転生でゆるく生活したい

ぱゆり

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兄さん、遠くに行ってしまったんだね。

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兄さんの声が聞こえる。といっても話しているのを聞いているだけだが。
「・・・では、お願いします。言った通り全力で!」
そう言って兄さんは構えた。兄さんが持っているのは大剣。兄さんの背より少し大きいので、兄さんは普段持つ時苦労すると言っていた。
「全く、全力って言ったんだ。俺も命がけでやってやる。」
向かい合っている村長がそういいながら兄さんの剣よりは少し小さめの剣を構える。二人は黙って向かい合ったまま動こうとしない。
風が強く吹いた瞬間に村長が距離を詰めた。ヒュっヒュンそんな風を切る音のあと。
ギィィィィンという音と剣を合わせて鍔迫り合いをしている二人がいた。
「やるように・・・なったじゃないか。最初で仕留めるつもりだったんだが。」
「あれに反応出来なかったら、論外ではないですか?・・・ふっ!」
いったん両者が距離を置き、しかしそこに崩せそうな隙はなかった。
「たく。教えてないことまで勝手に覚えやがって魔力強化は教えた覚えはないが?」
「はい。大先生に教えていただきました。夫にはこれぐらいがちょうどいい、と言ってましたよ。」
「あいつろくなことしないな!?きついだけじゃないか!」
村長、悪口なんていったら奥さんに半殺しされかねんのでは。まあ、南無南無~。
あっ、動いた。
ヒュン!シャン!ブオン!ガッ!ドガガガガガガガガガガッ!ドン!
村長が一瞬で近づき剣を刺突、それを兄さんが大剣でいなして振り下ろす。そして村長は剣を離していて避ける、大剣は地面に突き刺さり、そこに村長が殴りかかる。兄さんは大剣が刺さったのを利用して蹴りを繰り出す。兄さんはそこから素早く体勢を整える、空中で。村長がそこに打撃を入れようと試みるが器用に避けられ、着地した時格闘戦が始まった。
「はっ!」
「・・・っ!」
互いの拳が衝突する。しかし、兄さんの拳が先に砕けた。そして、村長の拳が兄さんの顎を捉えた。
ゴゴン!!
そんな音と共に両者は倒れた。
「くはっ!・・・ごふっ!ソル、・・・やりやがったな。これ、明日までに、治るか?・・・・・・くそっ、微妙だな。」
「・・・・・・余裕、・・・そう・・・・・ですね。」
「こんなもん慣れだ、慣れ。」
慣れでなんとかなってる時点で化け物に近いですよ村長。
「おい、立てそう、あ~・・・気を失ったか。うっ!・・・・・・。」
やべーよ!!どっちも気絶しちゃったよ!!とりあえず治療しないと、うってつけの魔法もあるし黒歴史に感謝だな、これは。
「構造解析」
新しく作ったばかりなので熟練出来てないが、体の今と元の形ぐらいなら分かる。
「生きてるのがどっちもすごいと思う。治癒」
元の形を参考にしてそれに近しく直していく。完全に元の形にしないのは直し過ぎは成長の阻害をする可能性があるからだ。破壊と創造と修復は計画的に。
「応急処置はこんな感じであとは持って行くだけ。」
やっぱり無理があるし、二人に負担がかかって骨がずれないようにしないと。
「重力軽減」
したいことを言葉で口にすると少し魔力消費が抑えられる。少しが重要なんだよ。
ソル兄さんを背負ってその上に軽くしたとはいえ村長を乗せている僕。
ソル兄さん、大丈夫かなぁ?急がないと。
あっ!あとちなみに大先生は村長の奥さんです。先生は学者っぽい人です。
しかし兄さんよくあのカウンター決めたな、真似は出来んね。
てかなんで村長、剣を放したんだろ?引き戻して防御でも何でも出来た気がするけど。
まあ今は村長の家に行かなきゃな。





村長の家


「・・・・・・ここは、家か。」
目覚めると俺は寝かされていた。起き上がると顔が痛む。
「いでっ!・・・そういや、あいつに負けたんだっけな。」
「痛むのはあなたが本気でやらなかった。つまりあの子のことを甘く見過ぎていたからでしょう。全力でやってくれって言われたのに。」
いつ来たのか、嫁のベリルが説教してきた。無理がある。
全力でやってたら勝負にもならずに殺してしまっていた。
「冗談はやめてくれ。今のあいつらと今の俺の全力じゃペガサスが古龍に突っ込んで行くも同じだろ?本気でやったら致命傷になる、それぐらい分かってるだろ?これでも腕が落ちないように特訓してるんだぜ。色々やって忙しいお前は・・すまん、悪かった、だからその魔法絶対に打たないでくれ。」
「もう、これでも自重してやってるんだから。グラシャの腕がいいから大体の病気や怪我は治せるけど、あなたがやるなって言うから大きい怪我を治さないようにしてるのに。」
「分かってる。これは俺のわがままでやって貰ってるからな。」
人は、痛い目に遭っても懲りずに同じことをする奴が何人もいる。
幸いなことにグラシャは、よほど怪我が致命傷だったり、不治の病などは無理だが、それ以外なら治すことが出来るので、魔物などで怪我や病気になってしまった連中は、治して貰おうと訪ねて、治るとお礼を持っていき感謝するのが通例で、薬に使える薬草を聞き、取ってくる者もいた。
大体、無理って言いながら症状を軽くしてるからあいつにとっての治すって、完治だけっぽいから無理って言葉が結構出るんだよなー。分からん。
「それに、この村で静かに暮らす。その為には、目立つことはなるべくしない方がいい。」
「もう争いごとはたくさんだってこと?」
「いや、そう聞こえるのかわからないが、俺は、俺の仲間を、家族を守りたいだけだ。見ず知らずの人まで救うほどお人好しじゃない。」
「嘘言わない。お人好しでしょう、あなた。」
なんでかな、昔は事あるごとにそう言われるから分からない。
「お人好しではないだろう。」
「ごはん作っておいたから、早く食べに来なさいね。」
立ち上がりながら言ってくる。
「分かった。・・・急がないとな。」
すると、急にベリルがドアをくぐった所で立ち止まって。
「言い忘れてたけど、子供の成長なんてあっという間よ?というよりあなたがそれを一番痛感しているでしょうけど。私達に出来ることなんて、精々自分と同じ間違いをしないように注意しておくくらいしかないの。」
えー。それは極論な気が。
「・・・・・・それはなんとも俺としては、情け無いなー。」
そんなことを呟いて飯を食いに階段を下りた。相変わらず治りが早い体だな。もう痛くない。面倒なもんもらわなきゃ良かったと今でも思う。
でも言ってても仕方ないと考えるのをやめた。
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