外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件

霜月雹花

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第一章

第65話 【迷宮探索・1】

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 【初心の迷宮】は既に攻略された迷宮。
 しかし、もしもの時の為に国の兵士が入口を監視している。
 その理由は迷宮は未だ謎の多い部分が多く、まだ整備が整っていなかった頃に多くの事件が起きた。
 攻略済みだと誤認されていた迷宮から大量の魔物が現れたり、攻略されて放置されていた迷宮を悪党に利用されていたり。
 様々な事件を経て、発見した迷宮は全て監視をするようになっていった。

「あれ、アレンさんじゃないですか? どうして、こんな迷宮に来たんですか?」

 迷宮に到着して迷宮の入口に近づくと、迷宮の警備をしている兵士が師匠を見て驚いた顔をしながらそう言った。

「弟子の修行の為に来たんだ。ここなら人も居ないからな、国はもう俺が弟子を取った事は把握してるだろ?」

 師匠がそう言うと、兵士は俺の事をジッと見つめてきた。
 それから俺と師匠はその兵士に冒険者カードを見せ、迷宮の中へと入った。

「師匠。兵士の方に俺が弟子って事を伝えてましたけど、良かったんですか?」

「んっ? 国は既にアルフの事を調べ上げてるから、兵士に隠しても意味が無いからな。それなら、変に隠さず普通に対応した方が面倒じゃないだ」

「俺って国からも調査対象の人間なんですか?」

「エルドさんのお気に入りだし、色々とアルフは商会に来てから既に目立っていたからな。それにアルフの場合は、元貴族だからってのもあるだろうな」

 出生が貴族、それもなんだかんだ大きな家だったから国も気にしてるのかな?

「なあ、アルフ。もし元の家族から戻ってこいと言われたら、戻る事とか考えたりとかはしてるのか?」

「いえ、全く。考えていません」

「そ、即答か……アルフのルクリア商会への愛は凄まじいな」

「師匠も同じだから分かると思いますけど、エルドさんに助けて貰えなかったら今の俺はありませんからね。実際には凄いスキルを持っていましたけど、それを知れたのもルクリア商会での環境があったからです」

 【経験値固定】そのスキルがどんなスキルなのか、家に居た時に家族と共に調べていたら俺も違う道があっただろう。
 だけど、あの人達は【複合魔法】が無くスキルが1つしかないからと、俺を見限り捨てた。
 今の俺があるのはエルドさんと出会い、ルクリア商会に拾ってくれたおかげだ。

「確かに、それはそうだな。アルフの場合、スキルの事をちゃんと理解しないと意味が無かったからな……」

「はい。これに関しては家でも調べようと思えば調べられたのに、家族だった人達はそれをせずに謹慎生活をさせましたからね。今更俺が強くなったからと言って、誘われても戻るつもり意味はないです」

「ふむ……じゃあ、もしも国から誘われたらどうする?」

 元の家族に対しての評価を言った俺に対し、師匠はそんな質問をしてきた。

「それも無いですね。正直、国に誘われたからと行くつもりはありません」

「そこまで強く言うって、アルフは国が嫌いとかそういう考えを持ってるのか?」

「いえ、そこは安心してください。王族に一人、友人が居るので国を嫌いとは思ってません」

 家から出さない様な生活を強いられていた俺だが、それでも国が開催するパーティーなどには出席していた。
 その際、王族の一人と友人と呼べる関係になっている。

「へぇ、アルフの昔の事はあまり知らないが、友達は居たんだな」

「家の教育上、沢山は居ませんけどね」

「普通の貴族だと、人脈を広げるのが普通だけどアルフの実家の考えは違ったんだな」

「そうですね。まあ、全部俺も知ってる訳じゃないですが……多分、俺や妹を言いように扱える道具にしたかったんじゃないですかね? まあ、俺も妹もあんな親達の言葉を信じる程、馬鹿じゃなかったので問題ありませんでしたけど」

 偶に魔法使いみたいな恰好をした人間が、俺やクラリスの前で怪しい魔法を使っていた事がある。
 だけど、俺もクラリスも魔法に対する対抗力が高かったのか、親達の言葉を信じてなかったからか効果は無かった。

「話を聞いてると、尚更アルフの家はおかしな所だらけだな……」

「そこは認めます。あの家は変な所です」

 そう言いながら、俺と師匠は迷宮の中を進んでいった。
 そして迷宮に入って10分程経ち、ようやく初めて魔物と遭遇した。
 この迷宮は基本的に低級魔物しか出ない為、現れたのはゴブリン5体だった。

「早速出て来たみたいだな。アルフ、久しぶりの戦闘だが大丈夫か?」

「はい! この日の為に準備してきましたから!」

 そう俺は気合を入れて言い、師匠の前に出た。
 ゴブリンが5体、なら〝水槍〟で倒せるだろう。
 そう思った俺は、同時に5本の水の槍を構築して、ゴブリンに向かって放った。
 外のゴブリンとは違い、動きの迷宮のゴブリンは速いみたいだが、俺の魔法はそれ以上に速い。
 避けようとしたゴブリンの頭部をシッカリと狙った魔法は着弾し、5体のゴブリンは一瞬にして絶命した。

「魔法の威力、速度、共に以前よりも上がってるみたいだな。俺が居ない間もしっかりと訓練していたみたいだな」

「はい! 強くなる為に頑張りました」

 師匠から褒められた俺は、嬉しさを感じつつそう師匠に言った。
 それから魔物が出始めた為、全ての魔物を狩りながら迷宮の中を進んでいった。
 師匠曰く、大体一階層に100体前後は居るみたいだ。
 迷宮の魔物は迷宮の魔力で作られている存在だから、迷宮を完全に破壊しない限りは魔物は時間が経てば復活すると教わった。

「師匠。魔物は死んでも時間が経てば復活するって事は、迷宮から溢れたりはしないんですか?」

「そこは大丈夫だ。と言いたい所だが、基本的に迷宮から魔物があふれる事は無い。だがあまりにも迷宮の中の魔物が増えすぎると、普段迷宮の外に出ない様に迷宮が張ってる結界が崩壊して外に出てしまう」

「そ、それはヤバいですね……」

「発見された迷宮は基本的に魔物が溢れないように、一定の期間があいたら駆除をされているから、そんな事件が起こる事はほぼ無い。ここ数十年、一度もそんな事件は起きてないからな」

 そんな迷宮の話を聞いた後、レベル上げの為に俺は魔物を探し始めた。
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