22 / 140
第一章
第22話 【商会長の怒り・2】
しおりを挟む広場へと移動して来た俺達一行に対し、先に広場を使っていた商会の人達は驚いていた。
まあ、自分達の商会長とその商会でも一目置かれてる師匠が同時に来たら、驚くのは分かる。
「さてと、アルフ。フェルガを呼び出せるか?」
「はい。大丈夫です。フェルガ。出て来て」
師匠の言葉に俺は返事をして、フェルガに出て来るように念じると。
俺達の目の前にフェルガは姿を現した。
「……フェンリルか?」
「はい。フェンリルのフェルガです。色々とありまして、俺の従魔になったんです」
「……フェンリルを従魔にした!?」
俺の言葉を聞いたエルドさんは数秒間固まり、硬直が解けると出会って初めて聞くレベルの大きな声で叫んだ。
そんなエルドさんの叫びに、周りで見ていた商会の人達もフェルガの姿をみて固まっていたのが解け、広場は騒がしくなった。
「周りの人達を退いてもらって見せればよかったですね」
「そうだな、いずれ知られると思って気にしなかったが初めて見たらああなるか……」
俺と師匠は、周りの反応を見てそう反省をした。
あの後、落ち着きを取り戻したエルドさんがその場を落ち着かせ。
あのままあの場に居たら、話しが出来ないからとエルドさんの仕事部屋に戻って来た。
「まさか、フェンリルを従魔化させて帰ってくるとは予想もしてなかったぞ……」
「偶々、従魔にしちゃったんですよね」
そう俺は言って、エルドさんにフェルガを従魔にした経緯を伝えた。
「成程、名付けをして従魔にしてしまったのか……普通、そんな事はありえないと思うが。実際、従魔にしておるみたいだしな」
エルドさんは俺の話を聞くと、納得した様子でそう言った。
それからエルドさんから、従魔を使役しているのなら冒険者ギルドで登録しないといけないと言われた。
「冒険者ギルドですか……」
「そう言えば、アルフは冒険者ギルドから追い出されたと言っておったな。あの時は、そこまで詳しい事は聞いておらんかったが何故追い出されたのか聞いても良いか?」
初めて会った時、愚痴程度でしかエルドさんに話してなかった俺は、冒険者ギルドでされた事をエルドさんと師匠に話をした。
登録をしようとしたら、スキル一つである事を大きな声で馬鹿にされ、その場に居た冒険者達からも馬鹿にされた事を話した。
「「……」」
エルドさんと師匠は、俺の話を聞くと二人から怒りのオーラの様なものを感じ取った。
そんな二人は視線を合わせると頷いた。
「アルフ。話し合いは今日はここまでにしよう。修行で疲れてるだろうし、今日は早めに休むんだぞ」
「は、はい? わ、分かりました」
真顔で言ってくる師匠に、断れない雰囲気で圧された俺は返事をした。
そして俺だけ仕事部屋から出て行くと。
「緊急会議を行う。至急、幹部達は儂の会議室に集まるように」
と、放送が流れた。
その放送を聞いた商会の人達は、何事だ? となり、急いで会議室に向かっていた。
「もしかして大事に発展しちゃうのか?」
仕事部屋でのエルドさん達の表情は、明らかに怒っていた。
俺は不安だなと考えながら寮の方へと移動して、部屋に戻る前にお風呂に入ろうと風呂場へと向かった。
「アルフ君。さっき幹部の人達が会議室に呼び出しされてたけど何か知ってる?」
風呂から上がり、食堂に来ると食堂のおばちゃん達からそんな事を聞かれた。
「多分、俺が冒険者ギルドでされた事を聞いてから会議の招集の放送が鳴ったので、多分俺が原因かも知れません」
「冒険者ギルドでされた事? それって、私達も聞いても大丈夫な事かしら?」
「大丈夫ですよ。特に隠す様な事ではないので」
そう言って俺は、食堂のおばちゃん達にエルドさん達に話した事と同じことを伝えた。
すると俺の話を聞いたおばちゃん達は、「冒険者ギルドも落ちたわね」と冷めた表情でそう言った。
「昔はもっと良い所だったけど、最近の王都の冒険者ギルドは駄目ね~」
「王都にある冒険者ギルドだから、頭に乗ってるのよ。自分達が偉いとでも思ってるんでしょうね」
「最近、冒険者の質も落ちたと思ってたけどギルド自体の質が落ちてたのね。本当に呆れたわ」
おばちゃん達は次々と冒険者ギルドの悪口を言うと「何かあったら力になるからね」と言ってくれた。
その後、おばちゃん達から大盛りの食事を用意してもらった。
「ひ、久しぶりの食堂の料理だからって食べ過ぎたな……」
最初の時点で大盛りを用意してもらった俺は、それと同じ量をもう一度食べた。
その結果、食べ過ぎて苦しくなり部屋に戻ってきた俺は直ぐにベッドに横になった。
「フェルガも美味しそうに食べてたし、やっぱりおばちゃん達の料理は凄いな……」
既に俺に従魔が居る事は商会の人達には伝わっていて、おばちゃん達もフェルガの存在を知っていた。
なのでフェルガの分の料理も用意してもらい、フェルガも一緒に食事をした。
「あの者達の飯は本当に美味かったぞ!」
食事を終えたフェルガは満足気にそう言って、沢山食べてお腹いっぱいになったのか今は異空間の中で寝ている。
そんな俺も、少し休んだおかげで苦しさが治まって来たので寝る事にした。
1,153
あなたにおすすめの小説
なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?
名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」
「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」
「それは貴様が無能だからだ!」
「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」
「黙れ、とっととここから消えるがいい!」
それは突然の出来事だった。
SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。
そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。
「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」
「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」
「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」
ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。
その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。
「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。
いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。
そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。
【第二章】
原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。
原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる