2 / 80
第一章
第2話 【異世界・2】
しおりを挟む
「成程、アリシアさんは政略結婚が嫌で冒険者になったんですね」
「そうね。そもそも貴族として生きる事自体が私の性格に合わなくて、幼い頃から家から出てやると決めていたわね。ただ今も両親が完全に離してくれなくて、今も抵抗中という訳ね」
あの後、何故かアリシアさんと意気投合してしまった俺は朝食がまだだったので奢ってもらう事になった。
そして、その際に身の上話としてアリシアさんが冒険者になった経緯等を聞いて、短い時間だが親しい関係となっていた。
「しかし、私の顔と名前を知ってもクリスは全く恐れなかったわね」
「そんな人じゃないと感じたのもありますけど、こんな幼い子供が不敬をしたからとこんな公共の場で死ぬ事も無いだろうという安心感からですね」
「ふむ……肝が据わってるという事ね。冒険者として大成しそうな性格ね」
「そう言ってくださりありがとうございます。アリシア先輩」
〝先輩〟と付けて呼ぶと、アリシアさんは目をキョトンとして驚くと、直ぐにその意味を理解して豪快に笑った。
「こんな面白い子供は初めてね。偶々気になって声を掛けたけど、正解だったわ」
「俺もちゃんと受け応えして良かったです。こうして腹いっぱいご飯食べられたので、依頼前に倒れるところでした!」
「そう言えば、クリスは孤児院出身だと言ってたわね。ふむ、用事が終わるのがまだ数日かかるから……」
アリシアさんはそう小声で呟くと、俺の顔をジッと見つめて来た。
「クリス。料理と掃除は出来る?」
「えっと、多少は? その道のプロと比べたら、そりゃ劣りますけど人並程度には出来るとは思いますよ」
「だったら、私の家で住むのはどう? 孤児院は直ぐに出なくても、確か一年以内に出ないといけないんでしょ? 私の家だったら、宿に掛かるお金も掛からないし、ギルドからも近くて直ぐに休めるわよ。勿論、食材の費用は私が出すから、ご飯にも困らないわ」
「えっ、良いんですか!?」
まさかの提案に対して、俺は驚き立ちあがってそう聞き返した。
「私も普段だったらこんな提案はしない。だけど、クリスはいつか大物になりそうな予感がするから今の内に投資をしておこうと思って」
「俺としては衣食住の二つが解決出来る提案なので、物凄く受けたいですけど、そのアリシアさんの家の方達はどうも思わないんですか?」
「言ったでしょ〝私の家〟って、冒険者で稼いだお金で最近買ったのよ。だから、両親から文句言われる筋合いはないの」
自信満々そうにアリシアさんはそう言って、俺としてはこの提案は有難いので暫く世話になる事にした。
それから飯を食べ終えた後、受付嬢の方に図鑑を返してまずはアリシアさんの家に案内してもらった。
アリシアさんの家は、本当に冒険者ギルドから近く徒歩5分圏内にあった。
二階建ての一軒家で狭いが庭も付いており、一階に台所と水回り、そして小さめの個室があり二階には大きな部屋が二つあった。
「俺はここで良いですよ」
「いいの? 二階の部屋の方が広いし、使ってないからそっちを使っても良いのよ?」
「大丈夫です。逆にこの狭さが気に入ったので」
その後、家の案内も終えたのでアリシアさんとは別れて、俺は図鑑に載っていた薬草を採りに街の外に出た。
そして歩く事10分、近くの薬草の群生地に到着した俺は【プレイヤー】の能力の一つ、鑑定を使って薬草採取を始めた。
「おお、こんな風に分かるのか! やっぱり作って良かった鑑定能力!」
鑑定能力のおかげで、苦労する事も無く俺は薬草採取を行った。
勿論、薬草を入れる場所は同じく【プレイヤー】の能力の一つ異空間ボックスに入れる。
異空間ボックスはまだ容量は少ないが、魔力の数値依存で俺が成長すれば今よりも大量に物を入れる事が出来る。
ちなみに個数制限では無く、種類として登録されるので今は10種類まで入れる事が可能となっている。
「沢山採ってきましたね」
「はい。図鑑のおかげでどれが薬草か直ぐに分かったので、沢山取れました。リンさん、よろしくお願いします」
朝も対応してくれた受付嬢のリンさんに、俺は採って来た薬草を提出した。
勿論、鑑定を使って採ってきてるので間違いは無いが改めてギルドの方で薬草かどかの鑑定作業が行われた。
数が数なので、鑑定に10分程掛かり俺は初の依頼達成として報酬を受け取った。
「報酬は半分は貯金に回して、残りは生活用品を少し揃えるか……」
正直、衣食住の衣以外全てが揃うとは思いもしなかった。
スタートダッシュとしては上々だし、アリシアさんにんは感謝しないとな……。
「でも用事で三日は家に帰れないって言ってたからな、それまでにお礼を考えないと」
一先ず、俺は生活用品の買い出しを終えて家に戻って来た。
アリシアさんは既に用事に出掛けており、ここから三日間は一人で生活する事になっている。
「家の中は自由にしていいとは言われてるけど、流石にアリシアさんの部屋は入れないな、取り合えずその他の部屋の掃除から始めるか」
女性の一人暮らし、冒険者のアリシアさんは掃除が苦手なのか荷物が大雑把に置いたままの状態となっている。
アリシアさんの私室も他の部屋と同じだが、流石に無断では入れないのでその他の部屋の掃除を始めた。
「そうね。そもそも貴族として生きる事自体が私の性格に合わなくて、幼い頃から家から出てやると決めていたわね。ただ今も両親が完全に離してくれなくて、今も抵抗中という訳ね」
あの後、何故かアリシアさんと意気投合してしまった俺は朝食がまだだったので奢ってもらう事になった。
そして、その際に身の上話としてアリシアさんが冒険者になった経緯等を聞いて、短い時間だが親しい関係となっていた。
「しかし、私の顔と名前を知ってもクリスは全く恐れなかったわね」
「そんな人じゃないと感じたのもありますけど、こんな幼い子供が不敬をしたからとこんな公共の場で死ぬ事も無いだろうという安心感からですね」
「ふむ……肝が据わってるという事ね。冒険者として大成しそうな性格ね」
「そう言ってくださりありがとうございます。アリシア先輩」
〝先輩〟と付けて呼ぶと、アリシアさんは目をキョトンとして驚くと、直ぐにその意味を理解して豪快に笑った。
「こんな面白い子供は初めてね。偶々気になって声を掛けたけど、正解だったわ」
「俺もちゃんと受け応えして良かったです。こうして腹いっぱいご飯食べられたので、依頼前に倒れるところでした!」
「そう言えば、クリスは孤児院出身だと言ってたわね。ふむ、用事が終わるのがまだ数日かかるから……」
アリシアさんはそう小声で呟くと、俺の顔をジッと見つめて来た。
「クリス。料理と掃除は出来る?」
「えっと、多少は? その道のプロと比べたら、そりゃ劣りますけど人並程度には出来るとは思いますよ」
「だったら、私の家で住むのはどう? 孤児院は直ぐに出なくても、確か一年以内に出ないといけないんでしょ? 私の家だったら、宿に掛かるお金も掛からないし、ギルドからも近くて直ぐに休めるわよ。勿論、食材の費用は私が出すから、ご飯にも困らないわ」
「えっ、良いんですか!?」
まさかの提案に対して、俺は驚き立ちあがってそう聞き返した。
「私も普段だったらこんな提案はしない。だけど、クリスはいつか大物になりそうな予感がするから今の内に投資をしておこうと思って」
「俺としては衣食住の二つが解決出来る提案なので、物凄く受けたいですけど、そのアリシアさんの家の方達はどうも思わないんですか?」
「言ったでしょ〝私の家〟って、冒険者で稼いだお金で最近買ったのよ。だから、両親から文句言われる筋合いはないの」
自信満々そうにアリシアさんはそう言って、俺としてはこの提案は有難いので暫く世話になる事にした。
それから飯を食べ終えた後、受付嬢の方に図鑑を返してまずはアリシアさんの家に案内してもらった。
アリシアさんの家は、本当に冒険者ギルドから近く徒歩5分圏内にあった。
二階建ての一軒家で狭いが庭も付いており、一階に台所と水回り、そして小さめの個室があり二階には大きな部屋が二つあった。
「俺はここで良いですよ」
「いいの? 二階の部屋の方が広いし、使ってないからそっちを使っても良いのよ?」
「大丈夫です。逆にこの狭さが気に入ったので」
その後、家の案内も終えたのでアリシアさんとは別れて、俺は図鑑に載っていた薬草を採りに街の外に出た。
そして歩く事10分、近くの薬草の群生地に到着した俺は【プレイヤー】の能力の一つ、鑑定を使って薬草採取を始めた。
「おお、こんな風に分かるのか! やっぱり作って良かった鑑定能力!」
鑑定能力のおかげで、苦労する事も無く俺は薬草採取を行った。
勿論、薬草を入れる場所は同じく【プレイヤー】の能力の一つ異空間ボックスに入れる。
異空間ボックスはまだ容量は少ないが、魔力の数値依存で俺が成長すれば今よりも大量に物を入れる事が出来る。
ちなみに個数制限では無く、種類として登録されるので今は10種類まで入れる事が可能となっている。
「沢山採ってきましたね」
「はい。図鑑のおかげでどれが薬草か直ぐに分かったので、沢山取れました。リンさん、よろしくお願いします」
朝も対応してくれた受付嬢のリンさんに、俺は採って来た薬草を提出した。
勿論、鑑定を使って採ってきてるので間違いは無いが改めてギルドの方で薬草かどかの鑑定作業が行われた。
数が数なので、鑑定に10分程掛かり俺は初の依頼達成として報酬を受け取った。
「報酬は半分は貯金に回して、残りは生活用品を少し揃えるか……」
正直、衣食住の衣以外全てが揃うとは思いもしなかった。
スタートダッシュとしては上々だし、アリシアさんにんは感謝しないとな……。
「でも用事で三日は家に帰れないって言ってたからな、それまでにお礼を考えないと」
一先ず、俺は生活用品の買い出しを終えて家に戻って来た。
アリシアさんは既に用事に出掛けており、ここから三日間は一人で生活する事になっている。
「家の中は自由にしていいとは言われてるけど、流石にアリシアさんの部屋は入れないな、取り合えずその他の部屋の掃除から始めるか」
女性の一人暮らし、冒険者のアリシアさんは掃除が苦手なのか荷物が大雑把に置いたままの状態となっている。
アリシアさんの私室も他の部屋と同じだが、流石に無断では入れないのでその他の部屋の掃除を始めた。
65
あなたにおすすめの小説
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる