外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件

霜月雹花

文字の大きさ
26 / 140
第一章

第26話 【冒険者登録・2】

しおりを挟む

「そんなスキル……。冒険者ギルドの受付係として、これまで様々なスキルを見てきましたが、そんなスキルは初めて聞きます」

 アンナさんは師匠からスキルについて話を聞くと、不思議な人を見るような視線で俺を見た。
 それから記入を終えた用紙をアンナさんに渡し、アンナさんは部屋の外に出て行った。

「アルフ。お前から見て、アンナはどうだった? 王都の冒険者ギルドとかなり違かっただろ?」

「はい。王都の冒険者ギルドの受付での対応と全く違いました」

「あれが普通なんだ。王都の冒険者ギルドがおかしいんだ」

 師匠はそう言いきると、俺に「冒険者ギルドはまだ怖いか?」と続けて聞いて来た。

「いえ、もう怖くありません。ありがとうございました」

「トラウマが解消されたなら良かったよ。エルドさんから、もしこのままアルフがギルドを怖がるのであれば、王都の冒険者ギルドは酷い目に合わせるって言ってたからな」

「……エルドさんはそれが出来る力を持ってるから、怖いですね」

 国から認められた商人であるエルドさんであれば、いくら王都の冒険者ギルドであろうと制裁は免れないだろう。
 その後、10分程経ちアンナさんは戻って来た。

「遅かったな、何かあったのか?」

「少し別件で呼ばれていました。アレン様達の対応をしていると言ったのですが、無理矢理そちらを手伝わされ遅れてしまいました。申し訳ございません」

 師匠の言葉に対して、アンナさんは直ぐに謝罪をした。
 それから冒険者となる俺の実力を測る為、訓練場の方へと移動をする様に言われた。
 アンナさんの指示に従い、俺と師匠は一緒にギルドの訓練場へと移動して来た。

「この時間は、大体人が居るはずだろ? 何で誰も居ないんだ?」

「仕事を押し付けられた代わりに、訓練場を貸し切りにしてもらったんです。その方がアルフレッド君も全力を出せると思いまして」

 アンナさんがそう言うと、師匠は周りを見て「本当に仕事が出来るな」と言った。
 それから俺はアンナさんに、測定の方法について教えてもらった。
 登録の用紙に得意分野について書く欄があり、俺はそこに〝魔法〟と記入した。

「剣も使えるのにどうして魔法にしたんだ?」

 剣も使える俺が魔法と記入した事に対し、師匠は疑問に思ったのかそんな質問をした。

「そこはやっぱり、師匠の弟子ですから俺も魔法使いとして冒険者になろうかなと」

 そう俺が言うと、師匠は笑みを浮かべ「本当に師匠想いの奴だな」と嬉しそうに言った。
 そうして魔法使いとして試験を受ける事になった俺は、当然の事だが試験では魔法の実力を測る試験となっていると言われた。
 試験方法はアンナさんが放つ魔法に、俺が魔法を当てるというやり方。
 この試験では魔法の威力、速度、精度を測ると説明された。

「剣が得意な人であれば剣術の試験をするんですか?」

「はい。その人が得意だと思った事に合わせ、試験を変えています。その方が登録に訪れた方の実力を見れますからね」

 そうアンナさんから教えて貰った俺は、試験を受ける為に位置に移動した。

「それでは試験を始めます。アルフ君、準備は大丈夫ですか?」

「はい!」

 アンナさんの言葉にそう返事をした俺は、気合を入れて試験に臨んだ。
 そんな俺を見たアンナさんは、複数の魔法を放った。
 俺はそのアンナさんの魔法に対し、得意な【水属性魔法】で全ての魔法を一瞬で撃ち落とした。

「えっ?」

 アンナさんはその光景を見て驚き言葉を失い。
 師匠は逆に、笑みを浮かべて「流石、アルフだ。よくやった」と褒めてくれた。
 師匠に褒められた俺は、合格基準はクリアできたのかドキドキしたまま、驚き固まっているアンナさんに試験結果を聞いた。

「アンナさん、今の魔法は合格基準に達してますか?」

 そう聞くと、数秒間固まっていたアンナさん「へ?」と意識が戻り。

「あっ、はい。ご、合格です」

「師匠! 合格しましたよ!」

「お疲れ様」

 俺は〝合格〟と言われて嬉しくなり、師匠に報告をすると。
 師匠は笑みを浮かべながら、そう俺に労いの言葉を掛けた。

「あ、アレン様。アルフ君の実力って、相当高いんですね……」

「アンナ。一応言っておくが、アルフは手加減していたぞ」

「えっ、それは本当ですか!?」

 師匠の言葉に驚くアンナさんに、俺は「はい」と頷きながら言った。

「その最初は本気を出そうと思ったんですけど、自分でも試験に挑むって事で少し緊張してて本気を出せなかったんです……」

「まあ、アルフはギルドにトラウマがあるからな」

「という事は、先程の魔法は失敗してあれですか?」

「そうなります。自分がここまで緊張に弱いなんて、初めて知りました」

 俺は反省しつつそう言って、今後は精神面も鍛えないといけないなとそう考えた。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?

名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」 「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」 「それは貴様が無能だからだ!」 「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」 「黙れ、とっととここから消えるがいい!」  それは突然の出来事だった。  SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。  そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。 「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」 「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」 「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」  ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。  その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。 「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。 そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。 【第二章】 原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。 原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...