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第一章
第20話 【修行開始・4】
しおりを挟む「アルフ。本当に料理初心者なのか? 普通に美味しいぞ?」
「葉っぱなぞ、食って美味い訳ないと思ってたが。これはかなり美味いな……料理の才能もあったのだな」
俺の作ったスープを食べた師匠達は、そう俺の料理を絶賛してくれた。
正直、初めてちゃんとした料理で心配だったけど〝美味しい〟と言われて、俺は心の底から安心した。
「これでまずかったら、今から作り直しだったので良かったです」
それから朝食を食べ終えると、今日の修行を始めた。
午前中はトレーニングをメインに、午後からは師匠から教わった技の習得を目標に魔法の修行を行った。
それから特に新しく事件は無く、修行日最終日を迎えた。
「明日、王都に戻る予定ですけど。フェルガって、このまま連れて行っても大丈夫なんですかね?」
「……確実に大事になるだろうな」
そう師匠は言い、一緒に悩んでいると師匠は何か思い出した様だった。
「確か【従魔】のスキルには、従魔化させた魔物を生活させる異空間を作り出せると聞いた事がある。アルフの【従魔】スキルは、神の関与した疑いで最高レベルだから、異空間に入れる事が可能だと思うぞ」
「異空間を作る出すなんて……スキルにそんな効果があるんですか?」
「本来、異空間を作る場合は【空間属性魔法】が必要となってくる。しかし、一部の特別なスキルには別の力で開ける異空間を作り出せた筈だ」
師匠からそう教えて貰った俺は、フェルガに「試しても良い?」と尋ねた。
「別に構わんぞ」
「ありがとう。それじゃ、行くよ」
フェルガに確認を取って、俺は異空間の中に入る様に念じた。
すると、フェルガは一瞬にして目の前から消えた。
「ほ、本当に消えた!?」
「成功したな」
「アルフ。これは我の声は聞こえるか?」
フェルガが消えた事に驚いていると、突然俺の脳内にフェルガの声が聞こえた。
その声に再び驚き、フェルガにどういう状況なのか聞いた。
すると何と、【従魔】スキルで入った異空間から俺に直接話しかける事も可能らしい。
更に俺が目を瞑って、フェルガの様子を見ようとすると、その異空間を上空から眺めるような形で脳内に映った。
「【従魔】のスキルは色々と出来るみたいだな。この際、今日は徹底的に【従魔】スキルの検証をしてみるか?」
それらの事を師匠に伝えると、最終日の予定を変更して【従魔】のスキルを検証する動きとなった。
そうして、一日検証して分かった事はいくつかある。
まず【従魔】のスキルは、単純に魔物を〝従魔化〟させるだけでなく、魔物側にも恩恵を与えるスキルみたいだ。
フェルガは元々能力が高く、気付いていなかった事だが。
検証した結果、元の能力から二倍程の能力となっていたみたいだ。
「……フェルガが居れば、今後の生活も安定しそうですね」
「それは俺も思う。二倍の能力って事は、俺と力の差があったが今はそんなに無いだろうからな」
師匠、それはそれで師匠の強さが異次元過ぎでは無いですか?
そう俺は心の中で思ったが、あえて言わなかった。
「能力が二倍になるのか……儂もアルフの従魔になっても良いかもしれんな……」
「クロまで俺の従魔になったら、森の王を決める為に森が騒がしくなるんじゃないの?」
クロを紹介してもらって数日が経ち、クロから〝さん〟を取って気軽に喋ってほしいと言われた。
正直、少し抵抗があったが徐々に慣れて行き今では普通に会話が出来ている。
「む……それはいかんな」
能力が上がる事に興味があったクロだったが、俺の言葉で自分の言葉を撤回した。
そして【従魔】のスキルには他にも能力があり、一つは最初に試した従魔を入れる異空間を作り出す能力。
その異空間はフェルガの感想では、かなり過ごしやすい空間ではあるらしい。
主人である俺からみても、その中で暮らしてたフェルガは凄く快適そうだった。
異空間に入れると知ってから、夜は必ずそこに入って寝る程、フェルガは気に入っていた。
「後は地味に便利だと思ったのは、遠くに離れていても会話が出来る事ですね」
「喋れるフェルガだからこそ、意思疎通が出来るのは強いよな」
「はい。それに会話こそできなくても、俺からの指示は出せると思うのでこれから従魔が増えたとしても便利だと思います」
一日の検証で得られた情報はこのくらいで、これ以上の事は王都に戻って調べようという事になった。
そうして検証を終えて、俺は夕食の準備を始めた。
夕食はクロと今日で別れるので、一番豪華な料理にしようと色んな料理を作った。
修業期間で魔法のレベルが上がった俺だが、料理の腕もそこそこ上がって満足の行く一週間を過ごした。
「う~む、美味い飯も今日で最後か……フェルガはいいな。アルフ達に付いていけて」
クロは若干拗ねたような声音でそう言うと、押し付けた形のフェルガはいつもなら喧嘩を始めているが今日は喧嘩を始めなかった。
「クロ。もし次の王が決まって、森が騒がしくない状態を作れたらいつでも俺の所に来ても良いよ。クロが来たいならだけど」
「それは本当か? 嘘ではないだろうな?」
「うん。師匠もいいですよね?」
「まあ、アルフの決める事だから俺は構わん」
そう俺と師匠が言うと、クロは「こうしてはおれんッ!」と出会って、初めて見る真剣な顔をして飛び立って行った。
「今、もしかして次の王を探しに行ったのかな?」
「多分、そうだろうな。明日までに見つかれば、本当について来ると思うが良かったのか?」
「うん。クロと離れるの実は俺も寂しかったからね。それにクロが居れば、空も飛び放題だしね」
そうして、秘密の訓練場の最終日を終えた。
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