特性【プレイヤー】に覚醒した俺は、前世の記憶を思い出し異世界を楽しむ

霜月雹花

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第一章

第1話 【異世界・1】✤

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 10歳になると、教会で神から能力を授かる〝儀式〟を受ける事が出来る。
 物心がつくまえに両親に孤児院に捨てられた俺は、強い能力が貰えますように祈りながら教会で儀式を受けた。
 その結果、俺は未知の特性【プレイヤー】を授かった。

「うう、まだ頭が痛い……まあ、仕方ないよな人一人分の記憶を引き継いだって事だし」

 前世の記憶。
 こことは違う世界で生まれ、大人になるまでの記憶。
 そして神様にこの世界に転生する機会を貰った俺は、複数の能力が合わさった【プレイヤー】という能力を作った。
 数日前に受けた儀式では、〝特性、スキル、固有能力〟の3つから能力を授かる事が出来る。
 俺は事前にその中の〝特性〟を予め作っておいて、儀式の際に授かるようにしていた。

「取り合えず、ステータスでも確認するか」


名 前:クリス
年 齢:10
性 別:男
特 性:プレイヤー

レベル:1
筋 力:10
体 力:10
魔 力:10
敏 捷:10
・固有能力
・スキル
・加護
豊穣神の加護


「うん。物凄く弱いな、でも【プレイヤー】の能力がちゃんと機能してるって事だな」

 【プレイヤー】の能力の一つに、付与時に能力をリセットするという機能をつけていた。
 それまでの頑張りを無駄にする事になるのだが、デメリットをつけないと強力な特性である【プレイヤー】を授かる事が出来なかった。
 強すぎる特性にはそれ相応の物を支払う必要があり、俺はこの能力のリセットを神様に提案した。

「まあ、逆にそれのおかげで無駄なスキルとか能力値のバランスもとれるわけだし、悪い事ばかりではないからな」

 リセットの中には病気関係も無くす事が出来るので、転生後に何かしら病気にかかっていた場合の事を考えて俺は作った。
 実際、そのおかげで俺は儀式を受ける前、栄養失調やら軽い病気にも掛かっていた。
 今はそれらが無くなり、あるのは昨日から何も食べてないので空腹感があるだけだ。

「っと、そうだ。他の能力も確認してみるか」

 その後、俺は【プレイヤー】の能力検証を行った。
 異空間ボックス、鑑定、成長促進、地図、転移。
 本当はもっと便利なスキル等も考えていたが、これが限界だった。
 錬金術や異世界の物を呼び出すショップの様な能力を付けたかったが、流石に能力が強すぎて無理だった。

「スキルに関しては、成長促進で自力で覚えられたらいいやで諦めたけど、やっぱりもう少し欲しかったな……」

 ただこの世界の基準から考えて、既に【プレイヤー】の能力だけでも生きてはいけると神様からは言われた。
 しかし、俺はこの異世界で存分に楽しみたいから、ギリギリまで欲張って考え込んだ。

「さて能力の確認は終わったし、早速だけど動き出すか」

 俺の住んでる孤児院は王都にあるのだが、10歳を迎えた者は一年以内には自立しないといけない決まり。
 その為、孤児院で暮らす子供達は自立できる最低限の能力を望んで儀式を受けていた。
 中には使えない能力しか貰えない者もおり、最低限暮らせるだけの技術をギリギリまで習得してから出て行っている。

「すみません。冒険者登録にきました」

 朝食を軽く食べてから俺は孤児院を出て、王都の大通りを歩いてやって来たのは異世界の定番である冒険者ギルド。
 食堂兼酒場が併設されており、多くの冒険者や冒険者に依頼を出す人達で賑わっている。
 俺はそんな冒険者ギルドの受付の列に並び、自分の番になると受付嬢の女性にそう伝えた。

「冒険者登録ですね。登録用紙に記入が必要ですが、読み書きは出来ますか?」

「はい。自分で書けます」

 異世界は識字率が低く、冒険者になる者の中には文字をほぼ読めない冒険者も居る。
 俺はというと、神様の計らいで識字能力に関しては問題ないようになっている。

「記入出来ました」

「ありがとうございます。冒険者カードの発行を行いますので、少々お待ちください」

 そう言って受付嬢の方は奥に行き、5分程して戻って来た。
 そして冒険者の証である〝冒険者カード〟を受け取った俺は、そのカードを自分の物と認識させる為に血を一滴垂らした。

「はい。これでこちらのカードはクリス様の物となりました。今後は、依頼を受ける際等で提出してください」

「分かりました。早速ですけど、何か初心者向けの依頼とかってありますか?」

「初心者向けですと、常設依頼の薬草採取等はどうでしょうか? 知識が多少必要となりますが、最低限の収入となるので初心者の方は大体やっている依頼ですね」

 そう受付嬢の方に教えて貰った俺は、ギルドから薬草図鑑を貸してもらって近くの席に座り図鑑を見る事にした。
 この世界には写真等は無いが、絵で図鑑には薬草とその薬草の情報が描かれていた。

「普通、儀式明けの子供は我先と討伐依頼に出るが貴方は違うみたいだね」

「ん?」

 図鑑を見ていると、そんな俺に声を掛ける人物が居た。
 顔を上げて確認すると、見た目は全身を銀色の鎧に身を包んでいるが、先程聞いた声は女性だった。
 そしてその兵士みたいな人は、俺と同じテーブル席に座ると兜を脱ぎ顔を見せた。
 その女性は美しい金色の髪に、エメラルドグリーンの瞳をしていて兜を脱いだ事で周りの冒険者が黙り静寂が訪れた。

「まあ、戦闘系のスキルが無いので知恵を振り絞ろうかと」

「へぇ? 中々、考える頭を持ってるわね。私は、アリシア・フォン・クリーンヒルト。貴方の名は?」

「クリスです。えっと、家名を持ってると言う事は貴族様ですか?」

「貴族は貴族だけど、そう気にしなくても良いわよ。今は同じ、冒険者として話しているから」

 ニコッと笑みを浮かべるその女性に対し、俺は異世界生活の初っ端からこんな出会いをするとはと内心驚いていた。
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