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第一章 魔王 サタナ・エイリーン編
第12話 魔王 サタナ・エイリーン
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中ボスエリアを出て、
【玉座の間】へと続く一本道を歩く。
もちろん【超威圧】は全開。
俺はモンスターと出会うことなく、スムーズにボスエリアの手前にやってきた。
金縁の装飾が施された重厚な門扉。
その奥から、とてつもない圧迫感が解き放たれている。
「この先に魔王が……」
俺は緊張した面持ちで門扉を開き、大広間へと足を踏み入れた。
すると、眼前には王室のような空間が広がって――。
その最奥部に、
ソレは佇んでいた。
「あぁ――。一体どれ程この日を待ち詫びただろうか」
黒色の正装(のような衣装)に身を包んだ青髪の少女が、ゆったりとした仕草で立ち上がる。
同時に、
膝丈のスカートがふわりと舞った。
少女が今しがた座っていたのは玉座、だろうか?
少女の発する声は鈴の音のようだった。
美しい歌声のように、聞く者を癒す効果があるかのように感じられた。
「人間よ、名乗ることを許可しよう」
もの凄い威圧感だ。
レベルは俺のほうが高いはずなのに。
これが格の違いというものなのだろうか?
「俺の名はレイン。レイン・ロッドだ」
「そうか。ふふ、良い名前だな」
少女はカツン……カツン……、と靴を鳴らしながら階段を降りてきた。
「妾の名はサタナ・エイリーンじゃ」
ようやく、少女の――、
魔王・サタナの姿がハッキリと視界に映る。
伏し目がちな赤眼に長いまつ毛。
そして透き通るような白い肌。
なんとも蠱惑的な見た目だが、
そうやって魅了するのも作戦の一つなのかもしれない。
「……」
俺はカラドボルグを構え、
サタナを睨みつけた。
「ふふ、そう警戒するでない。妾は少し話がしたいのだ」
「話だと? 人間と魔王が何を話すと言うんだ」
惑わされるな俺。
奴のペースに乗ってはならない。
おそらく奴は実力の差に気付いている。
だからこうやって隙を伺っているんだ。
「良いではないか、人間と魔王が話をしても。それを縛る者などどこにもおらぬのだから。いたとしても妾が叩き潰す」
「物騒な思考だ」
「物騒? ふははっ! レインよ、お前は中々に面白いことを言うのだな。自分が今しがた何をしたのか、それを忘れたのか?」
「それは……」
「まあ良い。相応の理由があったのだろう。別に深入りするつもりはないから安心せい」
なん、だこいつは。
話しているとまるで思考に靄がかかるような。
「ふふ、怖いか?」
「なんだと!?」
「妾は生まれながらにしての王。有象無象どもとは格が違うのだ。レベルの差など些事に過ぎぬ。細胞レベルで、遺伝子レベルで……レイン、お前は妾に屈服しているのだよ」
「もういい、御託は十分だ。俺が屈服している、ねぇ。ま、確かにお前と話していると思考が鈍るよ。それは認めよう。だが、これでも同じ口が利けるかな?」
スキル【超威圧】レベル5!!
ズズズズズ……!!
「おっ? お、おお、ぉおおおおおおっ!?」
俺のスキルの効力を直に受けたサタナは――。
「ふふっ」と笑った。
「ふ、ふふっ、うふふふふふふ、ふふふふふははは!!」
「ふうむ、どうやらよっぽど……」
「素晴らしいぞレイン!! 人間の分際でよくぞここまでッ!!」
戦闘狂らしいな。
このサタナという魔王は。
「お前の遊びに付き合うつもりはない」
カラドボルグを構え、臨戦態勢に入る。
腰は低く、目線はしかとサタナを捉えている。
「うふあっ! そう釣れぬことを言うでないレインよ! きっとこの出会いは奇跡なのだから!!」
「なにが奇跡だ馬鹿らしい」
第一撃。
五割程度の力でカラドボルグを振り下ろす。
無論、回避されるのは大前提。
だから、二手・三手先を読み攻撃を繰り出していく。
「あふぁっ! まるでダンスのようではないかレインよ!」
「そう思っているのはお前だけだよ!」
通常、相手が剣を持っていれば、警戒するのは刃。
俺はその固定観念を利用し、
ドスッ!!
カラドボルグの柄でサタナの右脇腹を殴打した。
「かふっ――!」
サタナは吐血しながらよろめき、
二歩、三歩と後退した。
手応えは抜群。
おそらく肋骨の数本は逝っただろう。
だが、顔を上げたサタナの表情は。
「ふふっ」
やはり笑っていた。
「まさかこの私がたった一人の人間に手傷を負わされるとはな。何万年振りだ? えーと、前に封印されたのが千年くらい前じゃろ? で、えーと……」
「よそ見とは随分と余裕じゃないか!!」
シャキィンッ!!
「おっとと。そう殺気立つでない」
いや、普通は殺気立つだろう。
これは魔王討伐クエストなのだから。
「ふふ、この私が流血か。仕方がない。レイン、お前には特別に妾のスキルを見せてやるぞ?」
「――!!」
ついに来るのか。
ヤツのあれが!
「しかとその魂に刻むがよい。妾のスキル【属性極化】、その恐ろしさをな!!」
サタナはスキル【属性極化】を発動。
自身の得意属性である氷結の効力を最大限にまで引き上げた。
その状況下で発動される魔王級魔法、オール・ブリザードは【最果ての洞窟】全域を一瞬の内に氷結させる……のみならず!
パキキィイイイイ……!!
時間という概念さえをも凍結させた。
「眼に焼き付けることは叶わぬ故、魂に刻むしかない。この奥義の虚しきところよな」
凍結した時間の中を動けるのはサタナのみ。
これにて勝負は決着した。
レベルの差などは些事に過ぎぬというサタナの言葉とおり。
レイン・ロッドは、魔王――サタナ・エイリーンに敗北したのである!
「ああ、愛おしい表情をしおるな、レイン」
サタナは優しくレインの頬に触れた。
柔らかな指使いで、次は唇を。
指の動きは絡めつく茨のようで。
サタナは満足いくまでレインの氷像を愛でようと心に決めた。
――次の瞬間。
バリィインッ!!
「……は?」
サタナは驚きの声を上げた。
何が起きたのか理解できず、思考が停止する。
「短い冬眠だったな。おはよう、サタナ」
挨拶代わりにまずは一発。
俺はガラ空きのサタナの腹部に拳をめり込ませ、全速力でフルスイングした。
「がッ!!!!!」
受け身を取る余裕すらないだろう。
サタナは猛スピードで吹き飛んでいく。
ドゴォオオオオンッ!!
サタナが直撃した階段部分は、まるで爆破魔法を受けたかのように損壊した。
しばしの間、砂塵が舞い上がっていたが。
ガシャアンッ!!
「ま、これくらいでダウンするくらいなら魔王は名乗れないよな」
瓦礫片の山の中からサタナが姿を現した。
服はボロボロだし口からは出血している。
だが、それでもなお――。
「がはっ! ……ふ、ふふふ」
サタナは笑っていた!
「レイン。今のはいい一撃だった」
「まだ笑うか。本当にタフな奴だな」
「どうやって妾の時間凍結を打ち破った?」
当然の疑問だ。
なんたって、あの魔法はサタナの最終奥義なのだから。
「冥途の土産に教えてやるよ。俺はそもそも時間凍結を打ち破ってなどはいない。それが答えだ」
「……なんだと?」
「さらに言うなら、お前はそもそも時間を凍結していない」
「そんなバカな話があるか……ぐっ!」
立ち上がったサタナがガクリと膝を突く。
自分で思っている以上にダメージが大きいようだ。
そんなサタナをよそに、俺は解説を続けた。
「魔法もスキルも同じなんだよ。同等の力がぶつかり合えば、それは相殺するんだ」
「同等の力――まさかっ!」
合点がいったという様子だな。
俺は生徒を褒める教師のように、パチパチパチと手を叩いた。
「その通り。俺はとある理由があってスキルを鍛えていてな。同等とは言ったが、ハッキリ言うと俺のスキルの力のほうが場に干渉する力が強いんだ。相手の力量も分からない内に何故断言できる? そう思うかもしれないけど、これに関しては勝算があった。努力に裏付けされた確信って奴だな」
「ふー、ふー……。なる、ほどな。それで妾のスキルが効力を発揮できず、結果、氷魔法は本来の力を出せなかったというわけか」
「とはいえこれは対等な勝負とは言えない。俺たち人間側には先人たちが積み重ねてきた叡智がある。俺たちはそれを聖書と呼んでいるが、それがなければ今回のような対策は取れなかっただろう」
「レインよ」
サタナは息を荒げながらも語り掛けてきた。
「それもまた人間の力なのだぞ? なにも恥ずべきことではない。……魔族が悠久なる時を生き永らえることができるように、人間もまた悠久なる時の中で己が意思を紡ぎ、託し――そうして生き永らえてきたのだからな」
サタナはゆらりと立ち上がり、優しげな笑みを携えて、言った。
「この勝負はお前の勝ちだ。誇れ人間よ。お前は単身、魔王を討ち果たしたのだ」
満足げな表情で、サタナがふらふらと近づいて来る。
なんだ……?
そう思っていると。
――ギュゥ。
「……え?」
サタナはいきなり俺に抱きついてきた。
うむ、まるで思考が追い付かない。
「レインよ。この胸のときめきは……、この胸の高鳴りは……。噂には聞いていた。だが、まさか自らが経験することになろうとはな」
「は? あの、ちょっと。おーい、サタナ? ちょ、やめ、ん、んむっ!!」
そしてサタナはあろうことか、キスまでしてきた。
「レインよ。妾はお前に惚れてしまったようだ」
「?????」
「これが好き、という感情なのだな」
サタナは一人満足げに、恍惚とした表情を浮かべていた。
余韻にでも浸ってるのか?
なんてことをどこか他人事のように考えていると、
「レイン! 妾と婚儀を挙げようではないか!!」
サタナは一方的に意味不明な戯言を投げ掛けてくるのだった。
「はあ?」
こうなる要素なんてどこにもなかったはずなのだが。
どうしてこうなったんだ???
ダメだ、まるで意味が分からん……。
【玉座の間】へと続く一本道を歩く。
もちろん【超威圧】は全開。
俺はモンスターと出会うことなく、スムーズにボスエリアの手前にやってきた。
金縁の装飾が施された重厚な門扉。
その奥から、とてつもない圧迫感が解き放たれている。
「この先に魔王が……」
俺は緊張した面持ちで門扉を開き、大広間へと足を踏み入れた。
すると、眼前には王室のような空間が広がって――。
その最奥部に、
ソレは佇んでいた。
「あぁ――。一体どれ程この日を待ち詫びただろうか」
黒色の正装(のような衣装)に身を包んだ青髪の少女が、ゆったりとした仕草で立ち上がる。
同時に、
膝丈のスカートがふわりと舞った。
少女が今しがた座っていたのは玉座、だろうか?
少女の発する声は鈴の音のようだった。
美しい歌声のように、聞く者を癒す効果があるかのように感じられた。
「人間よ、名乗ることを許可しよう」
もの凄い威圧感だ。
レベルは俺のほうが高いはずなのに。
これが格の違いというものなのだろうか?
「俺の名はレイン。レイン・ロッドだ」
「そうか。ふふ、良い名前だな」
少女はカツン……カツン……、と靴を鳴らしながら階段を降りてきた。
「妾の名はサタナ・エイリーンじゃ」
ようやく、少女の――、
魔王・サタナの姿がハッキリと視界に映る。
伏し目がちな赤眼に長いまつ毛。
そして透き通るような白い肌。
なんとも蠱惑的な見た目だが、
そうやって魅了するのも作戦の一つなのかもしれない。
「……」
俺はカラドボルグを構え、
サタナを睨みつけた。
「ふふ、そう警戒するでない。妾は少し話がしたいのだ」
「話だと? 人間と魔王が何を話すと言うんだ」
惑わされるな俺。
奴のペースに乗ってはならない。
おそらく奴は実力の差に気付いている。
だからこうやって隙を伺っているんだ。
「良いではないか、人間と魔王が話をしても。それを縛る者などどこにもおらぬのだから。いたとしても妾が叩き潰す」
「物騒な思考だ」
「物騒? ふははっ! レインよ、お前は中々に面白いことを言うのだな。自分が今しがた何をしたのか、それを忘れたのか?」
「それは……」
「まあ良い。相応の理由があったのだろう。別に深入りするつもりはないから安心せい」
なん、だこいつは。
話しているとまるで思考に靄がかかるような。
「ふふ、怖いか?」
「なんだと!?」
「妾は生まれながらにしての王。有象無象どもとは格が違うのだ。レベルの差など些事に過ぎぬ。細胞レベルで、遺伝子レベルで……レイン、お前は妾に屈服しているのだよ」
「もういい、御託は十分だ。俺が屈服している、ねぇ。ま、確かにお前と話していると思考が鈍るよ。それは認めよう。だが、これでも同じ口が利けるかな?」
スキル【超威圧】レベル5!!
ズズズズズ……!!
「おっ? お、おお、ぉおおおおおおっ!?」
俺のスキルの効力を直に受けたサタナは――。
「ふふっ」と笑った。
「ふ、ふふっ、うふふふふふふ、ふふふふふははは!!」
「ふうむ、どうやらよっぽど……」
「素晴らしいぞレイン!! 人間の分際でよくぞここまでッ!!」
戦闘狂らしいな。
このサタナという魔王は。
「お前の遊びに付き合うつもりはない」
カラドボルグを構え、臨戦態勢に入る。
腰は低く、目線はしかとサタナを捉えている。
「うふあっ! そう釣れぬことを言うでないレインよ! きっとこの出会いは奇跡なのだから!!」
「なにが奇跡だ馬鹿らしい」
第一撃。
五割程度の力でカラドボルグを振り下ろす。
無論、回避されるのは大前提。
だから、二手・三手先を読み攻撃を繰り出していく。
「あふぁっ! まるでダンスのようではないかレインよ!」
「そう思っているのはお前だけだよ!」
通常、相手が剣を持っていれば、警戒するのは刃。
俺はその固定観念を利用し、
ドスッ!!
カラドボルグの柄でサタナの右脇腹を殴打した。
「かふっ――!」
サタナは吐血しながらよろめき、
二歩、三歩と後退した。
手応えは抜群。
おそらく肋骨の数本は逝っただろう。
だが、顔を上げたサタナの表情は。
「ふふっ」
やはり笑っていた。
「まさかこの私がたった一人の人間に手傷を負わされるとはな。何万年振りだ? えーと、前に封印されたのが千年くらい前じゃろ? で、えーと……」
「よそ見とは随分と余裕じゃないか!!」
シャキィンッ!!
「おっとと。そう殺気立つでない」
いや、普通は殺気立つだろう。
これは魔王討伐クエストなのだから。
「ふふ、この私が流血か。仕方がない。レイン、お前には特別に妾のスキルを見せてやるぞ?」
「――!!」
ついに来るのか。
ヤツのあれが!
「しかとその魂に刻むがよい。妾のスキル【属性極化】、その恐ろしさをな!!」
サタナはスキル【属性極化】を発動。
自身の得意属性である氷結の効力を最大限にまで引き上げた。
その状況下で発動される魔王級魔法、オール・ブリザードは【最果ての洞窟】全域を一瞬の内に氷結させる……のみならず!
パキキィイイイイ……!!
時間という概念さえをも凍結させた。
「眼に焼き付けることは叶わぬ故、魂に刻むしかない。この奥義の虚しきところよな」
凍結した時間の中を動けるのはサタナのみ。
これにて勝負は決着した。
レベルの差などは些事に過ぎぬというサタナの言葉とおり。
レイン・ロッドは、魔王――サタナ・エイリーンに敗北したのである!
「ああ、愛おしい表情をしおるな、レイン」
サタナは優しくレインの頬に触れた。
柔らかな指使いで、次は唇を。
指の動きは絡めつく茨のようで。
サタナは満足いくまでレインの氷像を愛でようと心に決めた。
――次の瞬間。
バリィインッ!!
「……は?」
サタナは驚きの声を上げた。
何が起きたのか理解できず、思考が停止する。
「短い冬眠だったな。おはよう、サタナ」
挨拶代わりにまずは一発。
俺はガラ空きのサタナの腹部に拳をめり込ませ、全速力でフルスイングした。
「がッ!!!!!」
受け身を取る余裕すらないだろう。
サタナは猛スピードで吹き飛んでいく。
ドゴォオオオオンッ!!
サタナが直撃した階段部分は、まるで爆破魔法を受けたかのように損壊した。
しばしの間、砂塵が舞い上がっていたが。
ガシャアンッ!!
「ま、これくらいでダウンするくらいなら魔王は名乗れないよな」
瓦礫片の山の中からサタナが姿を現した。
服はボロボロだし口からは出血している。
だが、それでもなお――。
「がはっ! ……ふ、ふふふ」
サタナは笑っていた!
「レイン。今のはいい一撃だった」
「まだ笑うか。本当にタフな奴だな」
「どうやって妾の時間凍結を打ち破った?」
当然の疑問だ。
なんたって、あの魔法はサタナの最終奥義なのだから。
「冥途の土産に教えてやるよ。俺はそもそも時間凍結を打ち破ってなどはいない。それが答えだ」
「……なんだと?」
「さらに言うなら、お前はそもそも時間を凍結していない」
「そんなバカな話があるか……ぐっ!」
立ち上がったサタナがガクリと膝を突く。
自分で思っている以上にダメージが大きいようだ。
そんなサタナをよそに、俺は解説を続けた。
「魔法もスキルも同じなんだよ。同等の力がぶつかり合えば、それは相殺するんだ」
「同等の力――まさかっ!」
合点がいったという様子だな。
俺は生徒を褒める教師のように、パチパチパチと手を叩いた。
「その通り。俺はとある理由があってスキルを鍛えていてな。同等とは言ったが、ハッキリ言うと俺のスキルの力のほうが場に干渉する力が強いんだ。相手の力量も分からない内に何故断言できる? そう思うかもしれないけど、これに関しては勝算があった。努力に裏付けされた確信って奴だな」
「ふー、ふー……。なる、ほどな。それで妾のスキルが効力を発揮できず、結果、氷魔法は本来の力を出せなかったというわけか」
「とはいえこれは対等な勝負とは言えない。俺たち人間側には先人たちが積み重ねてきた叡智がある。俺たちはそれを聖書と呼んでいるが、それがなければ今回のような対策は取れなかっただろう」
「レインよ」
サタナは息を荒げながらも語り掛けてきた。
「それもまた人間の力なのだぞ? なにも恥ずべきことではない。……魔族が悠久なる時を生き永らえることができるように、人間もまた悠久なる時の中で己が意思を紡ぎ、託し――そうして生き永らえてきたのだからな」
サタナはゆらりと立ち上がり、優しげな笑みを携えて、言った。
「この勝負はお前の勝ちだ。誇れ人間よ。お前は単身、魔王を討ち果たしたのだ」
満足げな表情で、サタナがふらふらと近づいて来る。
なんだ……?
そう思っていると。
――ギュゥ。
「……え?」
サタナはいきなり俺に抱きついてきた。
うむ、まるで思考が追い付かない。
「レインよ。この胸のときめきは……、この胸の高鳴りは……。噂には聞いていた。だが、まさか自らが経験することになろうとはな」
「は? あの、ちょっと。おーい、サタナ? ちょ、やめ、ん、んむっ!!」
そしてサタナはあろうことか、キスまでしてきた。
「レインよ。妾はお前に惚れてしまったようだ」
「?????」
「これが好き、という感情なのだな」
サタナは一人満足げに、恍惚とした表情を浮かべていた。
余韻にでも浸ってるのか?
なんてことをどこか他人事のように考えていると、
「レイン! 妾と婚儀を挙げようではないか!!」
サタナは一方的に意味不明な戯言を投げ掛けてくるのだった。
「はあ?」
こうなる要素なんてどこにもなかったはずなのだが。
どうしてこうなったんだ???
ダメだ、まるで意味が分からん……。
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