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第六章 魔王 エルゼム編
第58話 消された術者
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俺の第一目標。
それは、魔力を形にして放出すること。
それさえできれば、
属性はサタナが鑑定してくれる。
本来なら、特定の施設に出向き、
一ヶ月以上の時間を掛けて属性を鑑定する。
属性というのはそれ程までに重要で、
鑑定をミスしようものなら、人が死ぬこともある。
本当は水属性なのに、
火の精霊に力を懇願する。
そういう事態だけは避けなければならない。
だから、属性鑑定は100%の精度で行われる。
そのはずなのだが、サタナは、
「妾なら触れるだけで属性が分かるぞ?」
などと言いだした。
「そのくらい出来ないようでは魔王は名乗れんからな」
とのことだ。
魔王ってのも楽じゃないな、色々と。
『ギィ! キィッ!!』
などと考え事をしてる間にも、
ゴブリン・ソードが必死に剣を振って来る。
しかし全く痛くない。
攻撃力と防御力に差がありすぎるせいだ。
「よし、精神を集中させよう」
焦らず、ゆっくりと。
腹の中心部分に魔力を貯め込み、
それを全身に循環させる……。
…………きたっ。
またあの浮遊感だ。
これを途切れさせないように、慎重に――。
『グァッ! ギキャー――ッ!!』
くっ、相も変わらずの喧しさだな!
サタナによると、集中できない環境下で特訓したほうが成長が早いとのことだが。
はたして本当にそうなのだろうか?
別にサタナを疑うわけではないが、
どうにも釈然としない。
「くっ、う……」
ああ、やっぱりダメだ。
あの浮遊感が消えてしまった。
やはり簡単にはいかないな。
「そう落ち込むでない。そもそもじゃぞ? 向こうからレインを出向かせろと言っておきながら魔法を使えないヤツとは会わないだなんていうのがおかしな話なんじゃ」
「なぁ、サタナ。エルゼムとテレパシーできるなら、俺が行く時だけ結界を解除するようには言えないのか?」
今更ながら、
どうしてこんな簡単なことに気付かなかったのだろう。最初からこうすればよかったじゃないか。
しかし、そうは問屋が卸さなかった。
「無理じゃな。なにせあの結界は『防魔の約定』と同質のモノ。一度張り巡らせた以上は、結界を張った本人しか解除できぬ。【魔月の牙城】に結界を張ったのはエルゼムの側近・ヴァルヴールというモンスターじゃが、そいつはもう死んでおる」
そう言って、
サタナはどこかバツが悪そうな顔をした。
「……一応聞かせてくれ。そのヴァルヴールとやらを殺したのは誰だ?」
「………………さぁ。忘れた」
「うん、お前だな?」
「ぐっ……。フフッ、流石はレイン。やはり看破しよるか」
「開き直るな。とはいえ、過ぎたことをウダウダ言っても仕方ないか。――ちなみに、なんで殺したんだ?」
「ワザとじゃないぞ? アレは事故だったんじゃ。今から500年……いや、1000年前だったかのぅ? 正確には覚えとらんが、妾とエルゼムは決闘したんじゃ。お互いがお互いを高め合う戦友。故に殺しはご法度。万が一のことがないようにとヴァルヴールに審判をしてもらったんだが、その時に妾の魔法が被弾してしまっての。アレは可哀想なことをした。今でも反省しておる、この通りじゃっ!」
「本当か? まぁ細かいことはどうでもいい。どう足掻いても魔法の習得は必須ってことらしいからな」
「ウムッ! そういうことじゃ! 何をどう足掻こうとも過去は変えられんし死んだ者も蘇らぬ。なれば未来を見据えて生きてゆくしか無いのじゃ!」
「はいはい、その通りだよ」
全く呆れたヤツだ。
しかしまぁ、サタナの言い分は最もだな。
一度死んだ生物が蘇るなんてことは無い。
つまり結界を解除してもらうことは出来ない。
ならば、俺は魔法を習得するしかないんだ。
「それにしても難儀だな、結界というモノは。術者が死んでも解除されないだなんて不便すぎる」
「いやいや、逆じゃぞレイン。術者が死んだ程度で解除されるモノなど薄布同然。妾らはその程度の脆弱なモノを結界とは呼ばぬのじゃ」
「なるほどね。術者が死んでなお効力を発揮する。そこまで強固な性能を以てして初めて結界と認められるわけだ」
「その通りじゃ!」
「ところで、会敵してから何分経過した?」
「五分と二十秒じゃ。正確に測っておるから安心せい!」
「サンキュー」
あと四分ちょっとか。
『ギガァーーッ!!』
フッ、なんというか可愛らしく見えてくるな。
本人は一生懸命なのだろうが、
まるで戦いになっていない。
かつてのモンスターの目にも、レベル10以下の俺の姿はこんなふうに映っていたのだろうな。
「悪いな、ゴブリン・ソード。もう少しだけ付き合ってもらうぞ」
『ウギャーーッ!!』
「ははっ、威勢がいいな!」
よし、もう一度だ。
今度は目を閉じるだけでなく、
可能な限り音を聞かないようにしよう。
集中力を極限まで高めれば、
誰がどこで何をしようとも気にならなくなる。
最終的には、
精神統一の最中は、
誰がどこで何をしているのか全く気付かなくなるというのが理想だ。
そこまで到達すれば、
魔法の発動も時間の問題だろう。
そうだな。
時々はノエルに教えてもらうのもいいかもしれない。
教え手が違えば、
異なった見解を得られる可能性もある。
人類の命運が懸かっていると知らせれば、
ノエルやレックだけでなく、マナクルス魔法学園も強力を惜しまないはずだ。
このクエストが終わったら、
すぐにでも出向いてみようか。
うん、そうするのが良さそうだ。
それは、魔力を形にして放出すること。
それさえできれば、
属性はサタナが鑑定してくれる。
本来なら、特定の施設に出向き、
一ヶ月以上の時間を掛けて属性を鑑定する。
属性というのはそれ程までに重要で、
鑑定をミスしようものなら、人が死ぬこともある。
本当は水属性なのに、
火の精霊に力を懇願する。
そういう事態だけは避けなければならない。
だから、属性鑑定は100%の精度で行われる。
そのはずなのだが、サタナは、
「妾なら触れるだけで属性が分かるぞ?」
などと言いだした。
「そのくらい出来ないようでは魔王は名乗れんからな」
とのことだ。
魔王ってのも楽じゃないな、色々と。
『ギィ! キィッ!!』
などと考え事をしてる間にも、
ゴブリン・ソードが必死に剣を振って来る。
しかし全く痛くない。
攻撃力と防御力に差がありすぎるせいだ。
「よし、精神を集中させよう」
焦らず、ゆっくりと。
腹の中心部分に魔力を貯め込み、
それを全身に循環させる……。
…………きたっ。
またあの浮遊感だ。
これを途切れさせないように、慎重に――。
『グァッ! ギキャー――ッ!!』
くっ、相も変わらずの喧しさだな!
サタナによると、集中できない環境下で特訓したほうが成長が早いとのことだが。
はたして本当にそうなのだろうか?
別にサタナを疑うわけではないが、
どうにも釈然としない。
「くっ、う……」
ああ、やっぱりダメだ。
あの浮遊感が消えてしまった。
やはり簡単にはいかないな。
「そう落ち込むでない。そもそもじゃぞ? 向こうからレインを出向かせろと言っておきながら魔法を使えないヤツとは会わないだなんていうのがおかしな話なんじゃ」
「なぁ、サタナ。エルゼムとテレパシーできるなら、俺が行く時だけ結界を解除するようには言えないのか?」
今更ながら、
どうしてこんな簡単なことに気付かなかったのだろう。最初からこうすればよかったじゃないか。
しかし、そうは問屋が卸さなかった。
「無理じゃな。なにせあの結界は『防魔の約定』と同質のモノ。一度張り巡らせた以上は、結界を張った本人しか解除できぬ。【魔月の牙城】に結界を張ったのはエルゼムの側近・ヴァルヴールというモンスターじゃが、そいつはもう死んでおる」
そう言って、
サタナはどこかバツが悪そうな顔をした。
「……一応聞かせてくれ。そのヴァルヴールとやらを殺したのは誰だ?」
「………………さぁ。忘れた」
「うん、お前だな?」
「ぐっ……。フフッ、流石はレイン。やはり看破しよるか」
「開き直るな。とはいえ、過ぎたことをウダウダ言っても仕方ないか。――ちなみに、なんで殺したんだ?」
「ワザとじゃないぞ? アレは事故だったんじゃ。今から500年……いや、1000年前だったかのぅ? 正確には覚えとらんが、妾とエルゼムは決闘したんじゃ。お互いがお互いを高め合う戦友。故に殺しはご法度。万が一のことがないようにとヴァルヴールに審判をしてもらったんだが、その時に妾の魔法が被弾してしまっての。アレは可哀想なことをした。今でも反省しておる、この通りじゃっ!」
「本当か? まぁ細かいことはどうでもいい。どう足掻いても魔法の習得は必須ってことらしいからな」
「ウムッ! そういうことじゃ! 何をどう足掻こうとも過去は変えられんし死んだ者も蘇らぬ。なれば未来を見据えて生きてゆくしか無いのじゃ!」
「はいはい、その通りだよ」
全く呆れたヤツだ。
しかしまぁ、サタナの言い分は最もだな。
一度死んだ生物が蘇るなんてことは無い。
つまり結界を解除してもらうことは出来ない。
ならば、俺は魔法を習得するしかないんだ。
「それにしても難儀だな、結界というモノは。術者が死んでも解除されないだなんて不便すぎる」
「いやいや、逆じゃぞレイン。術者が死んだ程度で解除されるモノなど薄布同然。妾らはその程度の脆弱なモノを結界とは呼ばぬのじゃ」
「なるほどね。術者が死んでなお効力を発揮する。そこまで強固な性能を以てして初めて結界と認められるわけだ」
「その通りじゃ!」
「ところで、会敵してから何分経過した?」
「五分と二十秒じゃ。正確に測っておるから安心せい!」
「サンキュー」
あと四分ちょっとか。
『ギガァーーッ!!』
フッ、なんというか可愛らしく見えてくるな。
本人は一生懸命なのだろうが、
まるで戦いになっていない。
かつてのモンスターの目にも、レベル10以下の俺の姿はこんなふうに映っていたのだろうな。
「悪いな、ゴブリン・ソード。もう少しだけ付き合ってもらうぞ」
『ウギャーーッ!!』
「ははっ、威勢がいいな!」
よし、もう一度だ。
今度は目を閉じるだけでなく、
可能な限り音を聞かないようにしよう。
集中力を極限まで高めれば、
誰がどこで何をしようとも気にならなくなる。
最終的には、
精神統一の最中は、
誰がどこで何をしているのか全く気付かなくなるというのが理想だ。
そこまで到達すれば、
魔法の発動も時間の問題だろう。
そうだな。
時々はノエルに教えてもらうのもいいかもしれない。
教え手が違えば、
異なった見解を得られる可能性もある。
人類の命運が懸かっていると知らせれば、
ノエルやレックだけでなく、マナクルス魔法学園も強力を惜しまないはずだ。
このクエストが終わったら、
すぐにでも出向いてみようか。
うん、そうするのが良さそうだ。
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