外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件

霜月雹花

文字の大きさ
18 / 140
第一章

第18話 【修行開始・2】

しおりを挟む

「えっ、森の王を他の魔物に任せたの?」

 あの後、ボアの処理を終えた俺はそのまま調理を行い。
 朝食の用意が出来たタイミングで、師匠達を呼んで食事を始めた。
 その際、フェルガの用事についての話を聞くと、森の王を他の魔物に渡してきたと伝えられた。

「どうせ、我はアルフについて行くと決めていたからな。さっさと渡そうと思って、我の次にこの森で強い者に渡してきた。そいつも我と同じく、好戦的な者では無いから、この森は今までとそんな変わらないだろう」

「それなら、良いのかな?」

「もしかして、クロに渡したのか?」

 フェルガの言葉に対し、師匠は次の森の王に心当たりがあるのかそんな名前を口にした。

「うむ。あやつが我の次に強い魔物だからな、我が出て行くと聞いたら奴は驚いていたな」

「だろうな、そもそも元はクロがこの森の王でお前が奪った形だからな」

 師匠とフェルガの話を聞いていた俺は、その〝クロ〟と呼んでる魔物について聞いた。

「そうだった。アルフにはまだクロの事を伝えてなかったな、クロはブラックワイバーンという魔物で、元々はそいつがここの森の王だったんだ。それをフェルガが戦いを挑み勝利し、森の王の地位を手にしたんだ」

「……ぶ、ブラックワイバーンですか? ここの森って、そんなにヤバいんですか?」

「んっ? アルフはこの森について、何も知らんのか?」

 俺の反応を目にしたフェルガは、不思議そうな顔をして師匠を見た。
 師匠はそんなフェルガの言葉に「まあ、ここまで聞いたら話してもいいか」と言って、この森について教えてくれる事になった。

「ここは〝深緑の森〟ってという呼び名の森で、別名〝魔の森〟と呼ばれてる所だ」

「……えっ?」

 深緑の森、それは俺が住む国〝ベリアナ〟で、最も危険な地域と言われている場所だ。
 上位魔物が数多く生息しており、上級の冒険者でも苦戦するような場所。
 しかし、そこで採れる素材は価値の高い物が多く、例年死者が沢山出ている危険な森。
 ……そんな場所で俺は、修行をしていたの?

「秘密の訓練場って意味は、この場所が危険だから俺が訓練してると聞いて更に人が増えないように、あえて秘密にしてるんだ」

「そ、そうだったんですね……」

 俺は改めてこの場所が、どれだけ危険な場所か知り体が少しだけ震えた。

「心配せずとも、我とアレンが居るから大丈夫だぞ」

 そんな俺の姿を見て、フェルガはそう安心させるような口調でそう言った。
 それから食事を終えると、既に昼手前になっていたので改めて魔法の修行を始めた。
 ここが危険な場所だと知った俺だが、近くには師匠とフェルガが居る。
 危険な場所だが危険ではない状況に安心し、俺は集中して取り組んだ。

「……凄いな。昨日教えたばかりなのに、もう既に形になって来てるな」

 一日の修行を終え、最後にどこまで出来るようになったか見せた際、師匠は俺の出した魔法を見て感心したようにそう言った。

「ありがとうございます。師匠の教え方が上手だからですよ」

「だとしてもだ。……アルフは、言われた事を理解する能力が高い気がするな」

「ここに来て、教えて貰ったアレンの技をもう既に形になってきておるのか……凄まじい才能だな」

 師匠とフェルガはそう言うと、暫くはこの森で色々と教えても良さそうだという話を始めた。
 俺としても、ここで修行に没頭できるのは嬉しい。
 だけど、一つだけ問題がある。

「師匠。エルドさんから、長くても一週間と言われてませんでしたか?」

「あっ、そうだったな。忘れていた」

 修行出発する前、エルドさんの所に寄った時にエルドさんから〝期間は最長で一週間〟と言われている。
 その事を師匠は忘れているだろうなと思って言うと、師匠は俺の言葉を聞いて思い出していた。

「もし、帰って来なかったら商会の力を使って捜索をすると言っていたので、ちゃんと帰らないと大事になりますよ」

「そうなると、ここでの修行は後三日間だけだな……」

「ふむ……だとしたら、今の魔法の腕を上げるのに時間を使った方が良さそうだな。ある程度まで出来たら、王都でも訓練は出来るのだろ?」

「ああ、最初の方は難しくて人が居る所だと厳しいが。もう少し精度を高めたら、商会の広場でも訓練は出来る。そこまでが今回の目標にするか」

 師匠にそう言われた俺は、「はい。頑張ります!」と返事をした。
 それから修行の時間が終わり、夕飯の準備をしているとこの洞窟に何かが近づいてくる気配を感じた。
 それは俺だけではなく、師匠とフェルガも気付いていたが、何故か師匠達は溜息を吐き、近づいてくる気配の存在の方を見つめていた。

「やはり、アレンが居ったか」

 森の中から姿を現したのは、フェルガよりも大きな黒いドラゴン。
 こ、この魔物は、フェルガが話していたブラッグワイバーン!?

「クロ。何の用だ?」

 俺が驚いていると、師匠はそのワイバーンに向かって〝クロ〟と親し気に呼んだ。

「そこの駄犬が儂が昼寝をしてる時に、王を譲ると突然言って去っていったから確認をしに来たんだ。……んっ? そこに居る者は始めて見るな」

「俺の弟子だ。ってか、フェルガ。話をつけたんじゃないのか?」

「別に王を元の王に戻すだけだから、伝えるだけでよかろう?」

 フェルガは師匠の言葉にそう言い返すと、ブラックワイバーンの方を見つめると。

「それと我は犬では無い、種族で言えば狼だ! 寝てばかりの駄竜が!」

 ブラックワイバーンが口にした〝駄犬〟という言葉にフェルガは怒っていたのか、怒気を含んだ声音で叫んだ。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?

名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」 「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」 「それは貴様が無能だからだ!」 「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」 「黙れ、とっととここから消えるがいい!」  それは突然の出来事だった。  SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。  そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。 「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」 「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」 「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」  ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。  その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。 「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。 そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。 【第二章】 原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。 原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...