スライムは仲間を呼んだ!~デバフで支援してたのに追放された俺はスライム狩りでレベル爆増!魔王を倒したら惚れられ、気付けばハーレム状態に!

藤村

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第六章 魔王 エルゼム編

第59話 それぞれの魔王

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「サタナ、予定変更だ」

 ザンッ!!

 俺はゴブリン・ソードを斬り伏せた。
 今は一分一秒が惜しい。
 思い立ったことはすぐに行動に移さないとな。

「ふと思ったんだ。サタナから教わるのも良いが、マナクルス魔法学園に行ってみるのもいいかもなって。今は一秒たりとも時間を無駄にしたくない。思い立ったら即行動だ!」
「なるほど。訳ありとはいえ一時は編入した身。見知った仲なれば、協力してくれる者も出てくるかもしれぬな。特にあの女なんかは……」
「ノエルな。いい加減名前くらいは覚えたらどうなんだ?」

 サタナはノエル――というか、
 他の女性陣に対抗心を燃やしている。

 可能なら、ヴィーナの名前も記憶から消してしまいたいとか宣っていたくらいだ。

 何をどう足掻いても、
 俺とサタナが結ばれることは無い。
 だというのに、健気というかなんというか。
 
 ちょっと心に「うっ」と来るモノがあるのも事実だ。
 
 だが俺は、それすらもサタナの作戦だと思っている。
 
 ていうか、そう思わなければいつどのタイミングで心を奪われてしまうか分かったものじゃないからな。

 見た目だけなら、
 サタナは俺の好みに合致している。

 美しく靡く青の長髪。
 そして、漆黒の衣装と反する色白な素肌。
 スカートから覗く太ももさえもが、
 寸分の狂いなく丁度良い塩梅。
 そして極めつけは、
 視線を合わせた者を吸い込むかのような、宝石のような赤眼……。

 正直言って、
 サタナが魔王でなく人間だったなら、
 俺の心はサタナに傾いていただろう。

 だがしかしだ。
 あくまでも俺は人間なわけで。
 魔王とくっつく気など、さらさら無い。

 女性の好意を蔑ろにするのは、
 男として思うところがないわけでは無い。
 
 しかしそれでも、
 俺とサタナが結ばれるのは、
 なんというか、
 少し違う気がしてしまうのだ。

「おぉ、そういえばそんな名前だったな。ノエルのぅ。気が向いたら記憶しておくぞ」
「気が向いたらって言うけどなぁ、一応は同じパーティのメンバー……つまりは仲間なんだぞ?」
「そんなことは分かっておる! 分かってるけど、なんとなく気に喰わんのじゃ! 妾は確かに魔王じゃ。だが、その前に一人の女なのじゃ。想い人の周りに他の女が四人もいて気にならないわけがなかろうがっ!」
「気持ちは有難いけど、初めて会った時も言っただろう? 俺は人間でサタナはモンスターなんだ。見た目だけなら限りなく人間に近いけどな」

 と、その時になって。
 俺はふと気になった。
 
 そういえば、エルゼムってどんな感じなんだろう?

「ところでサタナ」
「むぅ~……」
「おいおい、そう拗ねるなよ。あとで一緒にお茶してやるからさ。砂糖も一杯入れていいぞ」
「なにっ、本当か!?」
「あぁ、本当だ。俺がお前に嘘ついたこと、今まであったか?」
「ない!」
「だろ? ところで、ちょっと聞いておきたいことがあるんだ」
「聞いておきたいこと?」
「あぁ。魔王・エルゼム。ヤツはどんな見た目なんだ? ていうか、可能なら他の魔王の特徴も聞いておきたい。これから先、戦うことがあるかもしれないからな」
「なんだ、そんなことか。エルゼムな。うーんと、えっとぉ……。あれ?」

 サタナははてと首を傾げた。
 その頭上には?マークが浮かんでいる。

「すまない。どんな見た目だったか忘れてしまった……。しかし、魔王の特徴は結構わかりやすいぞ。妾を含め、みな人間に近しいからな。エルゼムも人間に近い見た目をしておろう。あと、性別は女じゃ」
「エルゼムは女、か」

 ますます改心の余地が出てきた。
 心を弄ぶようなことはしたくないし、
 自分にそこまで魅力があると思い上がりたくもないが。

 いざという時は、
 どんな手を使ってでも、
 改心させなくてはな。
 
 人類の命運が懸かってる以上、
 魔王の心がどうのこうのと奇麗ごとは言ってられない。

「他の魔王はどんな感じだ? 覚えている限りでいいから教えてくれ」
「ウム。他の二人だが、一人は【フェーヴェル】と名乗っていたな。性別は覚えとらん。妾の記憶にあるのは、フェーヴェルには大きな翼と天輪があったということくらいじゃな」
「翼と天輪? フェーヴェルは天使か何かなのか?」
「元はの。だが、フェーヴェルは堕天したと聞いた。スキルは【極限圧縮フル・コンプレッション】。ありとあらゆるを圧縮し、最終的には”ブラックホール”を産み出す能力じゃ」
「ブラックホール!? そんなの、地球内で産み出したらとんでもないことになるぞ!」
「あぁ。地球が跡形もなく消し飛ぶだろうな。だから、フェーヴェルは【極限圧縮】を全開では使えない。自滅してしまうからの」
「確かにそうだな。まさかだけど、堕天した理由ってのは……」
「察しが良いな。その通りじゃ。自分のスキルを試してみたくなった、とかいう理由で天界の一つを滅ぼしてしまった。そのせいで堕天したらしいぞ?」
「あぁ、なんて危険なヤツなんだ。それで、もう一人は?」
「もう一人は【魔王・ゲイグ】だ。ゲイグはアホみたいに長ったらしい剣を振り回すのが好きなヤツでなぁ。魔王の中では一番の戦闘狂じゃ。スキルは【永龍極化フル・ドラゴニック】と呼ばれるもので、【永遠とわ輪龍りんりゅう・ウロボロス】を顕現する能力。ウロボロスはどんな攻撃を浴びせようとも無限に再生しよるし、それが顕現している間、ゲイグは不老不死になり、受けるダメージも0になる。妾にとっては最大の天敵じゃな。仮に時間を止めたとて、ウロボロスを顕現されては手も足も出せぬからな」

 ……スケールが違いすぎる。
 なんだよ、ブラックホールとか不老不死って。
 
 クソ、どう考えても敵に回すべきじゃない。

 こうなってくると、
 ますますエルゼムを懐柔させたくなってきたな……。
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