特性【プレイヤー】に覚醒した俺は、前世の記憶を思い出し異世界を楽しむ

霜月雹花

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第一章

第13話 【商業ギルドに登録・1】

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 せっけんを作った次の日、いつも通りに起きて朝食を準備していた。
 そして、アリシアさんが起きて来たので「おはようございます」と挨拶をすると、アリシアさんは驚いた顔をして俺に近づいて来た。

「クリス君……また何かやった?」

「えっ、またって何もやってませんよ?」

「嘘。だって、昨日までのクリス君と髪の質感が全然違うし、肌も若干プニプニしてる。それに何より、クリス君から良い香りがしてるわ! 何をしたらこうなるの!」

 アリシアさんは俺に詰め寄り尋問をしてきたので、俺は素直に昨日作ったばかりのせっけんについて話をした。

「せっけんを自作したの!? あれって凄く集中しないと駄目な物しか出来ないのよ?」

「そうなんですか? 昨日、解体作業が終わったついでに試しに作ってみたらいい感じの出来たので使ってみたんです。ただまだ試作段階なので、改良は必要ですけど……」

 昨日、作った時は良い感じだと思っていたが実際に使ってみないと使用感は分からなかった。
 そして昨日、シャワーを浴びてる際に使って試してみた。
 匂いももう少し抑えた方が良いし、洗浄効果は逆にあげた方がいいなと感じた。

「クリス君、これ私も使いたいんだけどいくら?」

「その、まだ試験段階なんですけど良いんですか?」

「良いわよ。実際、クリス君が使ってるけど髪が痛んだりしてないって事は、安全面はちゃんとしてあるって事でしょ?」

「まあ、危険な物も入れてないのでそうですけど……一応、その材料はスライム液なんでそれに抵抗がないなら良いですよ?」

 原材料の中で嫌がられそうな、スライム液の事を伝えると「普通のスライムのでしょ? なら大丈夫よ」と言った。
 そこまで言われて断るのも、と思って俺はアリシアさんに注意事項を伝えてせっけんが入った瓶を渡した。
 それから30分後、アリシアさんはシャワーを浴び、嬉しそう表情を浮かべて戻って来た。

「普段、仮面被ってるから皆に知られる事はないけど、こんなにさらさらな髪になったの初めての経験だわ。本当にありがとう」

「いえ、俺もこんなに喜んでもらえて良かったです」

 本当は家にあるのが使い辛くて開発したなんて言えず、俺はそう言ってアリシアさんと一緒に冒険者ギルドへとやって来た。
 アリシアさんとは入口で別れ、俺は今日も討伐依頼を受けてから街の外に出て来た。
 今日の目的としては、依頼の対象を倒すのもそうだが、実験材料のスライム液の入手も目的に入っている。

「昨日はあれだけ探していなかったから、ボアの討伐依頼にしたけど見つかるかな……」

 昨日の事を考えて、俺は今日の討伐依頼はボアに変更して森に来ていた。
 スライムにして、またあんなに時間が掛かるのは嫌だなと思い、それだったら諦めて売られてる物を買おうと考えていた。
 しかし、そんな俺の考えを見透かされたのか、今日はボアを見つけるまでにスライムを10体も遭遇して倒せた。
 勿論、ボアも簡単に見つかって昼前には王都に戻れそうだった。

「物欲センサーが昨日は仕事してたんだろうな……」

 あっさりと目的を達成した俺は、そんな事を呟いて森から出て王都へと戻って来た。
 その後、受付で討伐依頼の報酬を貰って今日も作業場で作業をする事にした。
 まずは、討伐してきたボアを解体して、スライム液での実験を始めようとした。

「……あの、そんなに見られていると気になって集中出来ないんですけど」

「クリス君が何かしてるって聞いてね。気になって来てみたら、凄く集中してたから黙ってみてたんだよ。それって何を作ってるの?」

「せっけんです。市場に売られてるの高くて手が出せないので、自作で作ってるんです」

 特に隠してない為、俺はレインさんの質問にそう答えた。
 レインさんは少し驚いた顔をして、「せっけんを作ったの?」と聞き返してきた。

「はい。原材料には、普通個体のスライム液を使ってます。元々、スライム液には洗浄効果もあるので良い材料になると思ったんです」

「まあ、確かにスライムは雑食の生物でその液に洗浄効果があるのは分かるけど、それをせっけんに出来たなんて凄いね」

「そうなんですか?」

 スライム液での実験なら、他にもしてそうだなと思って聞くと、実際に実験はされていたらしい。
 しかし、俺の様に成功はせず失敗作ばかりでスライム液から〝せっけん〟を作る人はいなくなったと教えて貰った。

「クリス君のその髪の質感から見ても、昨日の時点で完成してるみたいだね。人体への影響はどうなの?」

「ないですよ。レインさんも知ってますけど、俺はレベルの高い鑑定魔法が使えるのでそれで確認してあるので」

「確かに、その言葉は説得力あるね」

 レインさんは俺の言葉を聞くと、「試してみたいな」とボサッと小さな声で言葉を漏らした。
 俺はその言葉を聞き逃さず、新しく出来たせっけんを小瓶に詰めてレインさんに渡した。

「いつもお世話になってますから、一応人体への影響はないように作ってますけど、何か違和感がありましたら直ぐに使うのを止めてくださいね。順番としては、手で試してみて特に何も無かったら髪と体用のを使ってください」

 俺はアリシアさんにもした様に注意事項を伝え、レインさんは嬉しそうに作業場を出て行った。
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