5 / 80
第一章
第5話 【固有能力の力・1】
しおりを挟む新たに固有能力を授かった翌日、俺は依頼には出掛けずギルドの訓練場に居た。
講習担当の人はまだ付いて無いが、固有能力の力を試したかった俺は一人で訓練をする事にした。
「とは言っても、剣なんて使った事もないからどうすれば……取り合えず、振り続けてみるか?」
固有能力には、才能を得ると書かれていた。
その文面を信じて、俺は取り合えず訓練場にあった木剣を手に取り、構えの様な動作をして剣を振る。
すると、その動作に違和感なく行えた俺は更にその動作を続けた。
「……変だなと思ったら、もう既に【剣術】のスキルが追加されてる」
10分程経ち、その動作が鋭さを増してると感じた俺はステータスを確認した。
その結果、スキル欄に新しく【剣術】が追加されていたのだ。
「これは本当に異世界を楽しめそうだな」
そこから俺は陽が落ちるまで、訓練場で剣を振り続けた。
途中、他の冒険者も来たが俺があまりにも真剣に行っていたので、特に声を掛けられる事は無く。
俺は集中して訓練を続ける事が出来、その翌日に俺は再びギルドマスターに呼び出しをされた。
「あの、もしかして昨日の才能の球の件ですか?」
「まあ、関係はしてるかな? 昨日、一日中訓練場に居たみたいだけど固有能力の強さはどうだったか聞きたくてね」
「そうでしたか、取り合えずスキルは発現して更にスキルレベルも昨日の時点で2まで上がりました」
スキルにはレベルがあり、最低値が〝1〟で最高値が〝10〟となっている。
そしてスキルには稀に、スキルレベル10になると上位のスキルに変化する事があるが。
それは才能次第となっており、また分岐もいくつかあるので才能次第で自分の運命が決まる。
「流石、あれだけ制限のある才能の球の能力だね」
「本当にそう思いますが、気になる所で言えば身体の成長促進ですかね。昨日と今日で、特に体に変化は無いので急に成長するという事は無さそうですね」
「確かにそうみたいだね。でも逆に一日で身長が二m近くに成長したら、それはそれで怖いし徐々に成長するんだと思うよ」
その後、経過報告に来てくれた礼にと昼食を奢ってもらった。
そして、午後からは一日振りに依頼に出る為、街の外へと出て来た。
「薬草採取だけで、一先ず生活出来てるのは本当にアリシアさんのおかげだな……」
一番金のかかる〝住〟を無料で使わせてもらえている。
明後日にはアリシアが帰ってくるから、それまでに少しでも料理の腕を磨いておかないといけない。
「その道のプロって訳ではないけど、美味しくない料理を家を使わせてもらってるのに食べさせるわけにはいかないからな」
しかし、そうなってくるとどうやってアリシアさんに満足してもらえる料理を提供するかだな。
この世界では、前世程調味料が豊富にある訳ではないし、化学調味料なんてものも無い。
自分で作ろうにも、流石に直ぐには出来ないだろう。
「いくら前世の記憶があるからって、企業が作った物を再現なんて出来ないだろうから、用意できる物で準備しないとだな……」
幸いな事に前世の俺は、多趣味で料理に関してもそこそこの知識はある。
そこから俺は、アリシアさんが帰ってきた際に喜んでもらう為、家の外に出て商業区へと出向き食材を見て回った。
「あら、クリス君? 珍しいわね。貴方がここに居るなんて」
「……ノアさん。お久しぶりですね。それで言うと、貴族のノアさんがここに居るのも珍しいですね」
「ふふっ、偶に息抜きで外出してるのよ。護衛もちゃんと近くにいるわよ」
エレノア・フォン・ラントリス。
俺の住んでた孤児院によく支援してくれていたラントリス家の人で、よく子供達と遊んでくれていた。
そしてそんなエレノアさんの事を俺達子供達は、親しみも込めて「ノアさん」と呼んでおり、ノアさんもその呼び方を気に入っていた。
「そう言えば、クリス君も儀式を終えたのよね。今は何してるのかしら?」
「冒険者ですよ。孤児院にずっといても、いつかは自立しないといけないので早い内から慣れておこうと」
「そうなの? 他の子はまだ孤児院に居るのに、クリス君だけが戻ってこないって院長が心配してたわよ」
院長は子供達に優しく、そして卒業した子供達の事もずっと大事に想ってくれるいい人。
俺はそう認識しており、街の人からもそう思われている。
「安定するまでは帰らない様にしてたんですよ。冒険者は何があるか分からないので」
「まあ、確かにそうね……でも、クリス君を見た感じ困ってそうには見えないわね」
「はい。何とかここ数日は上手くやってます。なので、数日以内には孤児院に顔を出しに行こうと思ってます」
「そうしてあげた方が院長も安心するわよ」
その後、ノアさんとは別れて食材の買い出しを終え帰宅した。
それから俺は、少しでもアリシアさんに美味しい料理を食べて貰う為、試行錯誤しながら料理と真剣に向き合った。
その結果、まだこの世界で料理を数回しかしていないのにスキルの欄に【調理】のスキルが発現していた。
66
あなたにおすすめの小説
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる