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第一章 魔王 サタナ・エイリーン編
第7話 スキルの天才
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翌日の早朝。
まだ人がまばらな朝の冒険者ギルドにて。
俺はメアリさんに、スライムの件を話した。
本来、討伐されたモンスターが仲間を呼ぶことは無い。
ましてや、それを見ている他のモンスターが仲間を呼ぶこともない。
だが、俺の時だけは何故かそれが起きた。
そう説明すると。
メアリさんは、意外なことを口にした。
「もしかしたらレインさんのスキル【超威圧】が関係しているのかもしれませんね」
「え? 俺のスキルが?」
「はい。聞いた限りだと、レインさんのスキルは周囲のモンスターを怯えさせる効果があるらしいじゃないですか。もしレインさんのスキルが自動発動型だったなら、その不可思議な現象にも説明が付くと思うんですよ」
「言われてみれば、確かにって感じだな」
「ところでレインさん、自分のスキルが任意発動型かどうか、調べてみたことはありますか?」
俺は記憶を辿った。
なにせ冒険者になったのは二年も前のことだからな。
だが、やはりそのような鑑定を受けた記憶はなかった。
俺は素直に「分からない」と答えた。
「そうですか。……なにはともあれ、ですね。レインさんのことはなるべく騒ぎにならないように出来る限りのことはやってみます。もしも妙な噂が立った時には、剣聖を目指しているという体でいきましょう」
剣聖。
それはかつての勇者パーティに居たとされる伝説の存在。
おそらく俺の全寿命をかけて修行を続けても到達できない領域だ。
だが、言い訳としては悪くない。
少なくとも、
「スライムを斬り伏せるのが好きな異常者」と思われるよりかはよっぽどマシだし、騒ぎにもなりにくいだろう。
短期間で大幅にレベルが上昇した件も、
今はまだ知れ渡っていないしな。
「ありがとうメアリさん。じゃ、そういう手筈で」
「了解ですっ。ところで、今日も行かれるんですか? 【ボポンの森】へ」
「ああ。少しの危険もなくレベリングが出来るし、あそこに来るのは初心者の冒険者ばかりだからな。変人がいるとは思われても、ヴェン達にまで情報が回る可能性は低いだろう」
それに、塵も積もればなんとやら。
丸一日スライムを狩っていれば、
ある程度の宿泊費は稼げるのだ。
非効率的ではあるがな。
「かしこまりました。では迎えが来るまでお待ちください。御武運を!」
「ああ、行ってくるよ」
#
あれから三日が経過した。
そしてメアリさんと状況を整理していく内に、俺たちの間で疑惑は確信に変わった。
【超威圧】は常時発動型のスキルである、というのが二人で出した結論だった。
「でなければ説明が付きませんしね」
「それにしても驚きだな。まさか俺のスキルが任意発動型じゃなかっただなんて」
「まあ、そういうのは鑑定を受けないと分からないこともありますから。……むしろ驚いているのは私の方ですよ」
「それはどうして?」
「考えてもみてくださいよ。自動発動型のスキルというのはその意味の通り、自らの意志とは関係なく常時発動されるんですよ? しかし、レインさんの周囲にいる人間には少しの影響もない。ほら、私だって元気モリモリでピンピンしてます」
「ふむ」
「つまり、レインさんは自分でも知らない無意識の内に、スキルの強さをセーブしているんです。これは衝撃的です。任意発動型と違い、自動発動型のスキルはコントロール不可能と言われていますからね。それを成し遂げたのは、魔王討伐パーティに加入していた伝説の一人……大賢者・ファーミンだけだと言われています」
大賢者・ファーミンだって!?
「そんなに凄い事なのか? 大賢者・ファーミンっていったら知らない人はいないレベルの超偉人だろう?」
「ええ。レインさんがやっているのはそのレベルなんですよ。……まあ、私はそれ以上だと疑っていますがね」
俺は頭上に?マークを浮かべ首を傾げた。
あまりにも突拍子のない話だったので混乱していたのかもしれない。
「レインさん、これはあくまでも私の予想……いえ、妄想です。ですから違ったら「違う」と言って下さい」
一呼吸おいて、
メアリさんは俺に問いかけた。
「レインさんは、【超威圧】の強さを段階的に上昇させることが可能なのではないですか?」
#
メアリ・ルー。
彼女はマナクルス魔法学園を首席で卒業した後、三年間だけ教職に就いていた。
天才と呼ばれた自分の能力を活かし、
多くの才ある人間を導いていくこと。
それが使命なのだと信じて疑わなかった。
だが彼女の生徒の一人が、
卒業後に命を落とす。
SSS難度ダンジョンの中ボスにやられたのだ。
相対した時の推定レベルは50だが。
当時の生徒のレベルは、30台だった。
私のせいだ。
私が、あの子を甘やかしてしまったから。
確かにあの子は学園でもナンバー1の素質があった。
指導によっては私を超える才能があった。
だから私はあの子に問われた時、口にしてしまった。
「ねえメアリ先生。僕って強い?」
「ええ、強いですよ。その調子で精進しなさい。そうすればいつかは私をも超えるでしょう」
「えー、本当!? へへ、メアリ先生に褒められるなんて嬉しいなぁ。……先生、僕、将来は冒険者になろうと思うんだ」
「冒険者ですか。いいんじゃないですか? 君ほどの才能があれば十分な成果を出せるでしょう」
かくしてあの子は冒険者になった。
私に褒められたいから……というのは逃げですね。
本当は気付いていましたよ。
あの子の気持ちに。
あの子が私に惚れているということに私は気付いていた。
でも気付かないフリをした。
私が冒険者となったのは仇討のため。
その後のことは何も考えていませんでした。
仇討を果たした後、私は抜け殻になった。
生きる目標を失ったのです。
そんな時でした。
かつての旧友――。
現マナクルス魔法学園の学長から手紙を頂いたのは。
その結果、私は今ここにいる。
ここでこうして、多くの冒険者の安全を祈る日々を過ごすこと。
それがせめてもの贖罪になるのだと信じて。
#
三年という短い時間ではあるものの。
かつて、教師として過ごした日々が、メアリの審美眼を鍛えていた。
故に飛び出したのが今の質問だった。
メアリには予感があった。
きっとこのレインという少年は。
きっと、スキルの扱いにおいては天才なのだと。
「あー、確かにそうだな。今となっては後悔してるけど、【神の後光】にスカウトされた時の俺はがむしゃらだったからな。何としてでも役に立ちたい。何としてでも期待に応えたい。そう思った時、自分に何が出来るだろうか? って考えたんだよ。――俺に出来るのはスキル【超威圧】で貢献することだけだった。だからスキルを鍛えたんだ」
「そう、ですか」
……これは想像以上ですね。
ひょっとしたら彼ならば。
レインさんならば成し遂げられるかもしれませんね。
魔王・サタナの討伐を。
まだ人がまばらな朝の冒険者ギルドにて。
俺はメアリさんに、スライムの件を話した。
本来、討伐されたモンスターが仲間を呼ぶことは無い。
ましてや、それを見ている他のモンスターが仲間を呼ぶこともない。
だが、俺の時だけは何故かそれが起きた。
そう説明すると。
メアリさんは、意外なことを口にした。
「もしかしたらレインさんのスキル【超威圧】が関係しているのかもしれませんね」
「え? 俺のスキルが?」
「はい。聞いた限りだと、レインさんのスキルは周囲のモンスターを怯えさせる効果があるらしいじゃないですか。もしレインさんのスキルが自動発動型だったなら、その不可思議な現象にも説明が付くと思うんですよ」
「言われてみれば、確かにって感じだな」
「ところでレインさん、自分のスキルが任意発動型かどうか、調べてみたことはありますか?」
俺は記憶を辿った。
なにせ冒険者になったのは二年も前のことだからな。
だが、やはりそのような鑑定を受けた記憶はなかった。
俺は素直に「分からない」と答えた。
「そうですか。……なにはともあれ、ですね。レインさんのことはなるべく騒ぎにならないように出来る限りのことはやってみます。もしも妙な噂が立った時には、剣聖を目指しているという体でいきましょう」
剣聖。
それはかつての勇者パーティに居たとされる伝説の存在。
おそらく俺の全寿命をかけて修行を続けても到達できない領域だ。
だが、言い訳としては悪くない。
少なくとも、
「スライムを斬り伏せるのが好きな異常者」と思われるよりかはよっぽどマシだし、騒ぎにもなりにくいだろう。
短期間で大幅にレベルが上昇した件も、
今はまだ知れ渡っていないしな。
「ありがとうメアリさん。じゃ、そういう手筈で」
「了解ですっ。ところで、今日も行かれるんですか? 【ボポンの森】へ」
「ああ。少しの危険もなくレベリングが出来るし、あそこに来るのは初心者の冒険者ばかりだからな。変人がいるとは思われても、ヴェン達にまで情報が回る可能性は低いだろう」
それに、塵も積もればなんとやら。
丸一日スライムを狩っていれば、
ある程度の宿泊費は稼げるのだ。
非効率的ではあるがな。
「かしこまりました。では迎えが来るまでお待ちください。御武運を!」
「ああ、行ってくるよ」
#
あれから三日が経過した。
そしてメアリさんと状況を整理していく内に、俺たちの間で疑惑は確信に変わった。
【超威圧】は常時発動型のスキルである、というのが二人で出した結論だった。
「でなければ説明が付きませんしね」
「それにしても驚きだな。まさか俺のスキルが任意発動型じゃなかっただなんて」
「まあ、そういうのは鑑定を受けないと分からないこともありますから。……むしろ驚いているのは私の方ですよ」
「それはどうして?」
「考えてもみてくださいよ。自動発動型のスキルというのはその意味の通り、自らの意志とは関係なく常時発動されるんですよ? しかし、レインさんの周囲にいる人間には少しの影響もない。ほら、私だって元気モリモリでピンピンしてます」
「ふむ」
「つまり、レインさんは自分でも知らない無意識の内に、スキルの強さをセーブしているんです。これは衝撃的です。任意発動型と違い、自動発動型のスキルはコントロール不可能と言われていますからね。それを成し遂げたのは、魔王討伐パーティに加入していた伝説の一人……大賢者・ファーミンだけだと言われています」
大賢者・ファーミンだって!?
「そんなに凄い事なのか? 大賢者・ファーミンっていったら知らない人はいないレベルの超偉人だろう?」
「ええ。レインさんがやっているのはそのレベルなんですよ。……まあ、私はそれ以上だと疑っていますがね」
俺は頭上に?マークを浮かべ首を傾げた。
あまりにも突拍子のない話だったので混乱していたのかもしれない。
「レインさん、これはあくまでも私の予想……いえ、妄想です。ですから違ったら「違う」と言って下さい」
一呼吸おいて、
メアリさんは俺に問いかけた。
「レインさんは、【超威圧】の強さを段階的に上昇させることが可能なのではないですか?」
#
メアリ・ルー。
彼女はマナクルス魔法学園を首席で卒業した後、三年間だけ教職に就いていた。
天才と呼ばれた自分の能力を活かし、
多くの才ある人間を導いていくこと。
それが使命なのだと信じて疑わなかった。
だが彼女の生徒の一人が、
卒業後に命を落とす。
SSS難度ダンジョンの中ボスにやられたのだ。
相対した時の推定レベルは50だが。
当時の生徒のレベルは、30台だった。
私のせいだ。
私が、あの子を甘やかしてしまったから。
確かにあの子は学園でもナンバー1の素質があった。
指導によっては私を超える才能があった。
だから私はあの子に問われた時、口にしてしまった。
「ねえメアリ先生。僕って強い?」
「ええ、強いですよ。その調子で精進しなさい。そうすればいつかは私をも超えるでしょう」
「えー、本当!? へへ、メアリ先生に褒められるなんて嬉しいなぁ。……先生、僕、将来は冒険者になろうと思うんだ」
「冒険者ですか。いいんじゃないですか? 君ほどの才能があれば十分な成果を出せるでしょう」
かくしてあの子は冒険者になった。
私に褒められたいから……というのは逃げですね。
本当は気付いていましたよ。
あの子の気持ちに。
あの子が私に惚れているということに私は気付いていた。
でも気付かないフリをした。
私が冒険者となったのは仇討のため。
その後のことは何も考えていませんでした。
仇討を果たした後、私は抜け殻になった。
生きる目標を失ったのです。
そんな時でした。
かつての旧友――。
現マナクルス魔法学園の学長から手紙を頂いたのは。
その結果、私は今ここにいる。
ここでこうして、多くの冒険者の安全を祈る日々を過ごすこと。
それがせめてもの贖罪になるのだと信じて。
#
三年という短い時間ではあるものの。
かつて、教師として過ごした日々が、メアリの審美眼を鍛えていた。
故に飛び出したのが今の質問だった。
メアリには予感があった。
きっとこのレインという少年は。
きっと、スキルの扱いにおいては天才なのだと。
「あー、確かにそうだな。今となっては後悔してるけど、【神の後光】にスカウトされた時の俺はがむしゃらだったからな。何としてでも役に立ちたい。何としてでも期待に応えたい。そう思った時、自分に何が出来るだろうか? って考えたんだよ。――俺に出来るのはスキル【超威圧】で貢献することだけだった。だからスキルを鍛えたんだ」
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