外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件

霜月雹花

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第一章

第15話 【秘密の訓練場・3】✤

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 翌日、昨日のボア肉の余りを朝食として食べ朝のトレーニングをしようとしていた。
 しかし、そんな俺に対して師匠は「紹介する相手がいるから待っていろ」と言って森の奥へと消えた。

「そう言えば、昨日の夜に見張りはしなくても大丈夫とか言ってたけど、もしかしてここに師匠の知り合いでも居るから見張りをしなくても良いって言ったのかな?」

 その後、暫く時間が掛かるだろうと思って昨日と同じように土いじりをしながら【土属性魔法】の訓練を行った。
 師匠が出て行ってから一時間程が経った頃、師匠は戻って来た。
 その際、俺は師匠と一緒に現れた〝生物〟に驚き固まった。
 この場に現れたのは、体長5m程の白い狼。

「ッ!」

 本で見た伝説上の生き物〝フェンリル〟に凄く似ている狼は、俺を視界にいれその眼光の圧に息が詰まった。
 フェンリルは伝説上の生物故、生態系は特に知られていない。
 しかし、一つだけ分かっているのは人が住んでる近くには生息していないと本に書かれていた。

「し、師匠。俺の思い違いじゃなかったらですけど……フェ、フェンリルですか?」

「そうだ。こいつは、この森の奥地で暮らしてる森の王をしているフェンリルだぞ」

「お主に弟子が出来たと聞いて、見に来たがこれはまた素晴らしい才能の持ち主だな……それにこの匂い。お主、大地神の加護を貰っているな」

 森の王と紹介されたフェンリル。
 そのフェンリルは俺の近くによってスンスンと匂いを嗅ぐと、そんなとんでもない発言をした。

「やっぱり、アルフには間違いなく加護があるのか……なあ、アルフ。お前が良ければだけど、こいつにステータスを見せてやってくれないか?」

「えっ? あっ、はい。分かりました」

 そう言われた俺は、ステータスを出してフェンリルと師匠に見せた。


名 前:アルフレッド
年 齢:16
種 族:ヒューマン
身 分:平民
性 別:男

レベル:10
筋 力:82
魔 力:101
敏 捷:58
 運 :91

スキル:【経験値固定:/】【剣術:3】【属性魔法(2):—】
加 護:Error


「……〝Error〟だと? こんなの見た事も聞いた事も無いぞ?」

「そうだよな、そうなるよな」

 フェンリルの驚きように対して、師匠は自分も似たような経験をしたからかウンウンと頷きながらそう言った。

「確かに大地神の加護を感じるのに、ステータスに表記されていない……もしかすると、複数の神がこの者に加護を与えておかしくなってる可能性もあるな」

「複数の神が加護をか? 普通は、一つ加護を貰うだけでも奇跡と言われているんだぞ?」

「可能性の話だ。お主、神と接点はあるか?」

「神様とは、会った事も見た事も無いですよ?」

 その質問に対してそう答えると、フェンリルは首を傾げて「おかしいな……」と呟いた。

「あの、所で話を後回しにしましたけど、どういう繋がりなんですか?」

 師匠とフェンリルは俺のステータスを見て考え込んでいたところに、俺は我慢できずにそう尋ねた。

「説明を忘れていたな。森の王のフェンリルってのはさっき言ったな。こいつとは昔からの知り合いで、こいつが幼少期の頃にここで出会って一緒に強くなった仲なんだ」

「フェンリルと知り合いって、師匠凄いですね。その名前とかってあるんですか?」

「良い所に気付いてくれたな、アレンの弟子。我に名は、今の所無いんだ。本来であれば、長年の中であるアレンに付けてもらいたい所なんだが……」

 フェンリルはそう言うと、ジッと師匠の方を睨んだ。
 師匠はフェンリルの視線に気付くと、フェンリルの顔とは反対へと視線をやった。

「アレンはな、絶望的な感覚の持ち主なんだ。我に名前を付けてくれないかと聞いた時、なんてつけようとしたと思う?」

「ど、どういう名前ですか?」

「シロ」

「……えっ?」

 フェンリルの口にした師匠が付けようとした名前を聞き、俺はそんな反応をした。

「アレンは我の毛並みが白いから、シロという名前を付けようとしたんだ。〝シロ〟という名前が、決して悪い訳では無い。だがな長年付き合いのある相手に対して毛並みで名付けをするセンスをアレンは持っておるんだ」

「し、仕方ないだろ! 名前を付けるなんてした事無いし、お前からそんな事を頼まれるなんて思わなかったから、あの時は考えても無かったんだよ!」

「ずっと言っておっただろ! それでようやく決めたと言って、聞いたら〝シロ〟と言われた我の気持ちを考えろ!」

 師匠の反論に対して、フェンリルはそう吠えた。
 フェンリルのその声には魔力が乗っていて、至近距離でその魔力を浴びた俺は足が震え、地面に座り込んでしまった。
 それからフェンリルと師匠は言い合いを初めて、どっちが悪いのか最終的に俺に意見を求めて来た。

「いや、そんなどっちが悪いかなんて俺には……」

 師匠達の言葉に困っていると、師匠は突然名案を思い付いたかの如く「そうだ良い事も思いついたぞ!」と叫んだ。

「俺の付けた名前が気に食わないなら、アルフに名前を決めてもらおう。それなら、良いだろ? どうせ、名前が無い事を根に持ってるんだけなんだろ?」

「その言い方は気に食わないが……どうだ。お主は我にどんな名前を付けてくれる?」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。何でそうなるんですか!? 師匠達の問題に巻き込まないでくださいよ!」

「アルフは俺の役に立ちたいって、前からずっと言ってただろ? ここで役に立ってくれ!」

 師匠の提案に断ろうとすると、師匠はそんな事を言ってきた。
 そ、そんな事を言われたら、考えなきゃならないじゃないか!
 そう俺は頼んできた師匠に、反論したい気持ちを抑え込みフェンリルの方を見て何か良い名は無いか考え始めた。

「〝フェルガ〟と言う名前はどうですか? そのフェンリルという種族の名前を少し変えただけですが……」

「フェルガか……うむ。良い響きだな、種族の名を少し変えただけだが凄く気に入ったぞ」

「俺の毛並みからとった名前と似てるじゃねぇか……」

「煩い。アレンの付けた名よりマシだし、こっちの方が強そうだろう」

 フェンリルはそう言うと、俺の中から魔力がごっそりと抜けフェンリルの体の中へと吸収された。

「えっ、今の何ですか?」

「アルフは知らないようだが、魔物に対して名付けをした場合は自身の魔力を多少使うんだ。こいつは、フェンリルって伝説上の生き物とか言われてるが、魔物ではあるからな」

「そうだったんですね。師匠は何でも知ってますね」

 そう俺と師匠が話していると、名前を付けられて満足していたフェルガはいきなり「なっ!?」と驚いた声を出した。

「どうした?」

「……我は、アレンの弟子の従魔になったみたいだ」

「「……ハァァ!?」」

 フェルガのその言葉に、俺と師匠は一瞬何を言われたか分からず間が開き。
 言葉の内容を理解した俺と師匠は、同時に驚き叫んだ。
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