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第三章 マナクルス魔法学園編
第28話 ノエルとの距離
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明けて翌日。
俺はこの日の目標を一点に絞った。
それはノエルと仲良くなるということ。
一人だけ除け者にされることの悔しさ・悲しさを俺は知っている。
ヴェンに追放を言い渡され、
グランとソラに嘲笑われた時。
俺は、深い絶望の底へと叩き落された。
俺はあの苦しみを味わってしまった。
だからこそ、同じ状況下にある人間を放っておけなかった。
「おはよう。確かノエル、だったな?」
慣れない環境でリズムが崩れたのか。
俺はかなりの早起きをしてしまった。
特にやることもないので軽朝を済ませ教室に入ると。
そこには既にノエルの姿があったのだ。
彼女は読書に耽っていた。
「随分と早いんだな。毎日こうなのか?」
時計の針はまだⅦを指している。
朝礼までは一時間も早い。
「話しかけないで。言ったでしょう、私とは関わらない方がいいって。見ていて分からなかった? 私はみんなから嫌われているの」
「らしいな」
「みんなというのはクラスメイトだけじゃない。先生も私のことを嫌っている。……だから私のことは放っておいて。黙ってさえいれば単位だけは貰える。私はそれで充分なの」
凄まじいな、これは。
すっかり心を閉じ切ってしまっている。
他者の侵入を阻む鉄壁の要塞……、
とでも例えようか。
とはいえ、一応は進展したと言っていいだろう。
昨日は話しかけようとしただけで逃げられてしまったからな。
クラスメイトからの重圧も凄まじかったし。
「分かったよ。そこまで言うなら俺は君を放っておくことにするよ。ただ、もしも困ったことがあったらなんでも言ってくれ。俺なんかで良ければ相談に乗ってやれるから」
「余計なお世話」
バッサリと切り捨てられてしまったが。
最初はこんなものだろう。
俺は前向きに捉えることにした。
それから二日、三日と経過したが。
「失せて」
「消えて」
「視界に入らないで」
「邪魔」
「迷惑なんだけど」
「ウザい」
などなど。
散々な言葉を投げ掛けられる日々が続いた。仕舞いには――。
「もしかして、たった一回助けたくらいで友達気取り? どうしてそんなに私に関わろうとするの? 言ったじゃない、私と関わらないでって!!」
ひどく激高させてしまったのだった。
俺の行いは的外れで独りよがりなものだったのかもしれない。
#
そんなある日。
俺は一人の教師に呼び出しを受けた。
ボサボサの天パ頭に丸眼鏡のイケメン。
彼は早速自己紹介を始めた。
「俺の名前はレック・オルタ。校長の次に強いから魔法実技を任せられてる。二十代前半でこの強さだしな、多分メアリと並ぶくらいには天才なんじゃねェの? ま~どうでもいいけど」
結構フランクな性格らしい。
あと、ちょっとナルシストな一面も。
「お前の話は聞いてるよ~。なんでもあのノエルにチョッカイかけてるんだって? お前自分で気付いてるか知らないけど、クラスの連中からめっちゃ嫌われてるぞ~」
「そうですか」
正直言ってどうでもいい。
というか興味がない。
俺の目的は古代魔法に関する手掛かりを入手することで、友達を作ることじゃない。
ただ、ノエルのことは気になってしまう。
過去の自分に重ね合わせているだけ、とも言えるが。
「ま~どうでもいいけどさ。お前、なんでアイツに構うの? 一目惚れでもしちまったか~?」
「別にそういうことではないです。ただの私情です」
「あっそ。ま~アレだ。一個だけ忠告しといてやる。……あいつと関わるなら半端なことだけはするな。相応の覚悟を持て。俺から言えるのはこれだけかな~」
レックはふわあ……と欠伸をし、
「あ、それだけ。もう戻っていいぞ~」
しっしっ、と手を振った。
俺が編入してから十日が経った。
相も変わらずノエルの態度はつっけんどんだが、俺もある程度の距離感というものを覚えてきた。
その甲斐あってか、
怒らせるということはなくなったのだが。
「見ろよ、アイツまたノエルに話しかけてるぞ」
「あんなののどこが良いんだろうね?」
「不気味だし、ずっと本読んでるだけだし」
「喋らないし」
「ってか属性ヤベェし」
「どーせ何も知らないんだろ」
「ははっ、バカは気楽でいいな」
「それ言えてる~」
悪口の対象は俺にも拡張されたのだった。
とはいえ俺にはノーダメ―ジだが。
クラスメイトの陰口を受けながらも。
俺は、ノエルと軽口を交えていく。
どんな本が好みなのか?
好きな食べ物は?
好きなモンスターは?
逆に、苦手なモンスターはいるのか?
とか。
ちなみに俺は、
虫系のモンスターが苦手だったりする。
あの動きと足音、そして独特のフォルム。
視界に映ったと同時に焼き払いたくなるというものだ、気色悪すぎてな。
「私も、虫は苦手」
どうやらノエルも虫は苦手らしい。
逆に、スライム系のモンスターは好きだという。
俺はなんとも言えない気分になった。
剣士見習いなどとは言っているが、その実態はスライムスレイヤーみたいなものだしな……。
そんなふうにしていると、
やがて鐘の音が鳴り。
入室してきたのは、レック・オルタその人だった。
「今日の一限と二限は魔法実技の授業だ。担当はもちろんこの俺。嬉しいだろう? 一限は的当て、二限は年に一度のアレだ。我が校の実力を冒険者ギルドに示すための儀式的な意味もある大事な授業だ。気ィ抜くんじゃないぞ」
気怠そうなレックにしてはヤケに真剣な説明であった。
ところでアレとはなんだろう?
クラスメイトたちは、
「ついに来たか」
「この日を待ってたよ」
「まぁ、時期的にそろそろだったしな」
「去年の雪辱、ここで晴らす!」
「最も評価に直結するからね」
「負けらんねぇぜ」
「私だって負けないから!」
などと盛り上がっていたが。
一年に一度というくらいだし、よほど重要な科目なのだろうな。
だが、ノエルだけは人形のように無表情だった。
俺はまるで、静止画を見せられているかのような気分になった。
俺はこの日の目標を一点に絞った。
それはノエルと仲良くなるということ。
一人だけ除け者にされることの悔しさ・悲しさを俺は知っている。
ヴェンに追放を言い渡され、
グランとソラに嘲笑われた時。
俺は、深い絶望の底へと叩き落された。
俺はあの苦しみを味わってしまった。
だからこそ、同じ状況下にある人間を放っておけなかった。
「おはよう。確かノエル、だったな?」
慣れない環境でリズムが崩れたのか。
俺はかなりの早起きをしてしまった。
特にやることもないので軽朝を済ませ教室に入ると。
そこには既にノエルの姿があったのだ。
彼女は読書に耽っていた。
「随分と早いんだな。毎日こうなのか?」
時計の針はまだⅦを指している。
朝礼までは一時間も早い。
「話しかけないで。言ったでしょう、私とは関わらない方がいいって。見ていて分からなかった? 私はみんなから嫌われているの」
「らしいな」
「みんなというのはクラスメイトだけじゃない。先生も私のことを嫌っている。……だから私のことは放っておいて。黙ってさえいれば単位だけは貰える。私はそれで充分なの」
凄まじいな、これは。
すっかり心を閉じ切ってしまっている。
他者の侵入を阻む鉄壁の要塞……、
とでも例えようか。
とはいえ、一応は進展したと言っていいだろう。
昨日は話しかけようとしただけで逃げられてしまったからな。
クラスメイトからの重圧も凄まじかったし。
「分かったよ。そこまで言うなら俺は君を放っておくことにするよ。ただ、もしも困ったことがあったらなんでも言ってくれ。俺なんかで良ければ相談に乗ってやれるから」
「余計なお世話」
バッサリと切り捨てられてしまったが。
最初はこんなものだろう。
俺は前向きに捉えることにした。
それから二日、三日と経過したが。
「失せて」
「消えて」
「視界に入らないで」
「邪魔」
「迷惑なんだけど」
「ウザい」
などなど。
散々な言葉を投げ掛けられる日々が続いた。仕舞いには――。
「もしかして、たった一回助けたくらいで友達気取り? どうしてそんなに私に関わろうとするの? 言ったじゃない、私と関わらないでって!!」
ひどく激高させてしまったのだった。
俺の行いは的外れで独りよがりなものだったのかもしれない。
#
そんなある日。
俺は一人の教師に呼び出しを受けた。
ボサボサの天パ頭に丸眼鏡のイケメン。
彼は早速自己紹介を始めた。
「俺の名前はレック・オルタ。校長の次に強いから魔法実技を任せられてる。二十代前半でこの強さだしな、多分メアリと並ぶくらいには天才なんじゃねェの? ま~どうでもいいけど」
結構フランクな性格らしい。
あと、ちょっとナルシストな一面も。
「お前の話は聞いてるよ~。なんでもあのノエルにチョッカイかけてるんだって? お前自分で気付いてるか知らないけど、クラスの連中からめっちゃ嫌われてるぞ~」
「そうですか」
正直言ってどうでもいい。
というか興味がない。
俺の目的は古代魔法に関する手掛かりを入手することで、友達を作ることじゃない。
ただ、ノエルのことは気になってしまう。
過去の自分に重ね合わせているだけ、とも言えるが。
「ま~どうでもいいけどさ。お前、なんでアイツに構うの? 一目惚れでもしちまったか~?」
「別にそういうことではないです。ただの私情です」
「あっそ。ま~アレだ。一個だけ忠告しといてやる。……あいつと関わるなら半端なことだけはするな。相応の覚悟を持て。俺から言えるのはこれだけかな~」
レックはふわあ……と欠伸をし、
「あ、それだけ。もう戻っていいぞ~」
しっしっ、と手を振った。
俺が編入してから十日が経った。
相も変わらずノエルの態度はつっけんどんだが、俺もある程度の距離感というものを覚えてきた。
その甲斐あってか、
怒らせるということはなくなったのだが。
「見ろよ、アイツまたノエルに話しかけてるぞ」
「あんなののどこが良いんだろうね?」
「不気味だし、ずっと本読んでるだけだし」
「喋らないし」
「ってか属性ヤベェし」
「どーせ何も知らないんだろ」
「ははっ、バカは気楽でいいな」
「それ言えてる~」
悪口の対象は俺にも拡張されたのだった。
とはいえ俺にはノーダメ―ジだが。
クラスメイトの陰口を受けながらも。
俺は、ノエルと軽口を交えていく。
どんな本が好みなのか?
好きな食べ物は?
好きなモンスターは?
逆に、苦手なモンスターはいるのか?
とか。
ちなみに俺は、
虫系のモンスターが苦手だったりする。
あの動きと足音、そして独特のフォルム。
視界に映ったと同時に焼き払いたくなるというものだ、気色悪すぎてな。
「私も、虫は苦手」
どうやらノエルも虫は苦手らしい。
逆に、スライム系のモンスターは好きだという。
俺はなんとも言えない気分になった。
剣士見習いなどとは言っているが、その実態はスライムスレイヤーみたいなものだしな……。
そんなふうにしていると、
やがて鐘の音が鳴り。
入室してきたのは、レック・オルタその人だった。
「今日の一限と二限は魔法実技の授業だ。担当はもちろんこの俺。嬉しいだろう? 一限は的当て、二限は年に一度のアレだ。我が校の実力を冒険者ギルドに示すための儀式的な意味もある大事な授業だ。気ィ抜くんじゃないぞ」
気怠そうなレックにしてはヤケに真剣な説明であった。
ところでアレとはなんだろう?
クラスメイトたちは、
「ついに来たか」
「この日を待ってたよ」
「まぁ、時期的にそろそろだったしな」
「去年の雪辱、ここで晴らす!」
「最も評価に直結するからね」
「負けらんねぇぜ」
「私だって負けないから!」
などと盛り上がっていたが。
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俺はまるで、静止画を見せられているかのような気分になった。
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