るさを感じるとは言え闇の広がる夜の森で1人と言うのはかなり神経を擦り減らす、物音に敏感反応しそれを確認に出てしまうと、アイテムで結界を張っている寝床のエリアでさえ、戻ると確認せずにはいられない程、不安に苛まれる。

 そしてもう一つ気持ちの削がれる出来事があった。

 無限収納アイテムボックスに搭載されていたアイテムの中に神器ゴッド級の全装備が全て揃っていた事や、期間限定イベントで取り逃がしたアイテム等も入っており、廃プレイヤーとしては手に入らなかったアイテムが自然と備わっていると言うのは敗北にも似た感情が生まれてしまっていた。

 そういった事で足取りも重く、放心に近い状態でトボトボと森の中を歩いて行く。

 時計が無いので陽の高さと腹時計を目安にある程度の時間を計って食事はきっかり三食摂るようにしている。食料に不安はないし、何より食事だけでも満足に摂っておかないと精神的に参ってしまいそうになる。

 本日二度目の食事を摂り、そろそろ歩くかと準備を始めた頃に何かが聴こえた気がした。

 「——————っ!!」

 女性の声が聴こえた気がしたが周りを見回しても見飽きた360°の大パノラマ風景だけしか目に入らず、寂しさの余り幻聴を聴くようになっただけだと、思わず笑ってしまった。

 「————ぁぁ!!」

  次に聴こえたのは間違いなく女性の声だった。幻聴ではなくかなり遠くから聴こえる声に耳を澄まして方角を探し出す。

 「————……ろすぞっ!」

 続いて男の怒声がかなり鮮明に聴こえて方向が定まった、これから進もうとしていた方向で間違いがないようだがかなり切迫している状況なのかもしれない。

 無限収納アイテムボックスから馴染みの強い幻想ファンタジー級の短剣ハデスダガーを取り出して腰に差し込むと神滅の杖を掴んで急いで向かい出す。

 向かう先に聞き耳を立てながら進めて行くと男性と女性の2人分の声が聞こえてきていた、進めば進むほどその内容が鮮明になりどの様な状況下にあるかは到着前には理解できていた。

 「お願い!もう止めてください!アソコがもう痛いんです、ああっ!」

 「うるせぇ!逃げ出しやがってとっとと股開け、ぐちょぐちょになってる癖に嫌がんじゃねぇ!」

 レイプ現場であった。

 言語は問題無く聞こえるので意思の疎通に問題は無さそうで一安心だがどうにも胸糞が悪くなる状況に段々と苛立ちが立ち込めてきた。

 「ぐぅぅっ痛い、痛いぃぃ、もういや止めてぇぇぇ!」

 「へへ、嫌がる割には絞まるじゃねぇかよ。オラ!生きたけれゃ腰振れって言ってんだろ!」

 森の中で仰向けに組み伏せられている女性は泣きながら訴えていたが半裸の醜男は何も聞いてない様に自分勝手に腰を使って嬉しそうに顔を歪めていた。

 俺は心の中にグツグツと煮え滾るマグマが強く成れば成るほど暗く静かに心が沈んでいくのを感じ取り自然と表情が無になっていく。

 「いいぞ、そろそろだ!お前も待ちどうしいなぁ」

 「ぅぐっ、ぐぅ!もぅ……ぃや」

 男は終わりに向けてラストスパートをかけていて、女性は顔を背けて呻き声を堪えながら必死に耐えていた。俺はゆっくりと男の背後から近ずいて刀身が長めのハデスダガーで首を掻き切る様に一閃すると想像以上に軽い手応えで男の頭部は跳ね飛び、大量の血飛沫を女性に浴びせていた。

 「……どいて、どいて下さい」

 女性は浴びた血飛沫を男の種汁と勘違いしているらしく、行為の終わりを安堵しているだけであった。

 乱れた色の強い金髪を赤く染めて腕を畳んで小さく震えている女性に俺は後悔の念を強く感じていた。

 ——もう少し早く助けられていれば……。
 
 糸の切れた人形の様な男の死体を蹴り倒し、未だに目を閉じて耐えている女性に無限収納アイテムボックスから出した、ただの黒マントを掛けるとそこでようやく異変に気付く。

 血に染まったブロンドヘアーとマントで隠された裸体婦、よく見ればあちこちに痛々しい痣をこさえており。顔を背けて耐える仕草と裏腹に下品に開かされた下半身は普段なら劣情を催すだろうが今の俺には痛まさしさと憐憫の感情しか湧き出ず、それでも優しさよりも逃げ出したい罪悪感が勝ち、素っ気ない態度が強く出てしまった。

 全身が血塗れになっている事実に、急激な状況の変化に女性はショックから言葉という言葉が出ずに、泣き出しそうな呻き声でへたり込みながら俺に助けを乞う視線で見つめていた。

 「助けるから、安心してくれ」

 そう一言かけるだけで女性は泣崩れ、マントで全身を隠す様に蹲ってしまった。

呆けた表情のまま首だけになった醜男を見ながら初めて人を殺めた抵抗感の無さを実感しながらこの世界の事を考えていた。

 やはりゲーム世界では無く現実の世界と考えて問題はないだろう。——なぜこの世界に来たのか。この際この話は置いておくしかないだろう。この先どう生きるか、それを決めないとな。
 
 かける言葉も見つからず、落ち着くのを待っていたその時に、俺は背後から複数の足音が近づいてくるのが聞こえてきた。

 「連れ戻すのが遅せぇと思ったらこんな事になってるとはな。おい兄ちゃん、痛い目に遭いたく無かったらとっととズラかんな」

 野盗と思しき身なりの悪い男達が抜き身の剣を片手にゆっくりと歩いてきていた。

 ——7人か……。

 俺は人数を確認すると初のリアル対人戦を意識して若干の緊張を感じたものの迷う事無く魔法を発動させた。

拡大呪文ワイドスペル魔法の矢マジックアロー

 左手の杖を薙ぎ払う様に一振りすると複雑な文様が描かれた魔法陣が7つ浮かび上がり、魔法の矢マジックアローが発動して野盗達の身体を貫いていた。

 貫通力のある魔法の矢マジックアローは体に当たれば穴を開け、頭部に当たれば首から上が無くなり、腕で防げば腕ごと貫いていた。

 一瞬の出来事で終わってしまった。出会って1分も経たずに多くの人の命を潰えさせた。

 最初に感じた抵抗感になんの変化がない事を俺は自分の手を見つめながら冷静に分析をしてゆっくりと生き残りの野盗の下へ歩いて行った。

 「いてぇ!ぐあぁっ、なんなんだこりゃ!」

右足の付け根から下の部分が吹き飛んでいる男の横に着くと自分でも驚くくらい冷淡な声で冷たく言い放っていた。

 「なぁ、お前らアジトとかあるのか?他に仲間は?」

  「ひぃぃっ、た、助けてくれ!

 そうだ、確かに俺はコイツらに何もされていない。実害と言えるものは何一つないが。

 ——だがコイツらがやっていた事を想像するだけで非常に不快になっているのだ。それは恐らくとても重要なことになるんじゃないか?

 かなり理不尽な結論だと自分でも笑える考えを、自分の内情を冷静に見つめていたが男の哀願を蹴り一つだけで応える位には苛立っていたらしい。

 「おい。答えろよ、じゃなきゃもうちょい削るぞ?」

 「ゲホッゲホッ。ひぃっ!ア、アジトは……」

 答えようとした野盗は一瞬の間に言い淀む。恐らく生き残る為にどうするのが1番なのか今を必死に考えているんだろう。

 ほんの一時。唾を飲み込む程度の時間の沈黙に軽く溜息を覚えた時に後ろから声がかかった。

 「向こうの方角に小屋があります、男達はこれで全部ですがもう1人囚われてる人が……」

 振り返れば先程まで泣き崩れていた女性が強い眼差しで俺を見ながら小屋の在り処を指し示しながら訴えかけてきた。確実にコイツらは許せないのだろう、勿論だ。許す道理は何もないのだろう。

 「テメェ!俺が言おうとしてた——ひぅっ!」

 女性の先答えに腹を立てた野盗が喚こうとしたが、睨みをきかせた視線をしっかりと、確実に殺意を込めて黙れと言わんばかりに目を見つめた。

  既に押し黙っている野盗に向かって人差し指で静かにする様にジェスチャーをしてやるとしっかりと口を噤んで何度も頷いて了解を示している。

 そんな従順を示す野盗の胸にゆっくりとハデスダガーを刺し込んでいく。野盗は血のあぶくを漏らしながらも黙ったまま静かに死んでいった。

 ゆっくりと確実に俺は人を死に至らしめた。それでも心は揺るがずに落ち着いたままの姿にと実感した。
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