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第1章
11話 フロウローズ
しおりを挟む青い空の下、一つの太陽が強い日の光を放ちながら今日1日に恵みをもたらすと伝えてくれている様だったが俺の心は世界崩壊が起こり足元からガラガラと崩れ落ちる音が鳴り響いていた。
『私を地獄に墜としたのは夫です』
頭の中で鳴り響き何度も繰り返すフロウローズの言葉に俺は必死に動揺を隠ながら歩いていた。
(夫……つまり旦那……既婚者……って人妻だったんかーい!)
「そ、そそそうなんだ……」
「私の家はお爺様の武功に寄って貴族位を与えられ陞爵も……しかし我が父は家督を継いですぐ戦で……。」
聞けばフロウローズの祖父は武名で名を馳せて騎士爵を貰いその後も戦争があれば必ず活躍を期待されそしてそれを裏切る事なく期待以上の戦果を挙げたそうだ。
『ドルーザ・ゴットバルドに掛かれば城の一つも容易く落ちる』と言われるほどの武人だったらしい。
そうして得た男爵家の跡継ぎがドワルゴ・ゴットバルド。フロウローズのお父上様。
祖父に似て武人寄りな方だったらしいが祖父ほどではなく、何度も戦に出てもそれほどの活躍には至らなかったそうで、焦ったドワルゴは15年前の戦争で無茶働きをして戦死。
既に一線を退いたドルーザが再び戦地へと赴く事になるのだが寄る年波には勝てず活躍も少なく深手を負って帰還、自分の老いを感じたドルーザはすぐさま息子の一人娘であるフロウローズの婿取りを考えたらしい。
当時11才だったフロウローズは傾国の美女の片鱗を既に見せており、それはそれは婚姻の申し込みが殺到していたらしいが、武人で名を挙げたドルーザにはどれも気に入らなかったらしく、男爵、子爵、伯爵家の嫡男でさえも断っていた。
そんな中にカースゥと言う冒険者が、アウレリア王国でも辺境の片田舎にあるドルーザの街にやってきたらしい。
武人気質なドルーザはその男に目をつけ、冒険者としてそこそこやっていたカースゥの力で評判の落ち込んだゴットバルド家の再建を目論んだらしい、御家を盛り上げるなら武力で、そういう話だ。
カースゥはフロウローズよりもドルーザに傾倒していて気に入られようと頑張っていたらしいが、婚姻を目前にしてまた戦争が始まりドルーザはお気に入りのカースゥを伴って戦地へ、そしてそれは悪い知らせで返ってくる。
ドルーザは戦死してその亡骸と共にカースゥが戻ってきたのだ。そしてその後のフロウローズの生活は一変し、祖父の葬儀より先に婚姻を進められそのまま結婚する形になり葬儀はカースゥが主導の下、男爵家の当主に成り代わりゴットバルド家を乗っ取ってしまった。
まだ歳若いフロウローズは抵抗するも何も出来ず、そのままレイプ紛いの性交を繰り返され、抵抗の気力が無くなると今度は交渉の道具に使われる様になった。
やれ褒美だ。やれ融通しろ。やれ親交だと事あるごとにフロウローズは場の余興替わりとして領民、商人、騎士、他家貴族達に良い様に凌辱されていったらしい。
淡々と話すフロウローズを抱きしめながら俺は無言で話を聞き、一言一句取りこぼさない様に集中していた。
しかしフロウローズの不幸はこれでもまだ始まったばかりだった。
地獄が始まった翌年に子供が出来たらしい。
既に誰の子かも分からない状況でもあり悩むフロウローズだったがすぐにカースゥにその事が知られて更なる道具として酷使される様になった。
それでも懸命に耐えたフロウローズは無事に女の子を出産するものの赤子は修道院に預けられ、更にその後もう一人、娘を授かったらしいがその子はカースゥが突然言い出した教育するのだと屋敷に置く事になった。
その後も地獄の様な日々は続き、2年前に事件が起こった。
アウレリア王国で現国王が就任し、大改革が起こされたのだという。
政治体制が変更され淘汰されていく貴族達が多い中、カースゥは今までの種蒔きのお陰かなんとかゴットバルド家を維持、運営する事ができたのだが問題はそこではなく、修道院に預けていた長女が戻ってきたのだ。
傾国の美女であるフロウローズの血を継いだ長女もまた美しく、気に入ったカースゥはそのまま戻ってきた長女をフロウローズの代わりにする算段をつけた。
当然不要となったフロウローズの扱いは更に悪くなり、拷問紛いのプレイはドンドンと加速していく。
そうしてあんな状態にまで追い込まれたフロウローズは使えなくなるまで酷使され廃棄されたのだと語った。
「私…あれだけの事をされながら男性の方と唇を合わせた記憶がありませんでした……あるのは掃除と称してしゃぶらせれた一物と
……その、後ろの穴も、それにその排泄物だって……」
「もういい、やめろ」
「すみません、ご不快な思いを……」
謝られたが悪いのはフロウローズではない。そんな事はよく分かっているはずなのにどうしても冷たい言葉になってしまった俺は今すぐにでも自分を殴ってやりたい。
しかし今はフロウローズを両手に抱えてそれは出来ない、この心地良い重みを感じる事がどれほど安心を得られたことか。
麻袋の状態で抱えた時は怖さや不安が付きまとった。当然だ。男達の会話から予想をしたのにその予想よりも断然に麻袋は軽かったのだ。そして開いてみればあの状態。
正直言って少しトラウマになりかけた。
しかし今抱き上げているフロウローズにそんな不安を感じさせる要素は一切ない、それに心地良い上に甘い香りがそれに拍車をかける。
そう、フロウローズはあの不安を感じる状態ではないのだ、身体は処女に戻るまで治療したし解呪もした。透き通る様な青い瞳で不安そうにこちらを伺うその顔も、見てしまえば俺は自然と表情が緩むほど俺は惚れ込んでいる。
問題ない、既婚者であっても子供がいると知れてもこれは変わらないのだ。
「フロウローズ、俺は君に言ったはずだ。復活おめでとうとな」
「……はい」
「つまりその前の事は忘却してしまっても構わないということだ、つまらん男が現れた事など無かったかの様にな」
「それは……」
「もちろんすぐに出来ないことは分かっている。だがそうさせて見せよう、お前は信じるか?」
「信じ……信じさせてくれるのですか?」
「無論だ、そして俺はお前が望む限り側にいよう」
「はいっ!……はい!望みます!私は貴方にずっと居て欲しい!ずっとっ、ずっと!」
俺は抱きしめてくるフロウローズの頭を撫でながらこれで良いと内容をしっかりと反芻していた。
思いもよらず自然と口が動いてしまったが構わない内容だった。フロウローズを黒く染め上げる要因は全て排除すれば良いのだと短絡的に決断を下した。
短絡的過ぎたせいか思わず鼻で笑ってしまったが腕の中にいるフロウローズにはそれがとても好意的に取られたのか、またもや頬に手を添えられて次は情熱的なキスをしてきた。
息使いも声も遠慮しないとても情熱的な激しいディープキスだった。
何度も吸い付かれ、口の中に蕩けるような熱い舌が差し込まれてくる。俺もお返しとばかりに吸い付き舌を絡めて唇を押し付けていく。
甘い声に温かい吐息も、交わる唾液も、涙目で縋る眼差しも全てが首筋から脳にかけて電撃のような快感を与えてくれる。
「私…とっても幸せです、震えるほど」
腕の中でしっかりと寄り添うフロウローズの言葉は俺の背中を後押ししてくれてるように感じた。
「俺もだ」
フロウローズに聞こえないように口の中で呟いた。
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